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いまさら聞けない、スタッドレスタイヤの基本の「き」

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冬のドライブの必需品・スタッドレスタイヤ。いまでこそ当たり前になりましたが、普及のきっかけとなった理由をご存じでしょうか? それ以前に使われていたスパイクタイヤ(スタッドタイヤ)、そして現在でも使われているチェーンの話を交えて、いまさら聞けない、スタッドレスタイヤの簡単な歴史と、基本中の基本を紹介します。

スタッドレスタイヤの生まれた背景には「公害」が

雪道でのタイヤの滑りを防止するため「スパイクタイヤ」が初めて実用化されたのは、1950年代のスカンジナビア半島諸国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)と言われ、その後1960年代にはいり日本へも輸入されるようになります。

国産のスパイクタイヤが発売されたのは、1963年(昭和38年)で、北海道を中心にその普及が始まったと言われています。それまで、凍結した路面を走る際には、タイヤにチェーンを巻いていましたが、その手間を省けるうえに、チェーンを上回る操作性が支持され、急速に普及していきました。1985年には冬用タイヤの68%を占めるまでになります。

しかし、金属製の鋲(スタッド)を着けたスパイクタイヤによる「粉じん公害」も、それにともなって発生してしまいます。雪が溶けた路面を滑り止めの鋲が削り、削られたアスファルトが空気中に舞って、マスクなしでは歩けない状態になったり、車線を示す白線がわずか1カ月で削り取られてしまうなど、「粉じん公害」は北国の都市の財政や健康にも悪影響を与える社会問題になりました。

それに対応するため、1990年(平成2年)には「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が公布され、翌1991年(平成3年)からは、原則的に指定地域でのスパイクタイヤの使用が禁止されます。

スパイクタイヤに代わるスノータイヤとして、「鋲」のないスタッドレスタイヤが日本に登場したのは、公害として問題が広がっていた最中の1982年(昭和57年)のこと。鋲がなくとも雪道や凍結路面をうまく捉えるよう、工夫され生み出されたのがスタッド(stud=鋲)レス(less=無しの)タイヤでした。

当初のスタッドレスタイヤは、スパイクタイヤからスパイクピンをとっただけのようなトレッドパターンだったり、ゴムも柔らかく、現在のスタッドレスタイヤに比べると安定性が劣るものでした。

そのため「スタッドレスタイヤは柔らかいから、ふわふわしていて曲がりにくい」とのイメージをお持ちの方も多いと思いますが、昨今のスタッドレスタイヤは年々進化を重ね、夏タイヤと同様の高剛性ボディ構造を持っているものもあります。

ボディ剛性が高まると、運転中の接地形状の変化が少なくなるので、より安定して走れるようになります。スタッドレスタイヤの乗り心地や操縦安定性はかなり夏タイヤに近づいてきているのです。

夏タイヤとスタッドレスタイヤの機能の最も大きな違いを挙げるとすれば、「水はけ」能力です。夏タイヤは厚い水膜を「はじき飛ばす」ように、スタッドレスタイヤは極薄い水膜を「吸い上げる」ように、それぞれトレッドパターンや剛性が調整され、季節の路面に合った安全で快適な走りを実現しています。

スタッドレスタイヤとチェーンとの違い

スパイクタイヤの使用が禁止された今、雪道走行用の滑り止めとして利用できるのは、スタッドレスタイヤとチェーンの2種類。それぞれはどのように違うのでしょうか?

スタッドレスタイヤ

TOYO TIRESのスタッドレスタイヤが滑りを防ぐ仕組みは、こちらの記事で詳しく紹介していますが、「吸水」「密着」「ひっかき」の3機能です。

そもそも凍結道路で滑るのは、表面が解けて水の膜ができているから。凍った路面は、熱だけでなく、タイヤなどから受ける「圧力」でも解けて水膜が発生します。

TOYO TIRESのスタッドレスタイヤは、タイヤに刻まれた溝(サイプ)と、NEO吸水カーボニックセルを配合したNEO吸着ナノゲルゴムが、タイヤによって圧縮されて解けた雪の水分を路面から取り除き、路面とタイヤを密着させます。さらにアスファルトよりも柔らかく、氷よりも硬い鬼グルミの殻によって路面をひっかき、滑りにくくさせる仕組みです。積雪路では雪を圧縮して踏み固め、凍結路面では水膜を取り除くことで、冬の路面を走行できるのです。

チェーン

装着の手間はかかりますが、太いチェーンで積雪した路面でも力強く雪をひっかけ、スタッドレスタイヤでは進みづらい雪道でも走行できます。しかし、積雪路以外では路面へダメージを与えるほか、走行性も下がり、走行中にチェーンが切れて事故につながる可能性があります。また、しっかり装着しないと速度上昇に伴い遠心力で膨らんでしまうため車体に接触してしまうことがあります。取扱説明書をしっかり読み、緩みのない装着をしてください。

そして、チェーンで忘れてはならないのが高速道路で「全車両チェーン装着規制」がしかれているとき。この場合はスタッドレスタイヤを着用していても、チェーンの装着が義務づけられていますので、車内に備えておくと安心ですね。

スタッドレスを装着する際の注意点は?

交換時は4輪ともスタッドレスタイヤを装着する

駆動輪のみをスタッドレスタイヤに履き替えるのはNG。4輪ともスタッドレスタイヤにしないと、本来の滑り止め性能を得られないばかりか、ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの摩擦力の差によって、走行時の安定性が損なわれる危険があります。交換時にはすべてのタイヤをスタッドレスタイヤにしましょう。

雪が降る前に装着し「皮むき」運転を

新品のスタッドレスタイヤでも滑りを抑制する性能は十分ありますが、乾いた路面を100km程度(高速道路ならば200km程度)走って表面を適度に削る「皮むき」をすることで、スタッドレスタイヤが持つ本来の性能が引き出されます。「皮むき」によって、タイヤの表面がどの程度変わるのかは、こちらの記事でも紹介していますので参考にどうぞ。

摩耗状態はこまめにチェックを

雪道や凍結路面で滑らずに走行するには、サイプ(タイヤに刻まれた溝)の深さが十分あることが前提になります。溝の深さが足りないと、雪道でグリップが利かずスリップの原因にもなりかねません。そのため、前後左右でタイヤを履き替えるローテーションを行ったり、摩耗が進むとタイヤに露出する「プラットホーム」が見えていないかチェックするなど、こまめなセルフチェックを欠かさないよう心掛けましょう。

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