本格的な冬の到来を迎える前に、履き替えるスタッドレスタイヤをあらためてチェックしてみましょう。一般的にスタッドレスタイヤの買い替えサイクルは3〜4年が目安といわれていますが、使用年数にかかわらずスタッドレスタイヤの摩耗状態は性能に直結するため要チェックです! まずは一目で分かるセルフチェックのポイントから!
目次
4つのポイントで、スタッドレスタイヤをセルフチェックしてみよう!
その1:タイヤの溝に「プラットホーム」が見えるかをチェック!
プラットホームとは、スタッドレスタイヤの摩耗状態が一目で分かる「目印」です。地面と接しているタイヤのトレッド面が摩耗すると溝は浅くなります。溝の役割は凍結路面とタイヤとの境目に生じる水膜を取り除き、凍結した路面にタイヤをしっかりと密着させることです。水膜がある状態では、ブレーキを掛けてから車が止まるまでの制動距離も延びてしまうのです。
この、溝の深さが新品時の50%未満になるほどにトレッドパターンが摩耗してしまうと、氷雪路面での性能が低下してスタッドレスタイヤとして使用できなくなります。この使用限界となる「50%の摩耗度合い」を教えてくれるのがプラットホームです。
新品時には、溝と溝の間に隠れているプラットホームは摩耗が進むと露出してきます。交換前には接地面まで浮き出てきていないか、必ず確認しましょう。タイヤのサイドウォールに示された矢印(↑印)をたどったトレッド面の溝にプラットホームがありますので、履き替えたあとも定期的に確認を行いましょう。ちなみに、使用限界の目印は「スリップサイン」と呼びます。
その2:ゴムの劣化は「ひび割れ」でチェック!
「去年はスタッドレスでほとんど走ってなくて、摩耗していないから大丈夫」という勘違いをしていませんか? 例えまったく走っていなくても、タイヤのゴムは経年変化によって劣化していきます。走行距離が少なく、摩耗が進んでいないスタッドレスタイヤでも、使用開始から数シーズン経過している場合はタイヤの表面にひび割れができていないかチェックしましょう。
もし、ひび割れができていたらゴムが劣化している可能性が高い状態です。ゴムが劣化した状態のまま走ると、走行中のバーストにつながる恐れもあります。また経年劣化のサインは偏摩耗にも現れます。ひび割れを起こしていたり、片側だけがすり減っているタイヤは、なるべく早めに買い替え・交換も検討ください。
その3:新しいタイヤでも「空気圧」をチェック!
ワンシーズンしか使用していない新しいスタッドレスタイヤでも、空気圧の確認は必要です。車ごとに決められた指定空気圧を下回ったまま使用している場合、ひび割れを起こしている可能性もあります。このほか、保管場所や保管方法によってもスタッドレスタイヤの寿命は変わってきます。オフシーズンの保管場所・保管方法が適切かどうかもあらためて確認しておきましょう。
その4:スタッドレスタイヤの製造年月日をチェック!
タイヤのゴムは時間の経過につれて硬くなり、性能が低下していきます。「溝は十分に残っているのに、劣化が進んでいた……」ということもめずらしくありません。JATMA(日本自動車タイヤ協会)はタイヤの安全性を考慮して、使用開始から5年以上経過した場合は点検し、製造から10年以上経過した場合は新しいタイヤに交換することを推奨しています。
タイヤの製造年月日を知るには、タイヤ側面に刻印されたセリアル記号の下4桁をチェックしましょう。例えば、数字が「1208」の場合、前半の12は製造週(12週目)、後半の08は製造年(2008年)を示すので、この場合は2008年の12週目に製造されたタイヤということになります。なお、1999年以前の製造番号の場合は下3桁で製造年を判断します。
雪の少ない地域でも「冬はスタッドレスタイヤ装着」が大切
降雪地域以外でも、冬には毎年多くの事故が発生!
「ほとんど雪が降らないから、スタッドレスタイヤを履かなくても大丈夫」という油断は禁物。雪の少ない地域でも、突然の降雪や路面凍結による事故が毎年発生しています。冬のドライブをより安全に快適に楽しむためにも、スタッドレスタイヤの装着は欠かせません。
夏用タイヤのまま雪道を運転すると、制動距離が伸びてしまう!
夏用タイヤで積雪路や凍結路を走行すると「止まれない」「曲がれない」という危険性が高くなります。一般社団法人 日本自動車タイヤ協会「冬の安全ドライブ事前注意報」のデータによると、夏用タイヤのまま積雪路・凍結路を走行すると、スタッドレスタイヤと比較して、制動距離(ブレーキをかけてから停止するまでの距離)は約1.6倍になります。
駆動輪だけをスタッドレスに変えるのもNG!
また、駆動輪のみをスタッドレスタイヤに履き替えるのもNG。駆動輪だけスタッドレスタイヤにしても、すべてのタイヤを夏用タイヤのまま走行したときと同等の旋回性能しか出せないことが分かっています。その状態で雪道を走行すると、追突事故や車線からのはみ出しなど事故の原因となるため、大変危険です。夏用タイヤからスタッドレスに履き替える際は、4輪すべてのタイヤを交換しましょう。
なお、タイヤの交換作業を店舗に依頼した場合の所要時間は、タイヤの大きさにもよりますが30分~1時間程度です。シーズン直前は混雑も予想されるので、余裕をもって履き替えたいところです。
意外と知られていない? 沖縄県以外の46都道府県でスタッドレスタイヤを装着しないと条例違反に!?
日本では、北海道から鹿児島県まで、沖縄県を除く46都道府県で積雪時や凍結時にはスタッドレスタイヤの装着が条例に定められています。それぞれの都道府県によって条文に違いはありますが、降雪量が少ない地域でも、滑りやすい路面を夏用タイヤで走行すると条例違反になることがあります。
たとえば、鹿児島県の道路交通法施行細則によると、「積雪又は凍結して滑るおそれのある道路において、自動車(二輪のものを除く)を運転するときは、タイヤ・チエン又はスノータイヤを取り付ける等滑り止めの措置を講ずること。」と制定されています(※)。
ちなみに、ヨーロッパでは冬にスタッドレスタイヤを装着せずに事故を起こした場合、保険金がおりないケースもあるそうです。
※:鹿児島県道路交通法施行細則 昭和53年11月24日公安委員会規則第16号第12条(4)より
交換したタイヤを長持ちさせるポイントは?
保管方法によってタイヤの寿命は変わります。保管のポイントを大きく2つに分類すると「ゴムの劣化を防ぐこと」と「タイヤの形が変形しないようにすること」ですが、具体的なポイントを以下に紹介します。
適切な方法で保管する
タイヤを保管する際は、適正空気圧の半分程度まで空気を抜いてゴムの緊張をほぐしておきましょう。直射日光はタイヤのひび割れの原因になるので、カバーをかけたうえで日の当たらない場所に保管すると理想的です。ホイールは装着したままの状態で平積み(横積み)します。重量があるので、突起物に触れてタイヤを傷めないように注意が必要です。
空気圧を調整する
空気圧不足は事故や故障などさまざまなトラブルの原因になります。空気圧を下げて保管していたタイヤを再び装着する際は、必ず元の空気圧に戻すことをお忘れなく。指定空気圧は、一般的に運転席側のドアの開口部に貼られているラベルから確認できます。
タイヤローテーションを行う
タイヤの摩耗が偏る「偏摩耗」は、クルマの燃費や走行性能の悪化を引き起こすほか、タイヤの寿命も縮めてしまいます。定期的にタイヤの装着位置を入れ替えることで、タイヤの摩耗を均一化できます。適切なローテーション方法はタイヤの種類や駆動方式によって変わりますので、プロにご相談ください。
サマータイヤとして使用しない
タイヤの交換費用を抑えるために、使用限界を迎えたスタッドレスタイヤをサマータイヤとして“履きつぶす”方もいますが、おすすめはできません。
なぜなら凍結路や積雪路を想定して設計されているスタッドレスタイヤは、夏場の走行には不向きだからです。サマータイヤとくらべてゴムが柔らかいスタッドレスは路面をグリップしにくく、排水性能も劣るためハイドロプレーニング現象を引き起こしやすくなります。
車種に合わせたスタッドレスタイヤを選ぶ
SUV/CCV専用スタッドレス、ハイト系専用スタッドレスなど、車種に合わせて設計されたタイヤも販売されています。例えばハイト系専用ならカーブでのふらつきを抑えるなど、車種の弱点をカバーしてくれるというメリットもあります。
スタッドレスタイヤを装着しても、雪道は「危険がいっぱい」
冬ドライブに常備しておきたい8つの道具
たとえスタッドレスタイヤを装着していても、すべての積雪路、凍結路で安全に走行できるとはかぎりません。タイヤの特性を理解した上で、適切な運転操作や交通規制等を守ることはもちろん下記の道具をクルマに常備して、万一のトラブルに対して備えを持ちましょう。
- タイヤチェーン
- ブースターケーブル
- けん引ロープ
- ジャッキ
- 長靴
- 防寒着
- アイスクレーバー
- シャベル・スコップ
(長岡国道事務所「雪道運転テクニック『Q3. 用意しておくと便利なものって何?』」より)
「走行前の点検」はここがポイント
バッテリー
冬場は、気温の低下によってバッテリーの能力が弱くなり、「バッテリー上がり」が起きやすくなります。取り扱い販売店などでバッテリーの状態を常にチェックしておきましょう。なお、前回の交換から2~3年経っている場合はバッテリー交換の検討をおすすめします。交換したばかりなのにバッテリー警告灯が点灯する場合はオルタネーターの故障などが考えられるので、整備士に相談しましょう。
ウインドーウォッシャー液
濃度の低いウインドーウォッシャー液や水を使用すると、凍結によってウォッシャー液が噴射できなくなる場合や、噴射できたとしても一瞬にしてフロントガラスに凍りつく場合があります。ウインドーウォッシャー液の量、濃度も確認しましょう。市販のウインドーウォッシャー液に記載された、温度と使用方法に従ってください。
燃料確認
燃料は余裕をもってこまめに補給するよう心がけましょう。ディーゼルエンジン車は、寒冷地用軽油を補給すると燃料の凍結を防ぐことができます。
「もしも!」雪道で動けなくなってしまったら
車から離れない
高速道路では、ガードレールの外など安全な場所に移動する必要がありますが、雪道の場合は、不用意に車を離れてしまうと吹雪のなかで遭難するおそれがあります。また、視界の悪い中で後続車が走行して来る場合もあり、非常に危険です。原則として、車からは離れないようにしましょう。
救援を求めるときは
ハザードランプを点滅させ、同時に停止表示板などで他車に停止中であることを知らせます。その上で、全国共通の道路緊急ダイヤル「#9910」へ。停止している車の位置や状況をできるだけ正確に伝えましょう。
救援を待つ間は
救援まで時間がかかる場合もありますので、バッテリー切れや燃料切れに注意しながらときどきエンジンをかけて車内を暖めましょう。ただし、ガソリン車やディーゼル車はマフラーが雪でふさがると、車内に排気ガスが逆流して一酸化炭素中毒になるおそれがあります。降雪時はマフラー付近が雪で埋まらないよう定期的に除雪しながら、風下の窓を少しだけ開けて換気しましょう。
動けなくなる前に「道の駅」を活用
「道の駅」には、道路情報や道路カメラの画像、気象情報などを確認できる「道の駅情報端末」が設置されています。気象条件が不安な場合や急な降雪時などには、車が動けなくなる前に上手に「道の駅」を活用しましょう。
まとめ
今回の記事では、スタッドレスタイヤの寿命を見極める方法や、長持ちさせるポイントなどについてご紹介しました。冬のドライブにスタッドレスタイヤは必須アイテムです。冬に備えて降雪や霜が降りる時期の前にしっかり装着すること、装着するときにタイヤの健康状態を確認すること、長く使えるように適切な保管をすること、タイヤ以外にも冬道ドライブに必要な常備物を携行することを再確認し、安全で快適な走行ができるように準備してくださいね。