JAFの公開資料によれば、2022年度の一般道路におけるロードサービス出動理由1位は「過放電バッテリー(バッテリー上がり)」。寒冷地ではバッテリーの電圧が下がりやすいため、気温の低い時期は特に注意が必要です。
そこで今回の記事では、もしものときに便利なアイテム「ブースターケーブル」について詳しく説明します。
目次
ブースターケーブルとは
ブースターケーブルとは、バッテリーが上がってしまった車が他の車から電気を分けてもらうために使うケーブルです。赤と黒の2本1組で販売されています。ブースターケーブルを使うタイミングは、ライトの消し忘れや何らかのトラブルによりエンジンが始動しなくなったときです。バッテリーが上がった車(故障車)と正常な車(救援車)のバッテリーをケーブルでつないでエンジンを始動させます。
ブースターケーブルの仕組み
ブースターケーブルは、プラス(+)端子をつなぐ赤いケーブルと、マイナス(-)端子をつなぐ黒いケーブルの2本1組になっており、各ケーブルの端は金属のワニ口クリップになっています。このクリップ部分でバッテリー端子を挟んでバッテリー同士を接続し、救援車のエンジンを始動させることで、故障車に電気を分けられる仕組みです。
よくあるバッテリー上がりの原因
バッテリー上がりとは、蓄えられた電力が使用電力を上回り、電力供給ができなくなる状態のことです。通常、車は走行中にエンジンの回転を利用して発電し、バッテリー充電が行われますが、エンジン停止中に電装品を使うと蓄えられた電力が減り、バッテリー上がりが起こりやすくなります。
バッテリー上がりの主な原因には、半ドアでのルームランプ点灯、夜間のヘッドライト消し忘れ、エンジン切り忘れによる待機電力の消費などがあります。長期間運転していない場合や電装品の過剰使用にも要注意です。また、渋滞やアイドリング中は発電量が落ちるため、電装品の消費電力が上回るとバッテリーが放電状態になることもあります。
バッテリーの一般的な寿命は2~5年で、古くなると機能が衰え、特にアイドリングストップ機能付きの車では寿命が短くなります。バッテリー上がりが発生した場合はまず原因を特定し、再発防止に努めましょう。
つなぐ前にするべきこと
故障車が救援車から一時的に電力を分けてもらってエンジンを始動させる方法を「ジャンピングスタート」といいます。救援車のバッテリーにケーブルを接続する前にすべきことを紹介します。
ブースターケーブル本体の点検
2台のバッテリーをつなぐ前に、必ずブースターケーブル本体の点検を行いましょう。ケーブルの被膜に破損がないか、ケーブルが断線していないか、クリップ部分に異常がないかを確認します。問題のあるケーブルをそのまま使うのは危険なので絶対に避けてください。
点検が済んだら、故障車に近い安全な場所に救援車を止めてボンネットを開けておきます。
故障車の電気系統をオフにする
復旧時、急に電気が流れることによるトラブルを防ぐために、故障車のライトやエアコンなどの電気系統がすべてオフになっていることを確認します。
ブースターケーブルの使い方
準備が済んだら、ブースターケーブルをつないでジャンピングスタートを行っていきます。ここでは手順を簡単に確認しておきましょう。
端子の組み合わせ
バッテリーによってプラス・マイナス端子の位置が違うので、間違いを防ぐために両車のバッテリーの端子の位置を確認します。プラス端子にカバーが付いていれば外しておきましょう。
ブースターケーブルをつなぐ順番
それぞれの端子をブースターケーブルでつないでいきます。まず赤いケーブルの片方を故障車のプラス端子に、もう片方を救援車のプラス端子に接続します。次に黒いケーブルの片方を救援車のマイナス端子に、もう片方を故障車のエンジンの金属部分(エンジンブロックなど)につなぎます。「故障車のプラス端子→救援車のプラス端子→救援車のマイナス端子→故障車のマイナス(端子ではなく金属部分)」という順番を覚えておきましょう。
誤った順番で接続したり、クリップがボディに触れたりすると、ショートや部品の破損を引き起こす場合があるのでご注意ください。
エンジンを始動させる
ブースターケーブルの接続が終わったら救援車のエンジンをかけ、バッテリーが充電されるまで数分間待ちます。その後故障車のエンジンが始動できれば完了です。
ブースターケーブルを外す順番
ケーブルを外すときは、つないだときとは逆の順番で外していきましょう。なお、エンジンが始動できても再びエンジンがかからなくなるなどの症状がみられる場合は、バッテリーや発電機が不具合を抱えている可能性があります。バッテリー上がりの原因に心当たりがない場合は、念のためお近くの専門店やディーラーで点検を受けることをおすすめします。
ブースターケーブルを使う際の注意点
ブースターケーブルは、使い方を間違えると発火や感電などの危険があります。安全に使用するための注意点は以下の3つです。
救援車として使えない車がある
ブースターケーブルを選ぶうえで注意したいのが、ケーブルに流せる電流の最大値を示す「許容電流値」です。エンジンの始動に必要な電流値は、以下のように車種によって異なります。
- 50A以下:軽自動車や400ccまでのバイク
- 80A:2000ccまでの乗用車、バイク
- 100A:乗用車、ディーゼル車、2tトラック
- 120A以上:大型トラック、トレーラーなど
必要とする電流値よりも許容電流値が小さいケーブルを使用すると、発火やショートなどの事故の原因になります(反対に、許容電流値が大きいケーブルは使用可能です)。お使いの車に搭載されているバッテリーに合ったものを選ぶようにしましょう。
ちなみに、普通乗用車のバッテリーの電圧は12Vです。高電圧(24V)のバス・トラックや、ハイブリッド車などは救援車にならないのでこちらも合わせて覚えておきましょう。
クリップをボディなどに接触させない
作業中はクリップを確実に接続するように心がけ、ボディなどの金属部分に接触させないようにしてください。誤って接触するとショートの原因になり、大変危険です。
ぬれた手で作業をしない
ぬれた手でバッテリーに触れると感電の危険性があります。必ず乾いた状態で行い、どうしても雨の日に作業しなければならないときはゴム手袋を使うか業者に依頼するようにしましょう。
まとめ
ブースターケーブルは、一度使い方をマスターしてしまえばロードサービスに頼らなくても自力で応急処置ができるようになる便利アイテムです。車内で保管しているうちに経年劣化が進んでいくこともあるので、状態に応じて買い替えも検討してくださいね。