交差点や踏切、広い道路に出るときなど、運転時には必ず行っているはずの「徐行」。具体的にどのくらいのスピードを徐行と呼ぶのか、疑問に思ったことはありませんか? 今回は、改めておさらいしたい「徐行」のポイントについて解説します。
目次
徐行とは?
ゆっくり進むことを意味する「徐行」。道路交通法では、徐行のスピードは「車両等が直ちに停止することができるような速度(第2条)」とされており、はっきり何kmと定義されているわけではありません。一般的には「おおむね10km/h以下」と言われることが多いですが、道路状況などによっても変わってくるため、あくまで目安として把握しておくとよさそうです。
徐行の標識
「徐行」の標識は、道路標識の中で禁止や制限することを知らせる「規制標識」に分類されます。「止まれ」(一時停止)と同じく逆三角形の標識で、赤色で縁取られた白地に青い文字で「徐行」と書かれています(2017年に新設されたものからは徐行の下に「SLOW」と英語表記があります)。
看板や標示の意味は?
車両等を運転する人は、「徐行」の標識がある場所ではその言葉どおり徐行する必要があります。あわせて設置されている「始まり」「終わり」「ここから○○m」といった補助標識に応じて、指定された区間を徐行しましょう。
最徐行の標示
通学路や施設内などを走っているとき、「最徐行」と書かれた看板や道路標示を見かけたことはありませんか? 最徐行という言葉は道路交通法に記載されておらず、徐行と同様に、具体的な速度が定められているわけではありません。「徐行よりも気をつけて走行してほしい」という意味で、地域の道路・施設管理者が設置している場合が多いようです。
ちなみに最徐行は英語で「Dead Slow」「Slow Down to Limit(○○MPH)」と表現されます。後者は「時速○○マイルまで落とせ」と明確に速度が規定されているのが、お国柄の違いを感じさせますね。
徐行が必要な場所
また、道路交通法では、「徐行すべき場所」として以下のような場所が挙げられています(第42条)。
- 「徐行」の道路標識がある場所
- 左右の見通しが利かない交差点に入るとき・通行するとき
※交通整理が行なわれている場合や優先道路を通行している場合を除く - 道路の曲がり角付近
- 上り坂の頂上付近
- 勾配の急な下り坂
上記の2~5の場所は、道路標識がなくても徐行する必要があります。徐行しなかった場合、死角の対向車などと接触したり、曲がり角を曲がりきれなくなったり、下り坂で速度が出過ぎたりして、思わぬ事故につながる可能性があるのでくれぐれも注意しましょう。
徐行しなければならない場所を具体的に解説していきます。
徐行の標識がある場所
文字通り、「徐行」の標識がある場所では徐行が必要です。2017年7月からは標識がリニューアルされ、英語表記の「SLOW」を併記して赤枠の幅を狭めた新デザインのものも順次導入されています。新旧ともに対応できるようにしておきましょう。
また、場所によっては「事故多し」といった規制理由を示す補助標識がセットで設置されている場合もあります。こちらも見落としのないように注意したいところです。
左右の見通しが利かない交差点
住宅地など、交差点の角まで建物や塀があるような見通しの悪い交差点でも徐行を行う必要があります。このような場所では一時停止の標識も一緒に設置されている場合も多いようです。ただし、信号機などで交通整理が行われている場合や優先道路を通行している場合は徐行義務の対象外となります。
道路の曲がり角付近
道路の曲がり角付近でも徐行が必要です。カーブミラーが設置されていたとしても死角は生じます。一時停止または徐行をして、必ず自分の目で安全確認をしてから曲がるようにしましょう。
上り坂の頂上付近
上り坂の頂上付近では、進行方向の視界が制限されます。坂の向こうに対向車があることを見越して徐行が必要です。
勾配の急な下り坂
急な傾斜の下り坂もスピードが出やすいため徐行が必要です。住宅街などでは下り坂の先が交差点になっている場合もあるので、より慎重に運転しましょう。
その他の徐行すべき場面
さらに、道路交通法では「徐行すべき場合」についても定められています。主なものは以下の通りです。
- 子どもや身体障害者、高齢者などが通行しているとき(第71条2、2の2)
- 通学・通園バスの側方を通過するとき(第71条2の3)
- 警察署長の許可を受けて歩行者用道路を通行するとき(第9条)
- 環状交差点内を通行するとき(第35条2)
- 路面電車の乗降用に設けられた安全地帯があるとき、またはその路面電車に乗降する人がいない場合、路面電車から1.5メートル以上の間隔を保って、路面電車の左側を通過するとき(第31条)
上に挙げたもの以外に、歩行者がいる安全地帯の側方を通過するとき(第71条3)や、ぬかるみ・水たまりを通行するとき(第71条1)なども徐行する必要があります。他人に迷惑をかけてしまうだけでなく、反則金が課せられる場合もあるので、慎重に運転したいところです。
徐行違反した場合の反則金・違反点数
徐行すべき場所や場面で徐行しなかった場合、状況に応じて以下の反則金・違反点数が科せられます。
- 徐行すべき場所で徐行せずに走行すると…
「徐行場所違反」 反則金7,000円(普通車)、違反点数2点
- 警察署長の許可で歩行者用道路を通行する際、徐行せず走行すると…
「歩行者用道路徐行違反」 反則金7,000円(普通車)、違反点数2点
- 道路の左側部分に設けられた安全地帯の側方を通過する際、その安全地帯に歩行者がいるにもかかわらず徐行せず走行すると…
「安全地帯徐行違反」 反則金7,000円(普通車)、違反点数2点
このほかにも、ぬかるんだ場所や水たまりを徐行せずに走行して歩行者に水や泥をかけると「泥はね運転違反」(反則金:普通車6,000円)に問われる場合もあるので、慎重に運転したいところですね。
まとめ
なお、道路交通法施行令(第21条)では、徐行の際は後続車への配慮のためブレーキランプ(制動灯)をつけて合図を行うように定められています。ブレーキを踏んで速度を落とせば自然に点灯するため特別意識する必要はありませんが、急な減速には十分注意しましょう。
意外と忘れがちな「徐行」の要点。初心者ドライバーのみなさんもベテランドライバーのみなさんも、ぜひこの機会に安全運転のために見直してみてください。