2024年11月より、自転車の飲酒運転に関する道路交通法の規制が強化されました。これまで明確な規定がなかった「酒気帯び運転」にも罰則が設けられ、運転者はもちろん、酒類を提供した人、自転車を提供した人、自転車に同乗した人も厳しい罰則の対象となります。
本記事では、今回施行された改正道路交通法の内容と、自転車運転者が知っておくべき重要なポイントについて解説します。
目次
自転車の酒気帯び運転の改正
まずは法改正前後で変わった点について見ていきましょう。
2024年11月以前の道路交通法
自転車での飲酒運転については、これまでも飲酒の程度にかかわらず禁止されていましたが、実際に処罰の対象となっていたのは「酒酔い運転」のみです。酒酔い運転で検挙された場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されています。
2024年11月以降の道路交通法
2024年5月24日に公布された道路交通法の改正により、2024年11月1日から自転車の「酒気帯び運転」に対する罰則が新たに設けられました。違反した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。なお、次の項目では、飲酒運転をほう助した人の罰則についても詳しく解説します。
酒気帯び運転とは
酒気帯び運転とは、血液1ミリリットルあたり0.3ミリグラム以上、または呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有している状態で運転する行為と定義されています。たとえ少量の飲酒でも、基準値を超えていれば厳しい罰則の対象となります。
酒酔い運転との違い
酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転。一方、酒気帯び運転は、外見上は正常に見えても、体内のアルコール濃度が一定基準を超えている状態での運転を指します。
自転車の酒気帯び運転をほう助した者も罰則が適用!
また、今回の改正法では、自転車の飲酒運転を手助けする行為も処罰の対象となりました。具体的には以下のような行為が該当します。
- 酒気帯び運転をするおそれのある人に自転車を提供した場合…3年以下の懲役または50万円以下の罰金(車両提供罪)
- 酒気帯び運転をするおそれのある人に酒類を提供したり飲酒を勧めた場合…2年以下の懲役または30万円以下の罰金(酒類提供罪)
- 運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自己を運送するよう要求・依頼して同乗した場合…2年以下の懲役または30万円以下の罰金(同乗罪)
飲酒運転は運転者だけの問題ではありません。周囲の人々の何気ない行動も、法律違反として罰せられる可能性があることを知っておく必要があります。
罰金を支払わないリスク
また、前述のとおり3年以下の懲役または50万円以下の罰金も科せられます。略式起訴が適用された場合、略式命令から約1週間後に納付書が届き、一括での支払いが必要となります。分割払いは認められておらず、支払いができない場合は「労役」が命じられ、必要な期間、労役場での労働が強制される場合もあります。
なお、自動車と同様に自転車も「車両」として扱われるため、道路交通法上の責任が問われます。交通事故を起こした場合、飲酒状態であれば過失割合が大きく引き上げられる可能性があることも覚えておきましょう。
その他の自転車に関する道交法の改正内容
さらに今回の法改正により、自転車運転中の「ながらスマホ」に対する罰則も強化されました。
走行中のスマートフォンでの通話(ハンズフリーを除く)や画面注視が禁止され、違反した場合は6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。さらに、事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
まとめ
2024年11月からの道路交通法改正により、自転車の「酒気帯び運転」や「ながらスマホ」に対する罰則が大幅に強化されました。この背景には、酒気帯び運転で起こった事故の死亡・重傷事故の割合が高いことや、ながらスマホが原因の事故が増加傾向にあることなどが挙げられます。弁護士によると、歩行者との事故を起こした自転車の運転者が、多額の賠償金を命じられるケースもめずらしくないそうです。
なお、今回ご紹介した2つの違反は「危険行為」として、3年以内に2回以上繰り返すと「自転車運転者講習」の受講が義務付けられています。受講しない場合は5万円以下の罰金が科されるのでご注意を。
自転車は誰もが気軽に利用できる交通手段ですが、その手軽さゆえに危険も潜んでいます。今回の法改正を機に、あらためて安全な自転車利用について考えてみましょう!