便利で環境にやさしい自転車には、大きなリスクも潜んでいます。2023年の都内における交通事故の46.3%、つまり半数近くは自転車が関係する事故でした。また、全国でも交通事故全体の23.5%を自転車関与事故が占めており、決して軽視できません。こうした事故の多くは交通ルールの認識不足から発生しており、特に歩道走行に関する誤解は深刻です。
そこで今回の記事では、自転車利用者が知っておくべき重要な交通ルールについて解説します。
目次
原則として自転車の歩道走行は交通違反
多くの人々が知らずに行っている自転車の歩道走行。実は、これは原則として交通違反となります。道路交通法上、自転車は「軽車両」として分類されており、歩道と車道が区別されている場所では、車道を通行することが義務付けられているのです(道路交通法 第17条 通行区分)。
なお、著しく歩行者の通行を妨げない場合に限って路側帯も走行できます(歩行者用路側帯を除く)。車道や路側帯を通行する際は、自動車と同様に左側通行である点も覚えておきましょう。
例外的に認められるケースもある
自転車はすべての状況で歩道走行が禁止されているわけではありません。以下のような場合は、例外的に歩道走行が認められています。
- 「普通自転車歩道通行可」の道路標識がある歩道
- 13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が自転車を運転している場合
- 工事や駐車車両などにより車道走行が困難な場合、または自動車の通行量が多く道幅が狭い場合など、安全確保するためにやむを得ないと認められるとき
歩道走行が認められている場合であっても、あくまでも歩道は歩行者優先です。なお、1の「普通自転車」とは、一般的な自転車で内閣府令で定められた基準(全長190cm以内、幅60cm以内、4輪以下など)を満たすものを指します。普通自転車の基準値を超える大きな自転車は歩道を走行できませんが、降りて押して歩いた場合は歩行者としてみなされるため通行可能です。
自転車で歩道を走行した場合の罰則
自転車で歩道を走行した場合、通行区分違反で3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。原則的に自転車は車道や路側帯を走行し、もし自転車道や自転車レーンが設けられていればそちらを利用しましょう。横断の際は、自転車横断帯があればそれを利用してください。
自転車に関わる交通ルールと違反時の罰則
自転車に乗る際は、歩道走行以外にもさまざまなルールを守る必要があります。道路交通法で定められている主な交通ルールと違反時の罰則を以下にまとめました。
並進の禁止
他の自転車と並んで走ることは禁止されています(第19条 軽車両の並進の禁止)。違反すると2万円以下の罰金または科料が科されます。
踏切での一時停止
踏切では必ず一時停止しなければなりません(第33条 踏切不停止等違反)。違反した場合、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。
交差点の通過時は徐行
左右の見通しがきかない交差点を通行する際は徐行する必要があります(第42条の1 徐行すべき場所)。違反すると3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。
夜間のライト点灯
夜間走行時にはライトを点灯することが義務付けられています(第52条 車両等の灯火)。無灯火で走行すると、5万円以下の罰金が科されます。
二人乗りの禁止
原則として、自転車の二人乗りは禁止されています(第57条の2 乗車又は積載の制限等)。違反すると2万円以下の罰金または科料が科されます。ただし、幼児用座席を使用する場合などは例外として認められています。
酒酔い運転・酒気帯び運転の禁止
自動車と同様、自転車も酒酔い運転は厳しく禁止されています(第117条の2)。違反した場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。自転車の酒気帯び運転には罰則規定ありませんでしたが、2024(令和6)年11月1日より条文が変更され、自転車の酒気帯び運転の罰則として「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が適用されるようになります。
片手運転の禁止
スマートフォンを操作しながらや傘を差しながらの片手運転は禁止されています(第70条 安全運転の義務、第71条 運転者の遵守事項)。違反すると3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。2024(令和6)年11月1日より道路交通法第71条第5号の5が変更され、自動車にも道路交通法の罰則が適用されるようになります。それに伴い、片手運転の罰則も「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」となります。
まとめ
自転車の走行には、歩道走行の原則禁止をはじめ、さまざまな交通ルールが定められています。自転車の利便性を最大限に生かしつつ、安全に楽しく利用するためにも、この記事で紹介した交通ルールをいま一度確認してみてはいかがでしょうか。