下り坂を運転している途中、もしも突然ブレーキがまったく利かなくなったら……。少し想像しただけでゾッとするような状況ですが、クルマの使い方によっては本当に起こることもあります。今回の記事では「べーパーロック現象」の原因・対策などについて詳しく解説します。
目次
ベーパーロック現象とは?

ブレーキオイル(ブレーキフルード、ブレーキ液)の過熱によって、ブレーキが利きにくくなったり利かなくなったりする現象を「べーパーロック現象」といいます。べーパー(vapor)は英語で「蒸気」という意味で、蒸気によって制動力の伝達ができなくなることを意味します。
ベーパーロック現象が起こる原因
べーパーロック現象は、ブレーキオイルや、ブレーキオイルに含まれた水分が何らかの原因で沸騰して気泡が発生することで起こります。この気泡によって油圧がうまく伝わらなくなり、ブレーキが利かなくなるのです。ブレーキオイルが沸騰する原因としては、フットブレーキの過度な使用や、ブレーキオイルの経年劣化で沸点が下がることなどが挙げられます。
ブレーキペダルを同じ強さで何度か踏んでみたときに、「毎回同じ深さに踏み込めない」「ふわふわとした感覚がある」といった症状がみられるときは気泡の混入が疑われます。なるべく早くプロの点検を受けるようにしましょう。
フェード現象との違い
ブレーキが利かなくなる現象としてもう1つ有名なのが「フェード現象」です。どちらもフットブレーキの過度な使用によって起こりますが、べーパーロック現象はブレーキオイルに原因があるのに対して、フェード現象はブレーキパッド(摩擦材)に原因があるという違いがあります。
フェード現象とは
フェード現象は、ブレーキパッドの異常過熱でブレーキローターとの間に「ガス」が発生し、摩擦力が下がることによってブレーキが利きにくくなる現象です。高温になったブレーキパッドから、焦げ臭いにおいを感じる場合もあります。
フェード現象は、ブレーキの多用以外にも、ブレーキパッドなどのパーツの劣化でも起こりやすくなるので注意が必要です。長い下り坂ではエンジンブレーキを積極的に使用し、ブレーキ周りの定期点検も欠かさずに行いましょう。
ベーパーロック現象の直し方

最後に、べーパーロック現象を未然に防ぐ方法をご紹介します。
エンジンブレーキを活用する
ブレーキの過熱を防ぐために、フットブレーキは使いすぎずエンジンブレーキを活用しましょう。特に長い下り坂に入る前には段階的にギアを落としてスピードを落としておくことが大切です。シフトレバーの表記は車種によって異なることもあるので、事前に使用方法を確認しておきましょう。
ブレーキオイルを定期的に交換する
乗車頻度や走行距離にかかわらず、ブレーキオイルは経年劣化します。ブレーキオイルは時間とともに空気中の水分を吸収して沸点が下がるため、長く使い続けることでべーパーロック現象が起こりやすくなるのです。ブレーキオイルの交換頻度は一般的に2~3年に1度といわれていますが、使用方法によって劣化が早まることもあるので適切なタイミングで交換しましょう。
また、ブレーキ周りの各パーツのメンテナンスも重要です。ブレーキは、ブレーキオイルのほかにもブレーキキャリパー、ブレーキパッド、ディスクローターなどさまざまな部品で構成されています。各部分に1つでも異常があるとベーパーロック現象はもちろんそれ以外のトラブルにつながることもあるので、定期点検を行うようにしましょう。
まとめ
ベーパーロック現象とは、ブレーキオイルの過熱によって気泡が発生し、自動車のブレーキが利かなくなる状態のことです。この現象はブレーキの過度な使用や、ブレーキオイルの劣化が主な原因となります。ブレーキが利かないと重大な事故につながる危険性が高まるため、適切な対処と予防が大切です。