日々クルマを支えているタイヤの素材といえば、皆さんご存じ「ゴム」です。しかし、その素材や製造過程を意識する機会は意外と少ないものです。
今回ご紹介するのは、1本のタイヤが完成するまでの工程。タイヤは一見すると「黒くて丸いゴムの塊」のように見えるかもしれません。しかしその1本には、素材設計や成型技術など、走りを支える高度な技術が凝縮されています。愛車のタイヤがどう生まれるのか、工場のラインを一緒にたどっていきましょう。
目次
1本のタイヤができるまで

舞台は宮城県岩沼市にあるTOYO TIRES 仙台工場。1964年の操業以来、乗用車用タイヤを中心に生産するマザー工場のひとつです。

タイヤづくりは大きく「混合」「部材成型」「成型」「加硫」「検査」の5工程に分けられます。それでは、一つ一つの工程を詳しく説明していきましょう。
①混合工程〜複数の素材を混ぜ合わせる

タイヤづくりは、素材選びとその配合から始まります。タイヤの原材料は「ゴム」だけでなく、天然ゴムと合成ゴムをベースに、補強材の「カーボンブラック(ゴムを強くする炭素の微粒子)」、ゴムを弾力のある丈夫な状態へと変える「硫黄」、その働きを助ける「亜鉛華(酸化亜鉛)」など、さまざまな材料を調合していきます。タイヤは部位ごとに求められる性能が異なるため、配合もパーツに合わせて個別に設計されています。
この「配合設計」は、タイヤ性能の源泉です。グリップ力や低燃費性能、摩耗しにくさなどは、ゴムの分子構造や素材同士の結びつきをナノレベルで研究し、最適に設計することで生み出されています。

調合された材料は、「バンバリーミキサー」と呼ばれる密閉式の巨大な混合機に投入され、じっくりと練り合わされます。練り上がった生地はシート状に引きのばして折りたたまれ、「混合ゴム」としてタイヤの各部材を作る工程へと運ばれていきます。
この工程でムラなく均一に練り上げることが、その後の品質を支える土台になります。
②部材成型〜タイヤの「パーツ」を作る
タイヤは、いくつもの部材を組み合わせてできています。ここでは主な4つの部材を見ていきましょう。
トレッド(路面と接する外皮)
路面と接する部分で、摩耗や外傷からタイヤを守る役割があります。

数種類の混合ゴムを一体化し、必要な厚みと幅で押し出して作られ、種類が一目で判別できるように刻印と識別用のカラーラインが入れられます。
カーカス/プライコード(タイヤの骨格)

タイヤの骨組みにあたる部材で、荷重や路面からの衝撃を受け止める重要な部分です。すだれ状に織り上げたナイロンやポリエステルなどの繊維を、ゴムで挟み込むようにコーティングして作られます。
スチールベルト(骨格を締め上げるベルト)

トレッドの下でカーカス(プライコード)を締め付け、タイヤの剛性を高める部分です。スチールコードをゴムでコーティングして作られます。
あえて斜め方向にカットして2枚のベルトを交差するように重ね合わせることで、走行中の遠心力によるタイヤの膨らみを抑え、外からの衝撃にも負けない強さを生み出しています。
ビード(ホイールとの固定具)

ビードはホイールと組み合わされる部分で、タイヤをホイールに固定させるための部分です。防錆のためにゴムをコーティングし、リング状に成形されます。
空気漏れを防ぎ、走行時のタイヤの動きをしっかりと支える役割もあります。鋼線にゴムをコーティングして作られます。
③成型工程〜生タイヤが完成

各部材が完成すると、いよいよタイヤのかたちに組み上げていきます。③で作られた部材は、成型ドラムと呼ばれる機械のうえで一つ一つ組み合わされ、タイヤの原型となる「グリーンタイヤ(生タイヤ)」になります。この時点ではまだトレッドパターンのない、のっぺりとした姿です。
成型は2段階に分けて行われ、最初の工程ではタイヤ内側部分を、そして次工程でスチールベルトやトレッドなどを貼り付けてタイヤ外側部分を成型していきます。
この成型工程で精度高く部材を貼り合わせることが、タイヤの真円度や乗り心地、走りの安定感につながります。さて、このつるりとした姿から見慣れたタイヤに変身するまではあと一歩です!
④加硫工程〜ついにタイヤが完成

グリーンタイヤを金型にセットして、一定時間、熱と圧力を加える工程が「加硫」です。加硫とは、ゴムと硫黄を結びつけることで、伸び縮みする丈夫なゴムへと変わる化学変化のことです。
このときの金型によってトレッドパターンやサイドウォールの文字が刻まれるので、ここが「タイヤの顔が決まる瞬間」ともいえるでしょう。タイヤ表面の細かなひげのような突起、スビューは綺麗に剃り落とされ、検査工程へと運ばれます。
⑤検査工程〜厳しい基準でドライバーの安全を守る

タイヤは、クルマの安全を足元から支える大切な部品です。出荷前の検査はドライバーの安全を守るための最終関門といえます。
具体的には、真円度や均一性を確かめる「ユニフォミティー測定」、回転時の重さのバランスを確認する「バランス検査」、そして検査員の目による外観検査など、複数の検査が行われます。これらの厳しい基準をクリアした製品だけが、市場へと出荷されます。
どれだけ機械化が進んでも、最後にタイヤの安全性を支えているのは人の目です。機械と人の目、両方でしっかりと確認されたタイヤだからこそ、安心して走り出せるのです。
まとめ
材料の配合から混練、成型、加硫、そして機械と人の目による厳しい検査まで。私たちが毎日安心してクルマに乗れる背景には、こうした一つ一つの工程と、丁寧なものづくりがあります。
普段はなかなか目にすることのないタイヤづくりですが、足元を支えるタイヤには、たくさんの工夫と技術が込められています。空気圧や溝の状態をときどき確認しながら、これからも安心で快適なドライブを楽しんでくださいね。




