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2016年カレンダー企画:空の風景写真家・HABUさんに、採用写真撮影時の様子や心境、大切にしていることなどをインタビュー

heart

11月も後半に入り、2015年も残すところあと1か月ちょっと。いよいよ年の瀬を感じるようになりましたね。TOYO TIRESでは昨年に引き続き、空の風景写真家・HABUさんに写真を提供いただき、カレンダーを制作しました。

『ON THE ROAD 雲を追いかけて』と題した2016年のカレンダーでは、さまざまなカタチに変化し、決して同じ表情を見せない雲と、未来へと導くような道が印象的な風景写真12枚を厳選。HABUさんがカメラで切り取ったまさにその瞬間の様子や心境をコトバで添えることで、HABUさんと一緒に旅をしているような気持ちで、毎日をお過ごしいただければと思っています。

制作にあたり、ご提供いただいた写真の思い出や、HABUさんが雲の写真を撮影する上で大切にしていることなどをインタビューしました。

【表紙、3月】

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HABUさん(以下、HABU):表紙の写真は、ダンゴクというところで1994年に旅をしたとき、テント生活をはじめた次の朝に撮ったものです。

TOYO TIRE株式会社(旧:東洋ゴム工業株式会社)広報部員(以下、広報):ということは、本当の初期の頃ですか?

HABUそう、本当に初期の初期で、最初の写真集の頃でした。あの日、こういう雲がぽこぽこ出ていて、たくさん撮りましたね。その中で、自分が撮りたい写真が雲と何かを組み合わせた写真だったんだなと、はじめて気づいた日だったんですよ。

だから、僕の雲の撮影はこの日から始まった、といえる写真。思い入れがものすごく深いですね。

【1月】

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HABUこれはバサーストというところ。いつもシドニーを出て、この街のスーパーマーケットで食材とかを買い込んで内陸に入っていくので、いわばオーストラリアの玄関口ですね。

このあたりは牧草地帯で、ダートロードと牧草がずーっと続いています。夏になると、こんな風に夏枯れで草が黄金色になって。起伏にも富んでいるので、雲と道が合わせやすいので、近くにあるキャラバンパークにテントを張って、周辺をまわって撮影していますね。

【10月】

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HABUここはエスペランスという、とてもきれいなビーチがある町です。写真の真ん中には道が突っ切っていますが、雨季になると横道に水がたまって、バクテリアの影響でピンクレークになります。

広報:去年の写真にもピンクレークがありましたよね。

HABUありましたね。あれと同じような感じです。この写真だとピンクレークがきれいな状態ではないんですが、雲と光が美しくて。

広報:海の先には、まだ何かあるんですか?

HABUここはね、湖なんですよ。丸い湖で、湖の真ん中に道があります。

【6月】

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HABUこの写真はバークですね。普段は「荒れ地で何もない」と言われているんですが、この写真は10月に撮ったものなので、草が青々としてます。だからちょっとめずらしいですね。

ここを走っているとき、ちょうど雨だったんです。しょうがないので南下して、雨が降っているところと、降っていないところの境で撮りました。ここは牧場だったんですけど、入って撮らせていただいて。

広報:すごく湿度を感じますね。

HABUそうですね、ここも15分くらい前までは雨が降ってたんですよ。やったー、やっと雨から抜けたー、みたいな気持ちでした(笑)雨が上がって嬉しいな、というイメージです。

【7月】

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HABUこのとき、たまたま「古い建物を撮ってきてほしい」という依頼があって、ニュージーランドのオアマルへ行っていました。この街は古い建物がいっぱいある、歴史的な場所なんです。

広報:北のほうですか?

HABUいえ、ニュージーランドの南島です。ニュージーランドは気候が厳しくて、暖かそうに見える写真ですけど、結構寒いんです。

この写真は道に見えますが、実は土でできた桟橋なんですよ。

広報:これ全体がですか?

HABUそうです。ちょっと見えづらいんですけど、この先で止まってるんです。ここの海は砂が白いからすごくきれいで。何枚も写真を撮りました。

【12月】

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HABUモロッコのマラケシュから、トドラ渓谷に向かう途中の道ですね。マラケシュから山越えしていくんですけど、だいたいこんな景色が続くんです。

広報:何もないというか……

HABUうん、岩。

広報:道がすごくきれいですね。

HABUきれいですよね。こういうところを走っていると、ロバを引いた民族衣装のおばちゃんや、ねずみ男みたいなおじさんが、てくてく歩いてたりするんですよ。まるでお伽話の世界に入ったみたいで。

HABUさんが写真を撮るときに大切にすること

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HABU僕が写真撮影のロケに行くとき、いつも2週間目くらいから調子が出てくるんです。最初の1週間くらいは写真を撮っても「何を撮ってるんだ」と思うものばかりで。

日常生活とか、ネットとか、そういう情報を引きずって頭で考えて写真を撮ってしまうんです。でも2週間目くらいからは考えないで、景色を「パッ」と見たら「あっ」とシャッターを押してるようになります。そうなると、素直で力のある写真が撮れますね。

いつも言ってるんですけど、「あっ」と思ったときにシャッターを押すじゃないですか。そうすると「あっ」と思った自分のエネルギーが写るんですよ。その後に光学ズームでまわしてみたり、三脚を立てたりとかするんですけど、やっぱり瞬間に反応したときのものが一番良くて。

最初のうちは、これがなかなかできないんです。時間が経つにつれて馴染んできて、写真のことしか考えなくなると、できるようになります。

広報:どうりで私達にはできないはずですね。一ヶ月も旅行なんてできませんから(苦笑)

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HABU特に今はスマホがあったり、パソコンを持って行ったりするじゃないですか。ほんの5、6年前までは、こんなところに行ったら電波なんて飛んでいなくて。だんだん読む本もなくなってくるし、そうすると自然を感じるしかなくなるんですよ。風の音や、波の音を聴いたりね。

それが面白くなってきて、雲が流れて形が変わったことに気づくようになります。最初のうちは「こういう雲が出たらいいな」とか「ハートの雲出ないかな」とか、頭で考えるんですけど、雲って勝手に変わるもの。それに気づけばいいんです。

特に運転してるときは、道と雲しか見てないので、その中から被写体になりそうなものを見つけたら、車を止めてパシャっと。こんな雲、考えていたって出ませんから、反応が大切で。

広報:一瞬で見つけられるか、ですね。

HABUなんというか、スポーツ選手と同じなんです。そういう反応できるリズムを作って、コンディションを整えるのが一番大変だなって思います。

あと、コンディションを整えるのに、移動ばっかりしてるのもダメ。街のまわりにポイントがありそうだったら一週間くらい滞在して、天気を見てみようかな、とか。移動がないと昼間はどこかビーチで泳いでみたり、ピクニックに行ってみたり、そういうこともできるので、気持ちが柔らかくなっていくっていうのかな。良いコンディションになりやすいですね。

ただ、ここのところ忙しくて、頭が相当固まってると思います。ちょっとほぐさないと(笑) 時間があれば、インドネシア・バリ島の隣りにあるロンボク島というところで、友達が宿をやっているので、1ヶ月くらい行ってみようと思っています。

最後に

いかがでしたでしょうか? 気まぐれな雲を撮るからこそ、自分の反応に身を委ねるという、HABUさん独特の感性を伺える、面白いインタビューでした。

2017年はどんなカレンダーになるのか・・・ご期待くださいね。

写真家・HABU プロフィール

羽部 恒雄(はぶ つねお)

1955年東京生まれ。10年間のサラリーマン生活を経て写真家に転身。「空の風景」をテーマに世界各地を撮影、写真集・雑誌・写真展などで数多くの作品を発表している。代表作に「空の色」「雲を追いかけて」「夢にむかって」「空を巡る旅」(倍インターナショナル)、「誰の上にも空はある」(講談社)、「空のとびら」「雲の回廊」(PHP研究所)などがある。

<オフィシャルWEBサイト>
www.habusora.com

<新刊>
「みんな空の下」2015年3月12日発売(パイ・インターナショナル刊)

 

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