道路標識に従って走行するのは安全運転の基本ですが、なかには速度制限標識が設置されていない区間も多くあります。そんなとき、どれくらいの速度で走行すべきか迷った経験はないでしょうか。
今回の記事では、法定速度と指定速度の違いから、道路の種類ごとのルール、さらにはスピード違反時の罰則まで、すべてのドライバーが知っておくべき重要なポイントを詳しく解説していきます。
目次
法定速度とは?

道路を走行する際の速度制限には、大きく分けて「法定速度」と「指定速度」の2種類があります。それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
法定速度と指定速度の違い
「法定速度(法定最高速度)」とは、道路標識などの標示がない場合に適用される、法律で規定された最高速度のことです。道路交通法により、道路の種類や車両の種類に応じて一律に定められています。
一方、「指定速度(制限速度)」は、道路標識や道路標示によって個別に設定された最高速度を指します。この速度は、道路の構造や交通状況、周辺環境などを考慮して、各都道府県の公安委員会が決定します。
例えば、住宅地の狭い道路では交通安全を重視して30km/hに設定されたり、見通しの良い郊外の道路では60km/hに設定されたりするなど、道路の特性に応じて柔軟に調整されています。
法定速度よりも指定速度が優先される
道路交通法第22条では、車両の最高速度についてこのように規定されています。
第22条(最高速度)
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度を超える速度で進行してはならない。
つまり、指定速度と法定速度の両方が存在する場合は、指定速度の方が優先されるということです。ドライバーは、まず道路標識や道路標示の有無を確認し、そこに記載された時速で走行する必要があります。標識などがない場合のみ、法定速度に基づいて運転することになります。
一般道路の最高速度は時速何キロ?

一般道路における最高速度は、道路の種類や構造などによって異なります。近年、生活道路の安全性向上を目的とした法改正も行われており、従来の速度制限から変更される部分もあるので注意が必要です。
最高速度が定められた区域がある
道路標識等による速度規制がない一般道路では、原則60 km/hの法定速度が適用されています。ただし、2026年9月1日からは改正道路交通法施行令により、生活道路における自動車の法定速度が30 km/hに引き下げられる予定です。この変更は、主に地域住民の日常生活に利用される狭い道路を対象としています。
一方で、以下の道路については、引き続き60 km/hの法定速度が維持されます。
- 道路標識または道路標示による中央線や車両通行帯が設けられている道路
- 構造上または柵などにより自動車の通行が往復の方向別に分かれている道路
- 高速自動車国道のうち、本線車道とこれに接する加速・減速車線以外の道路
- 自動車専用道路
一般道路に最低速度はない
一方、一般道路での最低速度は基本的に設定されていません。一般道路の場合はその場所によってさまざまな交通状況や道路環境が存在するためです。
ただし、各都道府県の公安委員会が交通の円滑化や渋滞緩和などのために必要と判断した場合には、個別に最低速度を指定できることになっています。警察庁が公開している資料によると、最低速度を規制する基準について以下のように定められています。
- 高速自動車国道と接続する自動車専用道路において最低速度の連続性を担保する必要がある区間や、橋梁部分・観光地・史跡などを通過する車両の低速走行により、一般交通に著しく支障を及ぼす区間に限定して実施
- 最低速度の指定は、原則として50 km/h
- 昼間の時間帯に恒常的な渋滞が発生している区間などでは、原則として実施しない
高速道路の最高速度は時速何キロ?

高速道路のうち、高速自動車国道の本線車道における普通乗用車の最高速度は、原則として100 km/hと定められています(道路交通法施行令第27条)。
ただし、道路の設計や安全性の検証を経て、一部区間では最高速度の引き上げが行われています。例えば以下の4区間では120 km/hの最高速度が設定されています。
- 新東名高速道路:御殿場JCT~浜松いなさJCT間
- 東北自動車道:花巻南IC~盛岡南IC間
- 東北自動車道:蓮田スマートIC~佐野スマートIC間
- 東関東自動車道:四街道IC~成田JCT間
また、常磐自動車道の岩間IC~桜土浦IC間では、110 km/hの最高速度が設定されています。
なお、自動車専用道路の法定最高速度は一般道路と同じく60km/hとなっていますが、こちらも一部引き上げられている区間があります。標識や標示がある場合はこれに従いましょう。
高速道路の最低速度は時速何キロ?
高速道路のように交通の流れが速い場所では、低速すぎる運転も渋滞や追突などの原因となり危険です。安全と円滑な流れを確保するため、最低速度が設定されている場合があります。
高速自動車国道の本線車道における普通乗用車の法定最低速度は、50 km/hと定められています(道路交通法施行令第27条の3)。危険防止のためやむを得ない場合を除き、この速度以上で走行しなければなりません。
自動車専用道路については法定最低速度は定められていませんが、神戸淡路鳴門自動車道や伊勢湾岸道路など一部の自動車専用道路では個別に最低速度50 km/hの規制が設けられています。
なお、道路標識や道路標示によって最低速度が指定されている場合は、法定速度よりも指定速度が優先されます。
速度にまつわる違反の違反点数と反則金

速度違反に対する罰則は、違反の程度に応じて段階的に設定されており、重大な違反には厳しい処分が科せられます。一般道路と高速道路、それぞれの違反点数と反則金を確認しておきましょう。
速度超過違反の違反点数と反則金
まず、一般道路での速度超過違反(普通車)の反則金は以下のとおりです。
- 15km/h未満の超過:9,000円
- 15km/h以上20km/h未満の超過:1万2,000円
- 20km/h以上25km/h未満の超過:1万5,000円
- 25km/h以上30km/h未満の超過:1万8,000円
違反点数については以下のようになっています。
- 20km/h未満の超過:1点
- 20km/h以上25km/h未満の超過:2点
- 25km/h以上30km/h未満の超過:3点
- 30km/h以上50km/h未満の超過:6点
- 50km/h以上の超過:12点
また、高速道路における速度超過違反(スピード違反)の普通車の反則金も、30km/h未満までは一般道路と同じです。30km/hを超えた場合の違反金は、以下の通りです。
- 30km/h以上35km/h未満の超過:2万5,000円
- 35km/h以上40km/h未満の超過:3万5,000円
違反点数については以下のようになっています。
- 20km/h未満の超過:1点
- 20km/h以上25km/h未満の超過:2点
- 25km/h以上40km/h未満の超過:3点
- 40km/h以上50km/h未満の超過:6点
- 50km/h以上の超過:12点
特に注意すべきは、一般道路で30km/h以上、高速道路で40km/h以上の速度超過は一発免停の対象となることです。これらの重大な違反は刑事処分として6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
最低速度違反の違反点数と反則金
一方、最低速度違反に対する罰則は、普通車の場合、反則金6,000円、違反点数1点となっています。クルマの故障や体調不良など、やむを得ない理由以外での低速走行は避けましょう。
高速道路だけでなく一般道路においても、最低速度の標識(青い数字の下に青い線が引かれたもの)が設置されている区間では、同様の罰則が適用されます。
まとめ
法定速度は法律で一律に定められた基準速度であり、指定速度は道路標識や道路標示によって個別に設定された速度です。指定速度の方が優先されるため、常に標識の確認を怠らないことが大切です。
一般道路の法定最高速度は原則60 km/hですが、2026年9月からは生活道路における速度が30km/hに引き下げられ、歩行者や自転車の安全がより重視されることになります。一方、高速道路では最高速度100 km/hが原則ですが、一部区間では110 km/hや120 km/hに引き上げられている場合もあります。
速度違反に対する罰則は、超過速度が大きくなるほど厳しくなります。決められた速度をしっかり守りつつ、そのときの道路状況や天候に応じた調整を行っていくことが重要です。