クルマに乗ってさあ出発!というタイミングで「免許証を忘れた!」と焦った経験はありませんか。運転免許証を携帯せずに運転することは、交通違反(道路交通法違反)にあたります。
今回の記事では、免許証不携帯の定義から、罰則、事故に遭ったときの対応まで詳しく解説します。また、よくある疑問についてもQ&A形式でお答えしますので、安全運転の参考にしてください。
目次
免許証不携帯の定義
免許証不携帯とは、運転免許を持っている人が免許証を携帯しないまま自動車や原付バイクなどを運転する行為のことを指します。道路交通法第95条第1項では「免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない」と明確に規定されており、運転時の免許証携帯は法的義務となっています。
無免許運転の定義
一方、無免許運転は、免許自体を持っていない状態で運転することを指します。こちらは道路交通法第64条で禁止されている違反行為で、純粋な無免許だけでなく、種別外(免許証に記載された車種以外)や停止中(免許の効力が停止・取り消されている状態)の運転も含まれます。
免許証不携帯と無免許運転は一見似た言葉ではありますが、前者が「免許はあるが持参していない」のに対して、後者は「運転する資格がない」という決定的な違いがあり、処罰の重さも大きく異なります。
免許証不携帯の違反点数と反則金
免許証不携帯で検挙された場合の処罰は、比較的軽いものになっています。違反点数は加算されず、反則金として全車種共通で3,000円が科されます。反則金は、交付された納付書を使用して指定された期限内に、銀行・信用金庫・郵便局などで支払います。
無免許運転の違反点数と罰金等
一方、無免許運転の処罰は極めて重く設定されています。刑事処分として「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科され、行政処分では違反点数25点が一度に加算されます。前歴のない運転者でも即座に免許取り消し処分となり、2年間の欠格期間が設けられます。過去の違反歴がある場合は、欠格期間がさらに延長される可能性もあります。
また、無免許運転者に車両を提供したり、無免許と知りながら同乗したりする行為も「無免許運転ほう助」として処罰の対象となります。車両提供者は運転者と同等の処分、同乗者も「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」という重い処罰を受けることになります。
免許証の提示が求められるシーン

運転中に警察官から免許証の提示を求められる場面は主に以下の2つです。
検問を受けたとき
警察による検問の際に、運転免許証の提示を求められることがあります。検問は犯罪の予防や捜査、交通違反(道路交通法違反)の取り締まりなどを目的として実施され、ドライバーに対して身分確認の一環として免許証の確認が行われます。
交通違反(道路交通法違反)をしたとき
また、交通違反(道路交通法違反)や事故の現場でも、捜査の一環として運転免許証の提示が求められます。これにはドライバーが運転を継続できるかどうか確認するという目的もあります。さらに飲酒運転の疑いがあるドライバーに対しても、危険防止措置として免許証の提示が求められることがあります。
なお、いずれの場合も免許証の提示を拒否すると「免許証提示義務違反」として5万円以下の罰金が科される可能性があり、場合によっては現行犯逮捕される場合もあります。
免許証不携帯で事故に遭遇した場合

続いて、免許証を携帯していない状態で交通事故に遭った場合の影響について詳しく説明します。
事故責任と免許不携帯は無関係
免許証不携帯は、事故の責任や過失割合に一切影響しません。不携帯は単に「免許証を持参していない」という状況であり、運転技能や運転資格に問題があるわけではないためです。
事故原因の調査、過失割合の決定、損害賠償の算定などは通常どおり行われ、免許証不携帯が理由で不利な扱いを受けることはありません。また、自動車保険(任意保険・自賠責保険)の適用にも基本的に影響はないといわれています。
免許不携帯の罰則は適応される
事故処理とは別に、免許証不携帯に対する罰則は適用されます。事故現場で免許証不携帯が判明した場合、先述のとおり3,000円の反則金が科されます。ただし、事故対応が優先されるため、不携帯に対する交通反則告知書(青切符)や反則金仮納付書は後日送付される場合もあります。
後日警察に免許証提示を求められる
事故現場で免許証を提示できなかった場合、後日指定された警察署や交番に免許証を持参し、提示する必要があります。具体的な手続きの方法や期限については、現場の警察官から詳しい説明がありますので、その指示にしたがって対応してください。
免許証不携帯に関するよくある質問

最後に、免許証不携帯についてドライバーのみなさんから寄せられる質問にお答えします。
免許証を携帯してないことに気づいたら
運転中に免許証を忘れたことに気づいた場合は、ただちに安全な場所にクルマを停めて、運転を中止することが基本です。公共交通機関を利用して免許証を取りに戻るか、免許証を持った同乗者に運転を代わってもらいましょう。また、家族に免許証を届けてもらうといった方法もあります。「バレなければ大丈夫」という考えで運転を続けるのは危険であり、発覚した場合の罰則は避けられません。
免許証は普段から財布やキーケースなどの貴重品と一緒に管理するなど、忘れ物防止の対策を講じることが大切です。ちなみに車内に置きっぱなしにしておくというのは、盗難や悪用のリスクがあるので避けた方が良いでしょう。
免許証の写真を持っていれば大丈夫?
免許証の写真を持っているだけでは免許証不携帯の違反となります。道路交通法では免許証の「原本」を携帯することが義務付けられているためです。同様に免許証のコピーや、スマホで撮影した免許証の画像も有効な免許証とは認められないため、必ず物理的な免許証を携帯する必要があります。
なお、マイナ免許証の場合はマイナンバーカードの携帯が必要です。スマホにマイナンバーカードの機能を搭載している場合でも、現時点ではスマホのみでの運転は免許不携帯となるので注意が必要です。
免許不携帯はゴールド免許に影響する?
免許証不携帯では加点されないため、ゴールド免許(優良運転者免許)の維持に直接的な影響はありません。ゴールド免許の条件は「5年間の無事故・無違反」ですが、違反点数の付かない軽微な違反は対象外となります。
ただし、免許証不携帯と同時に1点でも違反点数の付く交通違反(道路交通法違反)が発覚した場合は、ゴールド免許からブルー免許に降格するので注意が必要です。
まとめ
免許証不携帯は違反点数が加算されない比較的軽微な違反であり、無免許運転とは処罰の重さが全く異なりますが、どちらも避けるべき違反行為であることに変わりはありません。
事故に遭った際も、免許証不携帯が事故の責任に影響することはありませんが、不携帯に対する処罰は別途適用されます。運転前の確認を習慣化し、常に免許証を携帯することで、不要なトラブルを避けられるでしょう。