現在、日本の自動車市場ではオートマチック・トランスミッション(AT)車が主流となっています。免許取得の際には「オートマ限定免許でマニュアル免許はとらない」という方も多いでしょう。
一方で、マニュアル・トランスミッション(MT)車は、運転の楽しさを追求するドライバーを中心に、根強い人気を保っています。そこで今回は、AT車とMT車の違いや、それぞれの特徴について詳しく解説します。
目次
オートマ車とマニュアル車の違い
AT車とMT車は、変速機の仕組みや操作方法などに違いがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
クラッチ操作の有無
まず、MT車ではクラッチペダルの操作が必要です。クラッチは、エンジンの動力をタイヤに伝えたり遮断したりするためのもので、ペダルを踏むと切れて、足を離すとつながる仕組みです。
MT車を発進させるときは、このクラッチペダルを踏み込んだ状態でエンジンを始動し、アクセルを適度に踏みながら、クラッチペダルをゆっくりと戻していきます。このとき、クラッチペダルの戻し方が急すぎたり、アクセルの踏み方が弱すぎたりすると、エンジンが停止してしまう原因となります。
AT車でクラッチ操作が不要な理由は、トルクコンバーターという機構が採用されているためです。この装置が自動でエンジンの動力を適切にタイヤへ伝達し、スムーズな発進・停止を可能にしています。
ちなみに近年のトラック業界では、MTの構造をベースにクラッチ操作と変速操作を自動化した「セミオートマ(AMT)」の導入も進んでいます。
ギアチェンジの操作の有無
AT車ではシフトレバーをDレンジに入れるだけで最適なギアが自動的に選択されますが、MT車ではドライバー自身が適切なタイミングでギアチェンジを行う必要があります。通常、発進時は1速からスタートし、速度が上がるにつれて2速、3速と順次ギアを上げていきます。また、減速時には適切なタイミングでギアを落とす操作も必要です。
マニュアル車の運転が難しいとされる理由
MT車の運転には独特の難しさがあり、特に初心者にとっては習熟に時間がかかります。AT車よりも難易度が高いといわれる理由を見ていきましょう。
エンストのリスクがある
MT車では操作ミスによるエンストが起こりやすく、運転に慣れている人でもそのリスクはあります。具体的には、クラッチをつなぐのが早過ぎたり、エンジンの回転数が不十分だったりした場合にエンストが起こります。後続車への影響も考えて、ストレスを感じてしまうドライバーさんもいるでしょう。
坂道発進が難しい
MT車の坂道発進は、特に初心者にとって難しい操作の一つです。クラッチ、アクセル、ブレーキの3つのペダルとサイドブレーキを適切なタイミングで操作する必要があり、手順を誤るとクルマが後退したり、エンストを起こしたりすることもあります。AT車では、ブレーキを離すだけで自然に前進するクリープ現象があるため、坂道発進もより容易です。
渋滞時のドライバーへの負担が大きい
MT車のドライバーにとって、渋滞は大きな負担となります。不規則な発進と停止を繰り返し、そのたびに複雑な操作をすることになるためです。特に長時間の渋滞では疲労しやすく、運転に集中力を要します。負担を軽減するためにアクセルを踏まずにアイドリングで発進する方法もあります。
オートマ車のメリットとデメリット
現在主流となっているAT車には、さまざまな特徴があります。ここではその長所と短所について見ていきましょう。
オートマ車のメリット
AT車の最大の特徴は、誰でも簡単に運転できることです。クラッチ操作が不要で、ギアチェンジも自動で行われるため、ハンドル操作に集中できます。また、渋滞時の運転負担が少なく、長時間のドライブでも疲れにくいのが特徴です。さらに、最新のAT車には高度な運転支援システムが搭載されており、より安全な運転をサポートしてくれます。
オートマ車のデメリット
構造上の理由で、MT車よりも車両価格が若干高くなったり、燃費が劣ったりする場合があります。また、運転操作が簡単であるがゆえにペダルの踏み間違いで誤発進を起こしやすいのもデメリットです。ただし近年は誤発進抑制機能を搭載した車種も増えています。なお、AT車はMT車よりもエンジンブレーキが利きにくいため、フットブレーキの多用によるべーパーロック現象やフェード現象にも注意が必要です。
マニュアル車のメリットとデメリット
MT車は、AT車と比べると高度な運転技術を必要とする一方で、独自の魅力をもっています。その特徴を詳しく見ていきましょう。
マニュアル車のメリット
MT車の最大の魅力は、運転の楽しさを直接的に味わえることです。自分でギアを選び、クラッチを操作することで、愛車との一体感をより強く感じられます。特にスポーツカーでは、意のままにギアを操ることでよりダイナミックな走りが楽しめます。また、構造がシンプルなため、車両価格が比較的安く、整備もしやすいという特徴があります。
マニュアル車のデメリット
MT車の最大の弱点は、運転操作の感覚をつかむまでに時間がかかることです。また、先述のとおり渋滞時には頻繁なクラッチ操作が必要となり、疲労を感じやすくなります。さらに、近年は新車でMT車を選択できるモデルが少なくなっているため、好きな車種が中古車でしか手に入らないなど、選択肢が限られてきているのもデメリットといえるでしょう。
教習所での受講料が違う理由
教習所では、AT限定免許とMT免許で免許取得費用に差があります。合宿免許・通学免許のいずれの場合も、MT免許の方が2~3万円ほどが高くなるのが一般的です。MT車の運転免許取得には、クラッチ操作やギアチェンジなどAT車にはない運転技術の習得が必要になり、より多くの講習時間がかかるためです。
まとめ
AT車とMT車には、それぞれに特徴があり、一概にどちらが優れているとはいえません。AT車は運転のしやすさと快適性に優れ、現代の交通事情に適しているといえます。一方、MT車は運転の楽しさを重視する方や、クルマとの一体感を大切にする方に選ばれています。
運転免許を取得する際には、今回ご紹介したポイントを参考に、ご自身のライフスタイルや目的に合わせてAT限定かMTかを選択することをおすすめします。