あおり運転(煽り運転)は、重大な交通事故や事件につながる危険行為です。今回の記事では、あおり運転の定義や罰則の内容と、対処法について詳しく解説します。
目次
あおり運転(妨害運転罪)とは
以前の道路交通法にはあおり運転そのものを取り締まる規定は存在せず、「車間距離不保持」や「急ブレーキ禁止違反」のほか、刑法の暴行罪などが適用されてきました。
2020年(令和2年)6月、「妨害運転罪」の創設で厳罰化されてからは、他車への妨害目的での車間距離不保持や急な進路変更、急ブレーキなどの10種類の行為が「あおり運転」として取り締まられるようになったのです。
あおり運転(妨害運転罪)違反点数と罰金
あおり運転の罰則は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と「違反点数25点」、あおり運転によって高速道路上で相手車両を停車させるなどの著しい危険を生じさせた場合の罰則は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と「違反点数35点」で、いずれも一回で免許取り消しとなります。
欠格期間は2~3年で、前歴や累積点数により最大10年程度になる場合もあります。さらにあおり運転が原因で人を死傷させた場合は「危険運転致死傷罪」が適用され、厳罰に処せられることがあります。
あおり運転に該当する違反行為とその罰則

ここからは、あおり運転の対象となる10種類の行為について詳しく見ていきましょう。
車間距離不保持
車間距離を極端に詰めて先行車に接近する行為です。先行車にプレッシャーを与えるだけでなく、急停止の際には追突の恐れもあります。車間距離の目安は、一般道路の場合で「走行速度マイナス15m」(高速道路の場合は走行速度と同程度)といわれていますが、距離でわかりづらい場合は車間時間で判断する「2秒ルール」という方法もあります。
進路変更禁止違反
急な進路変更や蛇行運転などで周囲の車両の進路を妨害する行為です。たとえ妨害目的でなくても、頻繁に進路変更をしているとあおり運転と見なされることもあるので注意が必要です。進路変更の際は必ずウインカーを出し、周囲への意思表示を忘れずに行いましょう。
急ブレーキ違反
後続車への妨害行為を目的に急ブレーキをかける行為です。わざわざ先行車を追い越してから急ブレーキをかけるケースも見られます。また、小刻みにブレーキを踏む行為も後続車からあおり運転と受け取られる場合もあるので注意しましょう。
追越し違反
左車線からの危険な追い越し行為です。道路交通法(第28条)では、追い越しは原則右側からと定められています。また、追い越し禁止場所(標識・標示のある場所や交差点の手前など)での追い越しも違反行為になるので注意しましょう。
通行区分違反
道路で指定された通行方法に従わない行為のことを指します。具体的には、対向車線へのはみ出しや逆走、右折レーンからの直進や左折などの行為もこれにあたります。特にはみ出しや逆走は対向車との正面衝突のリスクがあります。
警音器使用制限違反
不必要かつ執拗なクラクション(警音器)を鳴らす行為です。道路交通法(第54条)では、規定により鳴らす必要がある場面と危険防止のためやむを得ない場面を除いて、クラクションを鳴らす行為は禁止されています。「サンキュークラクション」も相手によっては不快に思われる場合があるので気をつけたいところです。
減光等違反
通行妨害目的でのハイビーム(走行用前照灯)継続や執拗なパッシング行為のことです。夜間の走行はハイビームが基本ですが、近くに先行車や対向車がいる場合はロービームに切り替えるなど、周囲の運転者への配慮が大切です。
安全運転義務違反
安全運転に必要な操作や確認などを怠ることを指します。あおり運転の場合、幅寄せや急な加減速、蛇行運転などで、周囲のクルマや自転車、歩行者の通行を妨害する行為などが挙げられます。クルマやバイクの片手運転や前方不注意などもこの違反に該当します。
最低速度違反
高速道路などで意図的に低速走行する行為です。道路交通法(第23条)では、最低速度が指定された区間でその速度を下回る速度で走行することが禁止されており、一般的に高速道路では最低速度が時速50kmと定められています。スピードの出し過ぎはもちろん、ノロノロ運転も事故の原因になり大変危険です。
高速自動車国道等駐車違反
駐車が禁止されている高速道路や自転車専用道路で意図的に駐停車する行為です。クルマの流れが速い高速道路での駐停車は後続車からの発見が遅れやすく、追突事故や多重事故(玉突き事故)の原因となります。
あおり運転の被害にあったら
あおり運転の被害にあったときは以下の流れで対処しましょう。
安全な場所で停車する
路上での停車は事故につながる可能性があるため、まずは駐車場やSA・PAなどの安全な場所へすみやかに移動します。さらなるトラブルを防ぐため、人目のある場所に停車することも大切です。
クルマのドアにすべてロックをかける
クルマを停めたらすべてのドアを必ずロックしておきます。追いかけてきた相手が脅したり挑発してきたりする状況でも、車外に出るのは避けましょう。
警察に連絡する
110番通報をして、警察が到着するまで車内で待機します。
あおり運転から身を守る方法

あおり運転のターゲットにならないためには、周囲のドライバーをいらだたせる運転をしないことが大切です。「前方のクルマと適切な車間距離をとる」「無理な車線変更をしない」「急停止をしない」など、周囲に配慮した安全運転を心がけましょう。もしも後続車にあおられていると感じたら、すみやかに道を譲るのも一つの対策です。
相手によっては、どれだけ気をつけていても迷惑運転と思われてしまうこともあります。万が一トラブルになった際に自分の身を守るためにも、ドライブレコーダーは必ず装備しておきましょう。あおり運転の抑止にも効果的です。
まとめ
あおり運転には重い罰則が設けられていますが、危険な行為をするドライバーはいまだに存在します。被害者になってしまったときは、今回ご紹介したポイントを参考に落ち着いて対処しましょう。
一方、無自覚のうちに加害者になり得るのもあおり運転の怖いところです。日ごろからゆとりをもった運転を心がけ、周囲のドライバーに迷惑をかけたと感じたときは、アイコンタクトやハザードなどで気持ちを伝えるようにしましょう。