酒気帯び運転と酒酔い運転との違いはどこにある?
- トリビア
- 2022.03.01
飲酒運転による死亡事故件数は、平成12年以降減少傾向にあり、令和2年には平成12年の約1割(12.4%)にまで減少しました。しかし根絶までにはまだ至っていません。重大な交通事故の原因となる飲酒運転の「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」とにはどのような違いがあるのかを解説します。
目次
同じ飲酒運転でも「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」はここが違う
道路交通法では、第65条で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と定められています。行政処分や罰則においては「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」とで次のような違いがあります。
酒気帯び運転の基準は「呼気中アルコール濃度」
日本酒やビール、ワイン、チューハイ、ウイスキーなどアルコール飲料を飲むと、消化管から吸収されたアルコールは血液へ入り血中のアルコール濃度が上がります。アルコールは血管を通じて脳へと到達し、脳の神経細胞に作用して麻痺させます。その作用の度合いは血中アルコール濃度によって決まります。そして少し飲んだ程度で、酔いを感じず気分が爽快になっていても、脳の判断力は鈍くなっているのです。
血中アルコール濃度を詳細に確かめるには、採血を行ってアルコール測定器で検査する必要がありますが、実は簡単に推定する方法があります。それが呼気アルコールの検査です。血中のアルコール濃度(%)を5倍した数字がほぼ呼気中アルコール濃度(mg/L)になるのです。そのため行政処分を科す際の、酒気帯び運転の基準として採用されています。
酒気帯び運転での行政処分
- 呼気中アルコール濃度が「0.15mg/L〜0.25mg/L未満」の場合:基礎点数(違反点数)13点、免許停止90日(前歴・累積点数がない場合)
- 呼気中アルコール濃度が「0.25mg/L以上」の場合:基礎点数(違反点数)25点、免許取消し、欠格期間2年
「0.15mg/L以上」が行政処分「0.25mg/L以上」になると、より厳しい行政処分が科せられます。
罰則については、呼気中アルコール濃度に関係なく以下のように定められています。
酒気帯び運転での罰則
- 酒気帯び運転した者:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
- 酒気帯び運転者に車両を提供した者:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
- 酒気帯び運転者に酒類を提供した者・同乗した者:2年以下の懲役、または30万円以下の罰金
酒酔い運転の基準は「正常な運転ができるかどうか」
一方、「酒酔い運転」はどのような状態での運転か、次のように解説されています。
酒酔い運転とは、身体に保有するアルコール量にかかわらず、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態の人をいいます。
大阪府警WEBサイト「Q1 酒酔い運転と酒気帯び運転の違いは何ですか。」より
酒酔いの状態、つまり正常な運転ができないと見られる場合は、呼気中アルコール濃度に関わらず、酒気帯び運転よりも重い行政処分と罰則が科されます。
酒酔い運転での行政処分
酒酔い運転をした者:基礎点数(違反点数)35点、免許取消し、欠格期間3年(前歴・累積点数がない場合)
酒酔い運転での罰則
- 酒気帯び運転した者:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 酒気帯び運転者に車両を提供した者:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 酒気帯び運転者に酒類を提供した者・同乗した者:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
どの位の飲酒量で違反となるのか
アルコールの代謝はほとんどが肝臓で行われ、お酒を飲んだあとの血中アルコール濃度は「お酒と一緒に食事をとったか」「どんなお酒を飲んだか」「飲み方」「飲酒者の体格」「飲酒者の肝臓の大きさ」「酵素の遺伝子型」「飲酒習慣の有無」などの要因によってアルコールの代謝スピードは大きく左右されます。また、同じ人でもアルコールの代謝の速度は変化します。
そのため、どのくらいお酒を飲めば、どの程度の血中アルコール(呼気中アルコール)濃度になるか、どの程度の時間でアルコールが代謝されて呼気中アルコールが基準以下となるかは、まったく予想がつきません。飲酒後
「飲んだら乗るな」は必ず徹底!
酒気帯び運転・酒酔い運転の原因の一つは「ドライバー自身の過信や油断」といわれています。決して「少し飲んだだけだから大丈夫」「仮眠をとったからアルコールは抜けたはず」といった判断をせず、お酒を飲んだら運転しないこと、翌日に運転する予定がある場合には運転する時間を考えて飲酒量や飲酒時間を調整することを徹底し、安全運転を心がけましょう。