べーパーロック現象とは?直し方やフェード現象との違いについて解説!
- メンテナンス
- 2023.10.03
下り坂を運転している途中、もしも突然ブレーキがまったく利かなくなったら……。少し想像しただけでゾッとするような状況ですが、クルマの使い方によっては本当に起こることもあります。今回の記事では「べーパーロック現象」の原因・対策などについて詳しく解説します。
目次
ベーパーロック現象とは?
ブレーキオイル(ブレーキフルード、ブレーキ液)の過熱によって、ブレーキが利きにくくなったり効かなくなったりする現象を「べーパーロック現象」といいます。べーパー(vapor)は英語で「蒸気」という意味で、蒸気によって制動力の伝達ができなくなることを意味します。
ブレーキの仕組み
まずはフットブレーキの仕組みについておさらいしておきましょう。フットブレーキには「ドラムブレーキ」と「ディスクブレーキ」の2種類ありますが、ここでは現在主流となっている油圧式ディスクブレーキについて説明します。
ドライバーがブレーキペダルを踏むと、その力はブレーキブースター(倍力装置)に伝わり、マスターシリンダーで油圧に変換されます。その油圧がブレーキキャリパーのピストンを動かすと、車輪とともに回転しているディスクローターにブレーキパッドが押し当てられ、クルマが減速・停止するという仕組みです。
ベーパーロック現象が起こる原因
べーパーロック現象は、ブレーキオイルや、ブレーキオイルに含まれた水分が何らかの原因で沸騰して気泡が発生することで起こります。この気泡によって油圧がうまく伝わらなくなり、ブレーキが利かなくなるのです。ブレーキオイルが沸騰する原因としては、フットブレーキの過度な使用や、ブレーキオイルの経年劣化で沸点が下がることなどが挙げられます。
ブレーキペダルを同じ強さで何度か踏んでみたときに、「毎回同じ深さに踏み込めない」「ふわふわとした感覚がある」といった症状がみられるときは気泡の混入が疑われます。なるべく早くプロの点検を受けるようにしましょう。
ベーパーロック現象の直し方
べーパーロック現象はブレーキが冷めれば一時的に直るかもしれませんが、上にも述べたようにこの現象の根本的原因はブレーキオイルの沸騰です。ブレーキオイルが劣化していると起こりやすくなるため、交換をおすすめします。
フェード現象との違い
ブレーキが利かなくなる現象としてもう1つ有名なのが「フェード現象」です。どちらもフットブレーキの過度な使用によって起こりますが、べーパーロック現象はブレーキオイルに原因があるのに対して、フェード現象はブレーキパッド(摩擦材)に原因があります。フェード現象は、ブレーキパッドの異常過熱でブレーキローターとの間に「ガス」が発生することによって制動力が下がります。
ベーパーロック現象の対策方法
最後に、べーパーロック現象を防ぐための3つのポイントをご紹介します。
エンジンブレーキを活用する
ブレーキの過熱を防ぐために、フットブレーキは使いすぎずエンジンブレーキを活用しましょう。特に長い下り坂に入る前には段階的にギアを落としてスピードを落としておくことが大切です。シフトレバーの表記は車種によって異なることもあるので、事前に使用方法を確認しておきましょう。
ブレーキオイルを定期的に交換する
乗車頻度や走行距離にかかわらず、ブレーキオイルは経年劣化していきます。ブレーキオイルは時間とともに空気中の水分を吸収して沸点が下がるため、長く使い続けることでべーパーロック現象が起こりやすくなるのです。ブレーキオイルの交換頻度は一般的に2~3年に1度といわれていますが、使用方法によって劣化が早まることもあるので適切なタイミングで交換しましょう。
ブレーキ各部を定期的に点検する
ブレーキは、ブレーキオイルのほかにもブレーキキャリパー、ブレーキパッド、ディスクローターなどさまざまな部品で構成されています。各部分に1つでも異常があるとベーパーロック現象はもちろんそれ以外のトラブルにつながることもあるので、定期点検を行うようにしましょう。
まとめ
今回の記事では「ベーパーロック現象」について解説しました。ブレーキが利かないということは、タイミングによっては大事故を引き起こす危険性もあります。ちょっとした運転のコツと日々のメンテナンスで防ぐことができるので、今回ご紹介したポイントをときどき思い出してみてくださいね。ベーパーロック現象と似たフェード現象については、こちらの記事をご覧ください。