スリップのメカニズムを知れば、安全運転に直結!滑りの原因は「水」にあり
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- 2016.01.28
「氷は滑る」というイメージがありますが、実は、乾いている氷は滑りません。試しに、冷凍庫から氷を取り出して手に乗せると、しばらくの間は、指で掴んでも滑らないはず。ところがしばらくすると、氷の表面が解けて水の膜ができるために滑りやすくなります。これと同じことが、冬の凍結路面でも起きています。今回はスリップの要因となる、そのメカニズムを紹介したいと思います。
氷が解けるのは「熱」のせいではない!?
凍結路面に水膜ができる原因は、外気温による熱だけではありません。圧力を受けると氷の結晶が崩壊し、0度以下でも水になります。アイススケートの靴についた刃も、その原理を応用したもの。接地する面積を小さくすることで、体重による圧力を高めて、刃が触れている部分の氷を溶かして、滑りやすくしています。
自動車のタイヤも、接地している面積は1つのタイヤあたりはがき1枚程度。その小さな面積で、自重を支えているため、大きな圧力がかかっているのです。つまり、外気温が氷点下であっても、この圧力によってタイヤに接した氷は解け、水の膜ができているのです。この水膜が、タイヤと路面との摩擦を小さくし、スリップの要因となります。
氷のできかたによっても「滑りやすさ」が違う!
滑りやすさを示す数値として「摩擦係数」があります。摩擦係数とは、物体同士の摩擦力の大きさと、接触面に垂直な抗力(≒自動車の重さ)の大きさの比で、小さいほど滑りやすい状態を示します。つまり、気温が高くなったり、自動車が路面を通った際にかかる圧力によって路面が解けると、小さくなっているというわけです。また、氷の結晶のサイズも、摩擦係数に影響を与えます。
急激に気温が下がった朝などにできる短時間で凍った氷は、結晶が大きく育つ前に固まるため、結晶が小さく不規則になります。結晶が小さいと、結合面が多く空気などに触れやすくなるため、結晶の大きな氷よりも解けやすくなるのです。
特に注意すべきは「ミラーバーン」や「ブラックアイスバーン」
タイヤとの雪が少し解けて、水膜ができている路面よりも、カチカチに凍っている乾いた圧雪路のほうが、ブレーキの利きはよくなりますが、常に凍結しているとは限りません。一番滑りやすいのは、少し解けて濡れている路面。例えば、交差点などでよく見られる「ミラーバーン」は、信号待ちの間に自動車の自重を受けたタイヤの圧力やエンジン・マフラーの熱で解けた氷が、再び凍るのを繰り返しながら、ブレーキをかけた時のタイヤによって磨かれてツルツルになった状態です。
また「ブラックアイスバーン」にも要注意。一見、濡れた路面のように見えますが、実は透明な氷が道路を覆っている状態で、雨の路面と同じ感覚で走行していると、ハンドルを取られかねません。
水膜を取り除いて氷結路面に密着!
摩擦係数を高めるには、水膜を取り除き、氷を乾いた状態にする必要があります。スタッドレスタイヤが冬のドライブでスリップを防ぐのは、この「水膜を取り除く」効果があるから。トーヨータイヤのスタッドレスタイヤは、タイヤに刻まれた溝(サイプ)とNEO吸水カーボニックセルで水を吸い取り、路面とタイヤとを密着させるのです。
スタッドレスタイヤが冬のドライブに必須な理由は、まさにその点にあるわけですね。雪が降らない地域や、雪が積もらない都市部でも、冷え込みの厳しい早朝には路面が凍結することも多いものです。暖冬だからと油断せず、足回りのメンテナンスをお忘れなく!