救護義務違反とは何か?ドライバーが知るべき法律と対応
- HOW TO
- 2025.10.30
安全運転を心がけているから交通事故とは無縁だと考えているドライバーも、予期せぬ瞬間に事故の当事者となってしまう可能性はゼロではありません。そして、その直後の行動が、事故相手の命運を、そしてあなた自身の未来を大きく左右することになります。
事故発生時に適切な対応を怠り、その場から立ち去ってしまう行為は「救護義務違反」として法律で厳しく禁じられています。
この記事では道路交通法が定める具体的な義務と罰則、そしてドライバーがとるべき行動を詳しく解説します。責任あるドライバーとして、知っておくべき知識を確認していきましょう。
目次
用語定義:「救護義務違反(ひき逃げ)」とは?
「救護義務違反」とは、交通事故によって人を死傷させた場合に、運転者や同乗者などが道路交通法で定められた義務を果たさずに現場から立ち去ってしまうことです。
特に、負傷者救護を怠って逃走する行為が、一般に「ひき逃げ」と呼ばれ、最も悪質な行為として厳しく罰せられます。
具体的な義務と違反時の罰則
救護義務の具体的な内容は道路交通法第72条の第一項に定められています。
道路交通法第72条の義務内容と第117条・117条の5・119条の罰則概要
道路交通法第72条第一項では以下の内容が、交通事故時の義務として規定されています。
- 直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等の必要な措置をとる(救護義務)
- 警察官に交通事故発生日時や場所、死傷者・負傷者数、損壊物などについて報告する
これらの義務に違反すると、以下の罰則が適用されます。
- 第117条(運転者の義務違反)
第一項:当該車両等の交通による人の死傷があった場合に、運転車が義務を怠ると、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。
第二項:人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。 - 第117条の5(同乗者の義務違反)
同乗者が救護義務を危険防止措置を怠ると、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。 - 第119条第十七項(報告義務違反)
警察への報告を怠ると、3ヶ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金。
加害車両・物損の場合との罰則の違い
交通事故は、人が死傷した「人身事故」と、物が壊れただけの「物損事故」に大別されます。
人身事故で負傷者がいるにもかかわらず救護せずに立ち去る行為は、前述の通り第117条が適用される重罪(ひき逃げ)です。 一方、物損事故(当て逃げ)では負傷者がいないため「救護義務」は発生しません。しかし、危険防止措置や警察への報告を怠れば、「報告義務違反」として罰則の対象となります。
救護義務違反になり得るケースの例
「自分はそんなことはしない」と思っていても、誤った判断が意図せず救護義務違反につながるケースがあります。
「『大丈夫』と相手に言われたから」でも違反になる理由
事故直後に相手が「大丈夫です」と言ったとしても、それを鵜呑みにして警察への連絡等を怠り立ち去ってはいけません。時間が経ってから相手が痛みを訴え、診断書を警察に提出するケースもあります。
負傷の有無や程度を医学的に判断できるのは医師だけです。軽いケガのように見えたり、相手がケガや痛みを認識していない場合でも、警察に報告し、状況に応じて救急車を呼ぶなどの救護を行う義務があります。相手の言葉は、ドライバーの救護義務を免除する理由にはなりません。
非接触事故でも救護義務違反になる事例
交通事故は物理的な接触を伴うとは限りません。例えば、あなたの急な車線変更に驚いたバイクが転倒し負傷した場合、あなたのクルマとバイクが接触していなくても、あなたの運転が事故の「原因」であると認められれば、あなたは救護義務を負います。「ぶつかっていないから関係ない」と判断して立ち去れば、救護義務違反に問われる可能性があるのです。
事故後の正しい行動フローと安心なカーライフへ
万が一、事故の当事者となった場合、パニックにならず冷静に行動することが義務の遂行につながります。
事故直後にすべき基本ステップ
事故直後は、以下のステップを忘れないようにしてください。
- 【停止】直ちに運転を停止する
まずはハザードを点灯させるなどして、安全な場所にクルマを停止させます。 - 【人確認(救護)】負傷者の確認と救護
すぐにクルマから降り、相手方や同乗者の負傷の有無を確認します。負傷者がいれば、意識を確認し、119番通報を最優先で行います。過去の判例では、負傷者を見つけられない状況で救護措置と「無関係な買物のために」1分あまり「コンビニエンスストアに赴いた」ケースで、救護義務違反となったケースがあります。 - 【危険防止】二次被害の防止
後続車による追突を防ぐため、発炎筒や停止表示器材(三角表示板)を車両後方に設置します。 - 【報告】警察への報告
人の負傷の有無や事故の大小に関わらず、必ず警察へ通報します。
まとめ
救護義務違反は、重い刑罰が科される重大な法律違反です。万が一の事態に直面したとき、ドライバーとしての責任を果たせるかどうかは、正しい知識と日ごろの心構えにかかっています。事故直後の「停止・救護・危険防止・報告」というステップを心に留め、常に責任感を持ってハンドルを握るよう心がけましょう。
