世界各国にはさまざまな道路標識がありますが、オーストラリアでドライブした経験のある方は、動物の道路標識の多さに気づいたのではないでしょうか。その標識は野生の動物や家畜の交通事故「ロードキル」への注意を促すためのもの。今回はオーストラリアの動物に関する道路標識について調べてみました。
どんな動物が事故に遭う?
広大なオーストラリアでは照明のない道路も少なくなく、多くの動物が交通事故に遭っています。オーストラリア政府観光局のWEBサイトのQ&Aでは「路上で野生動物に遭遇することはありますか?」というQに対して、「路上では、カンガルー、エミュー、ウォンバット、コアラなど、野生動物に注意してください。」と回答されるなど、さまざまな動物との事故が発生していることがうかがえます。
オフロードカーの前面に付けられている、動物との衝突事故から車体の損傷を抑えるためのオーバーライダーは別名「カンガルーバー」とも呼ばれています。それほどカンガルーとの事故は、珍しくないのです。
それでは、どんな動物の道路標識があるのでしょうか? そして事故に遭遇する件数が多い動物とは?
その1:カンガルーの標識
オーストラリアのビクトリア州道路局の調査によると、2006年~2015年に州内で報告されたロードキル1208件のうち、もっとも高い割合を占めたのがカンガルーやワラビーの事故でした。その割合は約6割にも上ります。
カンガルーは夜行性のため、夜間の活動中に道路を横切ったり、車のライトに向かって飛び出してきたりするのだとか。また、冬季はエサが少なくなるため、道路脇などに食料を求めてやって来ることも多く、自動車との事故も増加する傾向にあります。
カンガルーの動きは予測不可能で、1頭をやり過ごしてもその後、集団で道を横断することもあり注意が必要です。山火事や乾期など自然現象の影響で人間の暮らす場所にカンガルーが近づくこともありますので、カンガルーの標識を見かけたり、道端にその姿を見つけたりしたときにはスピードを落として注意しながら運転することが大切です。
その2:牛の標識
前述のビクトリア州道路局の調査では、カンガルー・ワラビーに次いで事故が多いのは「牛」で21%となっています。
近くの農場から車道に迷い込んだ家畜の牛ばかりではなく、野生化した牛が道で草を食べていたり、道に寝ていたりするのに気がつかず……なんてことも。
また、過去には高速道路に迷い込んだ牛と衝突したり、避けようとしての死亡事故などもありますので、牛の標識があったり、近くに農場や牧場がある場合にも十分に注意をしましょう。
その3:ウォンバットの標識
ウォンバットもロードキルの被害を受けており、前述のビクトリア州道路局の調査ではカンガルー、牛に続いて3番目に多くなっています。
ウォンバットは夜行性で目が悪い動物。そのような状況でも餌を探すために夜間に道路を渡らねばならないケースも増え、事故に遭ってしまうことがあります。
カンガルーや牛に比べて体が小さく、走行中は発見が遅れてしまうこともありますので、ウォンバットの標識を見たら細心の注意を払って進みましょう。
その4:コアラの標識
多くのコアラも道路上の事故で亡くなっているのが見つかっています。クイーンズランド州の資料によると、同州内の「Koala hospital」の記録では毎年300匹以上のコアラがロードキルの被害に遭って命を落としています。しかし、報告されていない事故も多く、実際にはもっと多くのコアラが事故に遭っていると考えられています。
特に夜間は車のスピードが速く、道によってはコアラが見えづらくロードキルに遭うリスクが高まります。ほかの標識と同様、コアラの標識を見つけた場合は、速度を落としてゆっくりと走行することが大切です。
オーストラリアでは田舎道だけでなく、高速道路や交通量の多い幹線道路でも動物が関わる事故も多いため、注意を促すために動物の標識が設置されています。運転をする際には、死亡事故や大けがを避けるためにも、また動物たちの命を守るためにも、慎重な運転を心掛けたいものですね。