「まだ薄明るいから大丈夫」と感じるような夕方の時間帯に、交通死亡事故がもっとも多く起きていると聞くと、意外に思う方も多いかもしれません。9月に入ると日没の時刻が日に日に早まります。帰宅や買い物の途中で、この“危ない時間帯”にハンドルを握る機会が増えていきます。
この記事では、夕方の時間帯がなぜ危険なのか、ドライバーとして何を備えればよいのか、そして歩く側・自転車に乗る側としてどう身を守ればよいのかを、警察庁などの情報をもとに解説します。
目次
薄暮時間帯とは──なぜ危ないのか
まだ明るさの残る夕方、急な飛び出しにヒヤッとした経験はありませんか?
警察庁では、日の入り時刻の前後1時間を「薄暮(はくぼ)時間帯」と定義しています。この時間帯は周囲の視界が徐々に悪くなることで、クルマ・自転車・歩行者がお互いを発見するタイミングが遅れやすく、相手との距離や速度感もつかみにくくなります。本人は見えているつもりでも、実際には細部まで捉えきれていないことがあるのです。
秋に事故が増える理由と、狙われやすい相手
夕方の事故は、秋に向けて増えていきます。日が短くなるにつれて、薄暮時間帯が人とクルマの行き交う帰宅の時間帯に重なっていくためです。
警察庁が令和3年~7年までの5年間の交通死亡事故を分析した結果によると、死亡事故は日没時刻と重なる17~19時台に多く発生しています。月別の件数で見ると7月ごろから増加傾向に転じ、10~12月にかけて特に多くなる傾向があります。ピーク目前の9月は日没が急激に早まる時期でもあるため、気を引き締めておきたいところです。
また、政府広報オンラインによると、道路横断中の死亡事故は歩行者から見て左方向から進んでくる車両との衝突が多いとされ、特に夜間は高齢者が事故に遭うケースが目立ちます。自転車についても、薄暮から夜にかけては発見の遅れが重なりやすく、油断できません。
通勤や買い物帰りのいつもの道、17時を過ぎてから走る機会がどれくらいあるか、少し思い出してみてください。
ドライバーの備え①──前照灯の早め点灯とハイビーム活用

ここからは、ドライバーとして今日から実践できる備えを見ていきましょう。
薄暮時間帯の事故を防ぐうえで、警察庁がまず呼びかけているのが「前照灯の早め点灯」です。周囲が見えづらくなってから点灯するのではなく、まだ薄暗くなりきる前の段階で意識的にライトを点け、自分のクルマの存在を早く周囲に知らせることが大切です。
2020年4月以降の新型車ではオートライトの点灯タイミングの基準が統一されましたが、それ以前のクルマはメーカーによってオートライトが作動する明るさに差があります。「そろそろ薄暗くなってきたかな」と感じたら自分の判断で早めに点灯する意識を持っておくと安心です。
また、ハイビームを積極的に活用することも効果的です。道路運送車両の保安基準では、夜間走行時、すれ違い用前照灯(ロービーム)は前方およそ40m、走行用前照灯(ハイビーム)は前方およそ100mの障害物を確認できる性能が求められています。
単純に比較すると、ハイビームはロービームの2倍以上遠くから歩行者を発見できる計算になり、より早いブレーキ操作や回避行動につながります。ただし、対向車とすれ違うときや前走車がいるときは、まぶしさを与えないようロービームに切り替えることを忘れないでください。
ドライバーの備え②──速度を抑え、早く見つける

ライトの活用とあわせて、もう一つ意識したいのが速度のコントロールです。
薄暮時間帯は、視界が悪くなり始める一方で、まだ「見えている」という感覚が残っているぶん、スピードを出しすぎてしまいがちです。周囲の交通状況に一層注意しながら、速度を落として走ることを心がけましょう。
ライトが照らせる範囲のすぐ先に歩行者や自転車がいるという前提で運転することが、発見の遅れを防ぐ第一歩になります。交差点を右左折するときは、横断中の歩行者や自転車の見落としにも注意しましょう。
なお、雨の日の夕方はさらに視界が低下しやすくなります。路面が濡れているとブレーキをかけてから止まるまでの距離が伸びやすいため、タイヤの残り溝や空気圧といった足元の状態はより重要なものになってきます。最後にタイヤの点検をした日はいつでしょうか? お出かけ前にチェックして、状態によっては買い替えも検討してみてください。
歩行者・自転車として身を守るには

ここまではドライバー目線でしたが、夕方に歩く側・自転車に乗る側にもできる備えがあります。
薄暮時間帯や夜間は、歩行者や自転車に乗る人からクルマのライトは見えていても、ドライバー側からは歩行者や自転車の姿が見えにくいことがあります。「見えているだろう」という思い込みは禁物です。
黒や紺など暗い色の服装は見えにくいため、白やベージュなど明るい色の服を選んだり、靴やカバンに反射材やライトを取り付けたりして、自分の存在を早めに知らせる工夫をしておきましょう。
信号のない場所を横断するときは、クルマが近づいていないか左右をしっかり確認し、余裕を持って渡ることが大切です。特に、右側から来たクルマが止まってくれたときほど注意が必要で、反対の左方向から別のクルマが接近していないか、慌てずに確認する習慣を付けておきましょう。夜間は、街灯のある明るい場所を選んで横断するのも効果的です。
クルマを運転する立場になることもあれば、歩いて信号を待つ立場になることもあります。どちらの立場でも「相手からは自分が見えていないかもしれない」という意識を持っておくことが、薄暮時間帯の事故を防ぐいちばんの近道なのかもしれません。9月は子どもの事故も増える時期。こちらの記事もご参照ください。




