ドライバーにとって一つのステータスとも言える「ゴールド免許」。正式には「優良運転者免許証」と呼ばれるこの金色の帯には、ステータス以外にも実利的なメリットもあります。
この記事では、更新に関連する「確実に得られるメリット」と、民間サービスなどによる特典など、ゴールド免許の「お得なポイント」を解説します。
目次
ゴールド免許とは?
「優良運転者免許証」とは、道路交通法上で「優良運転者」と区分されたドライバーに交付される免許証を指します。一般的にゴールド免許と呼ばれているのは、免許証の有効期限表示部分の帯(地色)が金色であることに由来します。
この制度は、1994年(平成6年)5月10日の改正道路交通法施行によりスタートしました。 交通違反や交通事故の防止を図るため、長期間にわたり安全運転を継続しているドライバー(優良運転者)に対して更新時の負担を軽減するなどの優遇措置を設けることで、社会全体の交通安全意識を高めることを目的としています。
ゴールド免許の条件と有効期間
ゴールド免許を取得・維持するためには「無事故」「無違反」の状態を継続する必要があります。
無事故・無違反の期間
- 判定基準:過去5年間、人身事故(交通死亡事故・重傷事故・軽傷事故)や交通違反(点数が付くもの)がないこと。
- 計測期間(起算日):「更新年の誕生日」の41日前を起算日とし、過去5年間が判定対象。
(例)誕生日が1月1日のAさんの場合
- 起算日:誕生日の41日前=「11月21日」
- 判定期間:その年の11月21日から、5年前の11月21日まで
もしAさんが、誕生日の30日前(12月2日)に軽微な違反をしてしまった場合、その違反は判定期間外(未来の期間)となるため、今回の更新ではゴールド免許が交付されます。しかし、その違反記録は次回(5年後)の更新時の判定対象となります。
有効期間は一般運転者と同じ5年
ゴールド免許になると、免許証の有効期間が原則として5年になりますが、これは一般運転者(70歳未満で過去5年間に3点以下の違反が1回のみの場合)と同じです。
ただし、更新時の年齢によって、ゴールド免許でも一般運転者でも有効期間が短縮される点に注意が必要です。
- 70歳の人(更新期間満了日の直前の誕生日に満71歳を迎える人):4年
- 71歳以上の人:3年
これは、加齢に伴う身体機能の変化を考慮し、より短い間隔で適性検査や高齢者講習を受けるためです。
ゴールド免許のメリット1:更新時講習のメリット

ゴールド免許の保有者が確実に享受できるメリットは、免許更新時の手続きに関するものです。
優良運転者講習は最短の30分
免許更新時には必ず講習を受ける必要がありますが、区分によって時間が異なります。
- 優良運転者講習: 30分
- 一般運転者講習: 1時間
- 違反運転者講習/初回更新者講習: 2時間
ゴールド免許であれば、講習時間が最短の30分で済みます。これは、更新手続きにかかる時間的・心理的負担を大幅に軽減する、確実なメリットです。
さらに、多くの自治体でオンライン講習が導入されつつあります。スマートフォンやPCを使い、時間や場所を選ばずに講習動画を視聴できる制度です。こちらの講習時間は優良運転者・一般運転者が対象で、講習時間は会場(警察署や免許センター等)での講習時間と同じです。
講習手数料が低額
免許更新時には「更新手数料」と「講習手数料」の合計を支払う必要があります。 このうち「講習手数料」は講習区分によって異なり、優良運転者講習は他の区分(一般、違反者)よりも低額に設定されています。
【例:東京都の場合(2025年時点)】
- 優良運転者:更新手数料(2,500円)+講習手数料(500円)=合計3,000円
- 一般運転者:更新手数料(2,500円)+講習手数料(800円)=合計3,300円
- 違反運転者:更新手数料(2,500円)+講習手数料(1,350円)=合計3,850円
ゴールド免許のメリット2:民間サービスでの優遇

長期間、交通違反のないゴールド免許の保有者は、免許更新以外にもいろいろな優遇があります。
自動車保険のゴールド免許割引
「ゴールド免許のドライバー(優良運転者)は、統計的に事故リスクが低い」というデータに基づき、自動車保険の保険料を割り引くサービスで、保険の開始日時点での免許証の色に応じて割引率が変わります。もっとも事故のリスクが低いゴールド免許の保有者は、もっとも高い割引率で契約することができます。
レンタカー会社のゴールド免許割引
一部のレンタカー会社では、ゴールド免許保有者がサービスを受けるときに割引(定額割引や一定率の割引)や優待サービス(補償サービスの無料付与)などが提供されています。
SDカード特典との違い
ゴールド免許の優待とよく混同されるのが「SDカード(セーフドライバーカード)」の特典です。SDカードは自動車安全運転センターが発行するもので、申請したドライバーに対して、無事故・無違反の期間に応じて発行するカードです。対象となる店舗やサービスは全国各地にあり、さまざまな割引や優待があります。
SDカードの取得は「無事故・無違反証明書又は運転記録証明書の申し込みをした方」または「無事故・無違反証明書又は運転記録証明書を申し込んだ方」で「証明日以前に1年以上事故・違反等の記録がない」ことが要件になります。また、ゴールド免許にはグレードはありませんが、SDカードには無事故・無違反期間の長さによってカードの色が異なり、無事故・無違反期間が10年以上20年未満は「ゴールド」、20年以上は「スーパーゴールド」となっており、スーパーゴールド保有者限定の特典も少なくありません。ゴールド免許を取得した後は、無事故・無違反期間を長く保ち、SDカードのランクアップを目指してみましょう。
よくある誤解:物損事故があってもゴールド免許になれる?
「無事故・無違反」の定義は、ドライバーが誤解しやすいポイント。ゴールド免許の判定でカウントされるのは、「違反点数が付く違反・事故」です。ケースを例に挙げて解説します。
- ケース1:物損事故(自損事故含む)
「電柱にぶつかった」「壁で擦った」「駐車場で車に軽くぶつけ、警察に届け出たが、相手にケガがなかった」といった場合は物損事故(物件事故)として扱われます。物損事故自体には違反点数が付かないため、これだけではゴールド免許の判定に影響しません。ただし、当て逃げや、事故現場での警察への不申告、危険防止措置義務違反などが伴うと違反点数の付く事故となります。 - ケース2:人身事故
相手に少しでもケガをさせてしまう(診断書が提出される)と「人身事故」となり、安全運転義務違反として違反点数が必ず付きます。この時点で次回の更新はゴールド免許ではなくなります。 - ケース3:軽微な違反
「シートベルト未装着」、「運転中の携帯電話使用」、「一時停止無視」などは事故ではありませんが、1点以上の違反点数が付きます。この違反記録が判定期間内にあれば、次回の更新はゴールド免許になりません。
まとめ:安全運転継続によるさまざまなメリットを受けよう
ゴールド免許は、更新時の優良運転者講習が最短30分で完了し、手数料も低額になるという、制度面での確実なメリットがあります。さらに、多くの自動車保険で割引が適用され保険料もお得になります。
しかし、「物損事故」では影響を受けない一方で、軽微な交通違反(点数が付くもの)一つで、過去5年の努力が水の泡になるということも理解しておきましょう。
ゴールド免許は、単なる優待のためのカードではなく、「優良なドライバー」であることの証明です。確実なメリットを生かすためにも、この5年間を無事故・無違反で過ごし、安全運転を継続しましょう。



