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飲酒運転の車に同乗したらどうなる?――同乗者の責任と回避策ガイド

飲酒運転の車に同乗したらどうなる?――同乗者の責任と回避策ガイド
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「運転手じゃないから関係ない」と思っていませんか? 飲酒運転の車に同乗することは、運転手と同様に重い法的責任を負う犯罪行為であり、刑事罰、免許取消、高額な損害賠償など人生を一変させる重大なリスクがあります。

今回の記事では、同乗者が知っておくべき責任と、身を守るための実践的な対策について詳しく解説します。

はじめに:飲酒運転事故の現状と同乗者の位置づけ

飲酒運転による交通事故は、社会全体で撲滅に向けた取り組みが続けられているにも関わらず、依然として深刻な社会問題として残り続けています。特に注意すべきなのは、運転手だけでなく同乗者も重大な責任を負うという現実です。

最新統計が示す飲酒運転事故の恐ろしさ

令和6年の統計データによると、飲酒運転による交通事故は2,346件発生しており、飲酒していない場合と比較して死亡事故率が約7.4倍も高くなっています。この数字は、飲酒運転がいかに命に関わる危険な行為であるかを物語っています。

判断力・注意力の低下や反応速度の遅れなど、アルコールが運転能力に与える影響は計り知れません。わずかな油断が、取り返しのつかない悲劇を招く可能性があるのです。

「運転しないから安心」は誤解? 同乗者の責任が問われる理由

道路交通法では飲酒運転をしたドライバーだけでなく、車両や酒類の提供者、同乗者など周囲の関係者に対しても厳しい規制を設けています。

同乗者が飲酒運転同乗罪に問われる理由は、飲酒運転を助長したり、黙認したりする行為が、事故発生の要因となると考えられるためです。

同乗者が問われる3つの責任

飲酒運転の車に同乗したらどうなる?――同乗者の責任と回避策ガイド

飲酒運転の車に同乗した場合、同乗者は刑事・行政・民事の3つの側面から責任を追及される可能性があります。これらの刑事処分や責任について詳しく見ていきましょう。

刑事責任:道路交通法による同乗者の罰則

道路交通法では、運転者が飲酒していることを知りながら同乗した者に対して、以下の刑事罰が科せられます。

  • 酒気帯び運転の場合:2年以下の拘禁刑(懲役)または30万円以下の罰金
  • 酒酔い運転の場合:3年以下の拘禁刑(懲役)または50万円以下の罰金

この罰則には、同乗者が飲酒していたかどうかや、座席の位置(助手席か後部座席か)などは影響しません。「同乗者が運転者の飲酒状態を認識していたかどうか」が処罰の分かれ目となります。運転者の飲酒を全く知らなかった場合は処罰の対象とはなりませんが、捜査では詳細な経緯が調べられるため、ごまかしは通用しないと考えておきましょう。

なお、バスやタクシーなどの旅客運送事業用の車両では処罰の対象にはなりません。

行政処分:免許停止・取消の可能性

同乗者が運転免許を保有している場合、運転者と同じ違反点数が加算されます。前歴の有無によって期間や内容は異なりますが、以下の行政処分を受ける可能性があります。

  • 酒気帯び運転への同乗:免許停止または免許取消
    (呼気1L中のアルコール量0.15mg以上0.25mg未満:13点/0.25mg以上:25点)
  • 酒酔い運転への同乗:免許取消(35点)

これらの処分を受けると、その後の生活に大きな支障をきたすことになります。特に毎日の通勤や買い物、家族の送迎など、車が欠かせない生活を送っている方にとって、免許を失うことは想像以上に深刻な問題になるでしょう。

民事責任:損害賠償のリスク

飲酒運転による事故が発生した場合、同乗者も民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。過去の裁判例では、以下のようなケースで同乗者の責任が認められています。

  • 飲酒の場で運転者と同席していた
  • 運転者の酩酊状態を認識していた
  • 車のキーを取りに行くなど、飲酒運転を積極的に助けた
  • 飲酒運転を制止しなかった

実際の判例では、運転者と同乗者の共同で数千万円規模の損害賠償が命じられたケースもあります。

出発前にチェック! ドライバーが飲酒しているか確かめる方法

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同乗者として最も重要なのは、運転者が飲酒しているかどうかを出発前に確認しておくことです。

顔色・声の調子・呼気など3つの兆候

運転者の飲酒状態は、以下の変化から判断できる場合があります。

  • 顔色
    • 普段よりも顔色が赤い
    • 顔色が悪い
    • 表情がぼんやりしている
  • 声の調子
    • 普段よりも声が大きい
    • ろれつが回っていない
    • 話し方が不自然
  • 呼気
    • アルコール特有の臭いがする

上記の兆候のほか、目線が一点に定まらずキョロキョロしている、普段に比べて落ち着きがない、受け答えが不自然でぎこちないなどの変化も重要なサインです。これらを総合的に判断して、少しでも異変を感じた場合は飲酒を疑いましょう。

アルコールチェッカーの活用

より確実な判定を行うためには、アルコールチェッカーの使用が効果的です。アルコールチェッカーは息を吹きかけるだけで体内のアルコール残留濃度の数値を確認できる機器で、安全運転管理者等を選任する義務を持つ事業所では、2022年4月からアルコールチェッカーの使用が義務付けられています。一般的な家電量販店やカー用品店などで数千円~1万円程度で購入可能ですが、内蔵されているセンサーには寿命があるため、定期的な買い替えや交換が必要です。

飲酒運転を防ぐためにできること

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飲酒運転を防ぐために、日頃からできる対策もあります。

運転代行の提案

飲酒することが分かっている場合は、事前に「運転代行」を手配しておきましょう。運転代行は、客の代わりに業者のドライバーが車を運転して、客と車を目的地まで送り届けるサービスです。車には代行業者の車が随伴します。費用はかかりますが、法的リスクや事故の危険性を考えれば、決して高い買い物ではないはずです。

ハンドルキーパーを受け持つ

「ハンドルキーパー運動」は、全日本交通安全協会が飲酒運転根絶のために2006年から推進している取り組みです。友人や知人同士で飲食店に行く際は事前にアルコールを摂取しない人を決めておき、指定された人は一切飲酒せずに仲間を安全に送り届けることが基本となります。ローテーションで役割を交代することで、全員が公平に楽しめる仕組みを作れます。

運転することを目に見えるようにアピール

ドライバーであることを周囲に明確に示すよう勧めることで、ドライバーがアルコールを勧められる状況を避けやすくなります。アピール方法の例としては、「ネームタグに運転者である旨を記載する」「専用のアクセサリーや目印を着用する」「飲み会開始時に運転者であることを宣言する」などの方法があります。日本損害保険協会のWEBサイトでは、「飲みま宣言ドライバー」運動としてネームタグ用の目印が配布されています。

飲酒運転撲滅へ向けた最新の取り組み

飲酒運転の撲滅に向けた技術的な取り組みも進んでいます。最新の動向について確認しておきましょう。

アルコールインターロック義務化の動き

「アルコールインターロック」は飲酒運転を物理的に防止するための車載機器です。運転前に呼気によるアルコール測定を実施し、基準値を超えるアルコールが検出された場合は、エンジンが始動しない仕組みになっています。測定結果と運転日時は自動的に記録されるため、確実な管理が可能です。

日本国内では一部メーカーのアルコールインターロックの累計出荷台数が2023年末時点で3,200台を超えるなど、着実に普及が進んでいます。国土交通省では技術指針を策定し、事業用自動車への導入促進に向けた助成金制度も導入されています。現状では事業者による自主的な導入が中心となっていますが、今後さらなる制度整備と普及促進が期待されています。

まとめ:同乗者が取るべき3つのアクション

飲酒運転の車に同乗したらどうなる?――同乗者の責任と回避策ガイド

飲酒運転の車に同乗する行為は、自らの人生を根底から覆しかねない、極めて重大なリスクを伴う選択です。しかし、これらのリスクは回避可能です。同乗者は、悲劇を未然に防ぐことができる最後の防衛線でもあります。その責任を全うするためには、以下の3つの行動指針を心に刻み、実行する覚悟が不可欠です。

①確認する ②止める ③通報する

  1. 確認する
    車に乗る前に、運転者の状態を確認し、顔色、言動、呼気、動作に少しでも異変を感じたら、危険信号と判断しましょう。
  2. 止める
    酒気帯びを察知したら、勇気を持ってその運転を止めてください。タクシーや電車など、代替の交通手段を提案しましょう。
  3. 通報する
    万が一、走行中の車内で運転者の飲酒に気づいた場合は、まず自らの安全な降車を最優先してください。安全確保した後、直ちに警察へ通報しましょう。

飲酒運転による悲劇は、一人ひとりの意識と行動によって防ぐことができます。同乗者として適切な判断と行動を取ることで、自分自身と社会全体の安全を守ることができるのです。「たった一度の判断ミス」が人生を変えてしまう前に、今日から実践できる安全対策を心がけていきましょう。

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