「エンジンをかけようとしたら、全く反応しない……」ハイブリッド車でも、このようなバッテリー上がりのトラブルが発生することがあります。燃費の良さや環境性能で人気のハイブリッド車ですが、バッテリーシステムが複雑なため、ガソリン車とは異なる対処が必要です。いざというときに慌てないよう、ハイブリッド車特有のバッテリー上がりの原因と適切な対処法について確認しておきましょう。
目次
ハイブリッド車のバッテリー上がりとは

ハイブリッド車には、ガソリン車とは異なるバッテリーシステムが搭載されており、「駆動用メインバッテリー」と「補機バッテリー」の2種類のバッテリーが役割を分担しています。ハイブリッド車での「バッテリー上がり」とは、一般的にこのうちの補機バッテリーが上がってしまい、クルマが動かなくなる状況のことを指すことが多いようです。
駆動用メインバッテリー
駆動用メインバッテリーは、車両の走行に直接関わる高電圧・大容量のバッテリーです。ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池が使用されており、200Vを超える高電圧で動作します。主な役割は、走行用モーターの駆動とエンジンの始動です。車種にもよりますが、通常はセンターコンソール内などの車体下部に設置されています。
補機バッテリー
補機バッテリーは、ハイブリッドシステムの起動や駐車中のメモリーバックアップ、電装品への電力供給などに使われる鉛蓄電池です。システム停止時でも安全性を確保するため、メインバッテリーとは別に搭載されています。電圧は12Vで、一般的なガソリン車と同じです。多くの場合、後部座席の下やトランクルーム、エンジンルームなどの場所に設置されています。
駆動用メインバッテリーと補機バッテリーは相互充電できない
2つのバッテリーを搭載しているハイブリッド車ですが、これらのバッテリーは相互充電ができません。駆動用バッテリーは数百ボルトの高電圧で動作し、補機バッテリーは12Vで動作するため、この電圧の違いにより互いに電力を融通できない設計になっています。
そのため、補機バッテリーが上がると駆動用メインバッテリーに十分な電力が残っていたとしても、クルマを動かせなくなってしまうのです。
ハイブリッド車のバッテリー上がりの原因
先述のとおり、ハイブリッド車のバッテリー上がりは主に補機バッテリーの電力不足によって発生します。電力の消費が蓄積された電力を上回ることで起こるこのトラブルには、いくつかの原因があります。
バッテリーの寿命や劣化
まず1つはバッテリーの寿命や劣化です。寿命はバッテリーの種類や使用状況などによって異なりますが、補機バッテリーに関しては通常3~4年程度で交換時期を迎えます。
ガソリン車の場合と同様に、経年劣化で電気を蓄える能力が低下すると十分な電力を供給できなくなり、バッテリーが上がる原因になります。定期的にバッテリーの状態を点検することが大切です。
駐車時の自然放電
2つめは自然放電です。車両は使用していない状態でも、コンピューターシステムや各種メモリーのバックアップ用として、常時5〜10mA程度の電流を消費しています。この「暗電流」により、長期間運転しない状態が続くと約3〜4週間でバッテリー上がりを起こす可能性があるのです。バッテリーはクルマの走行時に充電されるため、ふだん短距離移動が多い場合や、クルマを長期間使用しない場合は特にバッテリーが上がりやすくなります。
そのほかにも、人為的なミスによる電力消費にも注意が必要です。長時間の半ドア状態では室内灯が点灯し続け、ヘッドライトの消し忘れなども同様にバッテリーの電力を消耗させます。クルマを離れる際は、これらの電装品がオフになっていることを必ず確認しましょう。
ハイブリッド車のバッテリー上がりの対処法

それでは、ハイブリッド車でバッテリーが上がってしまった場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。主な対処法を確認しておきましょう。
ジャンピングスタートを行う
ジャンピングスタート(ジャンプスタート)は、ほかの車両(救護車)から一時的に電力を供給してもらい、エンジンを始動させる方法です。ハイブリッド車の多くの車種では、エンジンルームのヒューズボックス内にある専用端子を使用します。接続位置は車種によって異なるため、必ず取扱説明書で確認してから作業を行ってください。
ケーブルを正しくつないだら、救護車のエンジンをかけてしばらくアイドリングさせ、その後故障車(バッテリーが上がった車両)のエンジンを始動させます。無事復旧したら、つないだときとは逆の順番でケーブルを外し、1 時間ほど走行して電力を充電しましょう。
ただし、バッテリー上がりの原因がバッテリーの寿命や劣化の場合は再びエンジンがかからなくなる場合もあります。念のため、ジャンピングスタート後は一度プロの点検を受けることをおすすめします。
ロードサービスに依頼する
自分での対処に不安がある場合や、救護車が見つからない場合は、JAFや自動車保険のロードサービスに連絡する方法もあります。専門知識を持ったスタッフが30分~1時間程度で現場に到着し、安全にバッテリー上がりを解決してくれます。費用はサービスによって異なりますが、保険会社の契約内容によっては無料で対応してもらえる場合もあるので、確認してみてください。
ジャンピングスタートにおける注意点
ハイブリッド車のジャンピングスタートには、ガソリン車とは異なる注意点があります。安全な作業のために以下の点を必ず守ってください。
「ガソリン車やハイブリッド車の救援にハイブリッド車」はNG
ハイブリッド車は、ほかの車両(ガソリン車・ハイブリッド車・EV)のバッテリー上がりを救援する車両として使用することはできません。ジャンピングスタート時に発生する大きな電流がシステムの誤作動を引き起こし、重大な故障につながる可能性があるためです。
「ハイブリッド車の救援にガソリン車」はOK
一方で、ハイブリッド車の補機バッテリーが上がった場合、ガソリン車から救援を受けることは可能です。ただし、救護車は故障車と同じ12Vの電圧である必要があります。大型車の24Vバッテリーは使用できないので注意しましょう。
なお、もしも駆動用メインバッテリーが上がってしまった場合はジャンピングスタートでの復旧はできません。専用機器での充電や交換が必要になります。高電圧のバッテリーに触れるのは大変危険なので、自己解決しようとせず、すみやかに販売店に相談しましょう。
正しい手順で端子をつなぐ
ブースターケーブルの接続は、正しい順序で行うことが重要です。まず、故障車のプラス端子、次に救護車のプラス端子、続いて救護車のマイナス端子、最後に故障車のバッテリー端子ではなく、エンジンルーム内の金属部分の順で接続します。順序を間違えると、電装品の故障やヒューズ切れ、最悪の場合は車両火災につながる恐れがあります。
まとめ
ハイブリッド車のバッテリー上がりは、主に補機バッテリーの電力不足によって発生します。2つのバッテリーシステムの特性を理解し、適切な対処法を知っておくことで、トラブル時にも冷静に対応できるはずです。
また、バッテリー上がりを防ぐには、日ごろの定期的な点検が大切です。それでも上がってしまった場合は、自分での復旧に不安があれば無理をせず専門のロードサービスに頼りましょう。