クルマのエンジンは日々の走行によって汚れが蓄積し、その影響で性能が低下することがあります。こうした問題を解消するために有効なのが「エンジンフラッシング」です。今回の記事では、エンジンフラッシングの必要性や適切な方法について解説します。
目次
エンジンフラッシングとは?
エンジンフラッシングとは、クルマのエンジン内部を洗浄してきれいにすることです。エンジン洗浄剤のことを指す場合もあります。
エンジン内部が汚れる原因
エンジン内部が汚れる主な原因は、エンジンオイルの成分や燃料の不完全燃焼に由来する物質などが固形化した「スラッジ」です。定期的にオイル交換をしていないクルマはエンジンオイルの清浄効果が落ち、スラッジが堆積しやすくなります。
汚れが蓄積すると出る症状
スラッジがエンジン内部に付着し堆積していくと、エンジンの燃焼効率が低下し、クルマのパフォーマンスが損なわれる可能性があります。具体的には、潤滑不足によるパーツの摩耗や焼き付き、燃費の低下などの症状が考えられます。
エンジンフラッシングは必要ない?
クルマのメンテナンス状況や運転環境によってエンジン内部の汚れ方は異なるため、エンジンフラッシングは必ずしも有効とは限りません。ここではエンジンフラッシングの効果と必要性について説明します。
エンジンフラッシングの効果
エンジンフラッシングをすると、エンジンの回転がスムーズになったり、エンジン音が静かになったり、加速がよくなったりする効果があると言われています。また、燃費の向上やエンジンの長持ちも期待できます。
エンジンフラッシングが逆効果な場合
ただし、クルマによっては逆効果になる場合もあります。エンジンフラッシングが向いていないのは以下の4パターンが挙げられます。
- 走行距離が長いクルマ(過走行車):過走行車では、走行距離が長い分エンジン内部の汚れも多く堆積していることが考えられます。エンジンフラッシングによって多くの汚れが剝がれ落ちて目詰まりを起こし、部品の故障につながる可能性があるので注意が必要です。
- 長期間オイル交換をしていないクルマ:前述のとおり、交換時期を過ぎたエンジンオイルを使用し続けると、清浄効果が落ちてスラッジがたまりやすくなります。このような場合、過走行車と同様に目詰まりを起こす可能性があります。
- オイルがにじむ可能性があるクルマ:長年使用しているクルマでは、パーツの隙間を埋めるパッキンが劣化し、その隙間を汚れでせき止めている場合があります。エンジンフラッシングによって汚れが落ちると、隙間からオイルがにじんでしまうことも考えられるため、慎重に検討する必要があります。
- オイルフィルターを交換したばかりのクルマ:エンジンフラッシングを行うと、エンジン内部の汚れでオイルフィルターが汚れます。過度な汚れはエンジンの焼き付きの原因になるので、エンジンフラッシングとフィルター交換はセットで行う必要があります。
エンジンフラッシングの必要性の見極め方
エンジンフラッシングが必要かどうかは、「エンジンオイル交換からどのくらい経過しているか?」と「走行距離がどれくらいか?」の2点が見極めポイントです。
エンジンオイルの交換時期はメーカーや使用状況にもよりますが、走行距離5,000~15,000kmまたは6カ月~1年のいずれか早い方と言われています(詳しくはお使いのエンジンオイルやクルマの取扱説明書をご確認ください)。
半年に一度のペースで交換していればそこまでエンジン内部が汚れることはありませんが、しばらくオイル交換をしていないという場合はオイル交換と同時にエンジンフラッシングをおすすめします。
なお、機械式のエンジンフラッシングの頻度は走行距離1万kmもしくは1年ごとが目安です。
エンジンフラッシングの方法
エンジンフラッシングには主に3つの方法があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
エンジンオイル添加剤を使う方法
エンジンオイルの中に添加剤を混ぜて、走行しながらエンジンの汚れを落としていく方法です。オイル交換の際に添加剤を混ぜるだけなので時間がかからないのがメリットで、添加剤の種類によっては劣化したパッキンの隙間を埋めてオイルにじみを防いでくれるものもあります。費用は添加剤の種類によって、1,000~5,000円を超えるものまで差があります。
フラッシングオイルを使う方法
古いエンジンオイルを抜いた後に、フラッシングオイルを入れて数分間アイドリングさせることでエンジン内部を洗浄する方法です。エンジン内の汚れが落ちたらフラッシングオイルを抜き、新しいエンジンオイルを入れて完了です。作業時間はオイル交換の時間に加えて10分ほどで、費用は2,000~3,000円と比較的安価なのも特徴です。
フラッシングマシンを使う方法
最も高い洗浄効果を期待できるのが、フラッシングマシンを使って洗浄する方法です。古いオイルを抜いた後、専用の機械をつないでエンジン内部に薬剤を循環させます。汚れが落ちたら薬剤を抜き取って新しいエンジンオイルを入れて完了です。作業時間はオイル交換の時間に加えて15分ほどで、費用は6,000〜7,000円程度と他の方法と比べると高額ですが、その分高い洗浄効果が期待できます。
エンジンフラッシングを行う際の注意点
過走行や長期間オイル交換していない場合など、多くの汚れが堆積している状態と考えられるクルマではエンジンフラッシングによって故障するリスクがあります。また、長年乗っているクルマの場合はエンジンオイルのにじみが起こることもあります。
また、簡易洗浄ではエンジン内部にフラッシングオイルが少量残る可能性があることや、機械式ではオイル漏れのあるエンジンは悪化する可能性があることも覚えておきましょう。少しでも不安な点があればプロに相談してみてください。
なお、エンジンフラッシングの際は落ちた汚れがオイルフィルターに付着するため、フィルターの交換もお忘れなく!
まとめ
今回は「エンジンフラッシング」についてお届けしました。必須のメンテナンスではありませんが、使うクルマ次第では燃費向上やエンジンの長持ちなどうれしい効果が期待できます。なかには逆効果となってしまう場合もあるので、店舗やディーラーのプロにあらかじめ相談しておくことが大切です。