近年のクルマには、ブレーキアシスト、自動ブレーキ、車両接近通報装置などさまざまな運転支援機能が取り入れられています。今回の記事では、2012年から新車への装着が義務化されている「横滑り防止装置」について詳しく解説します。
目次
横滑り防止装置とは
横滑り防止装置(ESC)には、メーカーごとにさまざまな名称が付けられています。日本のメーカー各社による横滑り防止装置の名称は以下の通りです。
- トヨタ:VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)
- 日産、スバル:VDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)
- ホンダ:VSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)
- マツダ:DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)
- 三菱:ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)
- スズキ:ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)
ちなみにアドヴィックス、ボッシュ(株)、コンティネンタル・オートモーティブ(株)の3社は「ESC普及委員会」を結成し、これらの呼称を「ESC」に統一するよう呼び掛けています。
横滑り防止装置の機能と役割
メーカーにより呼称は異なりますが、基本的な機能は同じです。横滑り防止装置は、走行中にアンダーステアやオーバーステアなどで不安定な状態になったクルマを制御して安定させるためのシステムです。タイヤの横滑りをセンサーが検知すると、エンジンの出力を抑制したり各タイヤのブレーキを制御したりすることで車体を安定させる仕組みとなっています。
横滑り防止装置の義務化と車検
横滑り防止装置の備え付けは、新型生産車は2012年10月(軽自動車は2014年10月)から、継続生産車は2014年10月(軽自動車は2018年2月)から義務化され、普及が進んでいます。
現時点では車検の検査項目に含まれていませんが、2024年からは「OBD(車載式故障診断装置)」を使った検査が行われ、横滑り防止装置などの運転支援装置も検査対象となることが予定されています(※)。
※2021年以降の新型の乗用車、バス、トラックが対象。輸入車は2022年以降の新型車。
横滑り防止装置オフボタンの使い道
横滑り防止装置を搭載しているクルマには、解除(OFF)スイッチが取り付けられています。雪道やぬかるみなどの悪路で横滑り防止装置が作動すると、タイヤの空転を抑えるためにエンジンの出力が落ちてしまい、スタックからの脱出が困難になるためです。
このような場合は解除スイッチを押したうえで、ゆっくりとアクセルを踏み込んで脱出を試みましょう。雪道でスタックした場合は前進・後退を繰り返してタイヤ周辺の雪を踏み固めるのも効果的です。
ABSとTRCとの違い
横滑り防止装置と似た機能に、「ABS」と「TRC」があります。それぞれの役割もおさらいしておきましょう。
ABSとは?
ABS(アンチ・ロック・ブレーキシステム)は、急ブレーキをかけたときなどにタイヤがロックする(回転が止まる)のを防ぐ装置で、現在ほとんどのクルマに標準装備されています。車両の進行方向の安定性を保ち、ハンドル操作を効きやすくして障害物を回避できる可能性を高める効果があります。
横滑り装置はカーブ走行時の安定性を高めるのに対して、ABSは止まるときの安定性を高めるという違いがあります。
TRCとは?
TRC(タイヤ空転抑制機能)は、タイヤの空転を検知したときに駆動輪にブレーキをかけたりエンジン出力を抑制したりする装置です。滑りやすい路面などで駆動タイヤの空転を抑えることで、車両の安定性や駆動力を高める効果があります。なお、こちらもメーカーによって以下のように呼称が異なります。
- トヨタ、ダイハツ:TRC(タイヤ空転抑制機能)
- ホンダ、マツダ:TCS(トラクション・コントロール・システム)
- 三菱:TCL(トラクションコントロールシステム)
まとめ
横滑り防止装置(ESC)は、カーブ走行時に横滑りなどの挙動の乱れを検知して車体を安定させる運転支援装置です。装着していれば完全に事故を防げるというわけではありませんが、いざというときにはドライバーの心強い味方になるはずです。メーカーによってさまざまな呼称があるので、詳しい使用方法についてはお使いの車種の取扱説明書などをご確認ください。