旅行や食生活、そして通販などなど、目に見えるところはもちろん、目には見えないところでも、私たちは働くクルマのお世話になっています。その代表が、物流や交通を支えているトラックやバス。数字で見てみると、“縁の下の力持ち”だとよく分かります。
トラックの2019年の輸送トン数は43億8100万トンで、海運・鉄道・航空による輸送トン数も含めた全体に対する割合は、実に91.5%になります(全日本トラック協会『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2019』より)。
そして、2019年の営業用バスの年間輸送人員数は46億4576万2千人で、自動車の輸送人員数全体に占める割合は約76.9%にのぼります(国土交通省「自動車輸送統計調査」2020年1月発表より)。
そのトラックやバスの“足”を支えているのが、トーヨータイヤのトラック・バス用タイヤです。
目次
トラック・バス用タイヤにおける課題解決を目指したニュースタンダード
トーヨータイヤでは乗用車用のタイヤと同様に、さまざまなシチュエーションに対応したトラック・バス用のタイヤを開発しています(各タイヤの解説・紹介は「縁の下の大きな力持ち!トラック・バス用タイヤを知ろう!~タイヤの種類篇~」をご覧ください)。それはドライバーだけではなく、整備士や運送会社やバス会社など、バス・トラックの運用に関係しているすべての人のため。
現在、運輸・運送業界では大量の輸送に対応するのに必要なドライバーや整備士の慢性的な人材不足に悩んでおり、少数の人員で配車をやりくりしていたり、整備の時間を確保するのに苦労されています。
また、トラックやバス用のタイヤが抱える避けられない問題もあります。荷物や人を乗せた積車時と荷物や人を降ろした空車時では車重の差が大きくなり、積載状況によってタイヤにかかる負担もまったく変わってしまうのです。
もともとトラック・バス用タイヤは積車時に比べて空車時はタイヤの接地面積が小さくなるため、車両発進時や加速時のトラクション性能が発揮しにくく、同時に滑りやすくなるため、摩耗しやすいという問題もあります。
そういった現状を踏まえ、タイヤメーカーとしてどんなアプローチができるのかを追求した結論の1つが、2020年3月より販売している「M646」。乾いた道路、雨にぬれた道路、雪の積もった道路など、どのような状況においても優れた性能を発揮し、トラック・バス業界で働く人たちの助けとなるために開発された次世代のオールウェザータイヤです。
耐摩耗性能、ウェット制動性能、トラクション性能を前モデルから向上
オールウェザータイヤには、2011年にリリースした「M636」という高い評価を得てベストセラーになった前モデルがありました。このモデルのポテンシャルを超えるべく、さらなる性能アップを目指したタイヤが「M646」です。
耐摩耗性能は「M636」との比較で16%向上。タイヤの交換サイクルが大幅に伸びるタフで低メンテナンスなタイヤを目指しました。
オールウェザータイヤに強く求められる、ぬれた路面での加速性能も19%向上しました。これは雨が降っていても高いトラクション性能を発揮できる現れ。
他にも、積載時を想定した状態(負荷荷重3450kg)はもちろん、空車時を想定した状態(負荷荷重550kg)においても、センターエリアにトラクション要素を多く設定することによりトラクション性能を引き出しています。
性能アップのブレークスルーとなったのはトレッド部の形状です。従来のトラック・バス用オールウェザータイヤは、1つ1つのブロックが大きなものが多かったのですが、「M646」のトレッドパターンは、中央部を3列のブロックで構成したワイドセンターエリアになっています。前モデルの「M636」から列を増やし、ブロックを小型化することでトラクション性能を向上させています。
小型化したブロックは荷重がかかったときに変形しやすくなり、摩耗が促進されるため、3列のブロックを少しずつ縦方向(周方向)にずらしてクロスに配置することで、タイヤが路面に設置したときに隣接する複数のブロックを一体化させて、ブロック剛性を確保するという手法をとりました。
また、接地端部分にはショルダーにかかる横方向の力を吸収する、「デュアルD.G.」の採用やトレッドパターンに適した接地圧力の均一化を図ることで課題を解決しました。
従来モデルとは大きく違うトレッドパターンですが、すべてが性能アップのための機能美となっているのです。
トラック・バス用タイヤを知ればクルマ全体の理解が深まる
昔と変わらないように見えるトラックとバスのタイヤも、今現在求められている課題を解決するために、常に新しい技術を導入して開発されていることが分かりますよね。
レーシングカー用のタイヤなどと用途は違えども、求められるプロフェッショナルとしてのレベルの高さは同じ。だからこそトラックとバスのタイヤの作りを知っておくと、クルマ全体の理解が深まるというものです。
どのような天候状態であっても、着実に、決められた時間内の輸送が求められるトラック・バスの世界は、私たちが快適な生活を送るうえで欠かせません。特に近年は路線バスを活用した貨客混載輸送も増えてきました。トラックとバスが一体となる世界にもなってきました。
現代のモータリゼーションにおいて重要なポジションを占めているだけに、物流・輸送を支えてくださっているすべてのみなさまに、感謝したいですね。