「働く自動車」の代表として、私たちの日常に最も寄り添っているのがトラックとバス。スーパーやショッピングモールまで商品を運んでいるのも、通販で購入した商品をわが家まで運んできてくれるのもトラック。鉄道網が整備されていないエリアの公共交通機関として欠かせないバスも極めて重要な役割を果たしています。
そのトラックとバスの働きを支えているのが、トラック・バス用タイヤ。皆さんの愛車のタイヤはもちろん、物流を支えているトラックや多くの人を運ぶバスに使われるタイヤも、現代社会になくてはならないものです。
しかし、乗用車用のタイヤは知っている方でも、トラック・バス用タイヤについて知っている方はまだまだ少ないでしょう。この機会に一緒に学んでみませんか?
目次
トラック・バス用タイヤの種類
まずはトラック・バス用タイヤの種類から見ていきましょう。大きく分けると、次の5種類に分類されます。
高速走行に適したリブタイヤ
リブタイヤは主に高速バスや長距離トラックに使われるタイヤです。トレッドパターンが縦溝中心で、走行時の転がり抵抗が低く、燃費性能と静粛性にも優れています。
代表的なモデルとして「NANOENERGY M176」があります。偏摩耗を抑える最適なリブ(トレッドパターン)配分、リブの変形を軽減するリブ分断S字サイプ、リブ剛性を高め、高いウェット性能を確保するマルチピッチグル-ブなどの技術を採用しており、優れた耐摩耗性能、耐偏摩耗性能、トラクション性能を実現しています。
市街地など中低速向きのリブラグタイヤ
リブラグタイヤは路線バス、中・短距離トラック、ダンプトラックなどで使われることが多いタイヤです。トレッドパターンは縦溝と横溝のバランスをとったもの。リブタイヤと、後述するラグタイヤのいいとこどり。操作安定性がよく、排水性能、トラクション性能、制動性能に優れるといった特徴があります。
代表的なモデルは「M317」。ストップ&ゴーが頻繁な市街地での走行に向いた中・短距離トラック、路線バス、近距離都市間バス用で、耐摩耗性能も高いことから低メンテナンス性能も優れています。
未舗装道における性能が極まったラグタイヤ
ラグタイヤはダンプトラックに使われるタイヤ。それもリアタイヤ用となります。横溝中心のトレッドパターンで、未舗装道というか悪路の走破性が高いのが最大の特徴ですね。
「M520」は耐摩耗性能、トラクション性能共に高いレベルで追求したダンプ用ラグタイヤで、泥や石が詰まらないよう、ラグ溝をスラント形状にしています。また、現場などでのタイヤサイド損傷を防止するため大型のサイドプロテクターを採用しています。
氷雪路でのグリップ力を高めたスタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤはおなじみの存在ですね。そう、乗用車用のスタッドレスタイヤと同じように、雪道における安定した走行性能を持ったトラック・バス用のタイヤです。
ナノバランステクノロジーが生んだエコタイヤ「NANOENERGY M966」を例に挙げると低燃費性能、耐摩耗性能を高めた上で、氷雪路の高いグリップ力も確保しています。
さまざまなシチュエーションで高い性能を発揮するオールウェザータイヤ
最後のオールウェザータイヤはその名のとおり、乾いた道路、雨にぬれた道路、雪の積もった道路、いずれにおいても優れた性能を発揮するタイヤです。トレッドパターンはブロック状で、一般道と高速道路の両方を走行するトラック・バスに使われています。
新しい時代の運輸・運送を支える新しいオールウェザータイヤ
近年、物流業界はさらなる効率化が経営課題となっています。そのために運送会社では、トレーラーの大型化や連結トラックの導入、自動運転の導入などによってトラックの稼働率を高めて輸送効率を向上させたり、共同輸送や貨物・車両のマッチング等の共同化によりトラック一台当たりの積載率を向上させる取り組みを行う必要に迫られています。
そのため、運送会社が理想とする状態は「トラックが常に満載で走り続けること」。その状況下でトラック・バス用タイヤに求められるのは、「走る」「曲がる」「止まる」というタイヤの基本性能はもとより、耐摩耗・耐編摩耗に優れた低メンテナンスタイヤなのです。
さらに、ドライバーや整備士の高齢化が進み、年々人材不足が問題視されています。逆に輸送量は増大中。インターネット通信販売によるB2Cの輸送が急増しているのです。ドライバーと整備士の負担を減らすために、トーヨータイヤもオールウェザータイヤを改良するというチャレンジをしています。
働くクルマであるからこそ、ロングライフ・低メンテナンス性能を今以上に高めていかなければならない。この命題に取り組んだのが、2020年3月に発売開始したトラック・バス用オールウェザータイヤ「M646」です。
従来モデルよりもオールラウンダーとしての性能を高めた「M646」は別稿でご紹介しましょう。お楽しみに。