以前、「初霜の時期」がスタッドレスタイヤへの履き替え時期の目安になることをお伝えしましたが、12月に入ると全国の各地で初霜の便りが聞こえ始めます。まだ雪が降っていない地域でも、クルマの足元も冬支度が必要な時期ですね。
「もうすでに、新品のスタッドレスタイヤに履き替えたから、準備万端!」という方もいるかと思いますが、ちょっと待って! 実は、スタッドレスタイヤに取り換えるだけでは“準備万端”とはいえません。「皮むき」を行なうと、スタッドレスタイヤの性能をより発揮できるのです。
おろしたてよりも「皮むき」したほうが性能がアップする!?
タイヤは新しければ新しいほど良い。多くの人はそう思っていますが、スタッドレスタイヤについては、必ずしもそうとは限りません。実は、スタッドレスタイヤはおろしたてのまっさらな状態よりも、ある程度走行したものの方が性能がアップするのをご存じでしょうか。
その理由は「皮」にあります。「皮」とは、生タイヤを加硫して成型し、金型から抜いた際にタイヤの表面に生じる薄いゴムの皮のことで、スタッドレスタイヤの「吸水」「密着」「ひっかき」性能は、この皮がむけることで本来の性能を発揮するのです。
皮むき前後の写真で比較してみましょう。こちらが使用前のスタッドレスタイヤです。表面に丸いスピュー(ヒゲ)のあとが見えるのがわかります。
一方、こちらが「皮むき」をしたスタッドレスタイヤ。スピューがなくなり表面が削れているのがわかります。さらによく見ると、白い点が見えますね。汚れに見えるかもしれませんが、実はこれ、タイヤに配合された鬼クルミなんです。鬼クルミの固い殻や小さな穴のような凹凸がタイヤの表面に現れることで、氷面の水分を吸水し、凍った路面を力強くひっかいて、雪道でもしっかりと車を止めてくれます(鬼クルミが入っているのはTOYO TIRESだけ!)。
「皮むき」のために雪が降る前に慣らし運転を
スタッドレス性能をフルに発揮させるための「皮むき」には、特別な道具は必要ありません。表面の「皮」は通常の走行で徐々になくなっていきます。走行距離の目安は、ドライ路面で約100km。高速道路のような平滑な路面では、「皮」をむくための走行距離は長くなり、約200kmが目安となります。
「皮」のほかにも、製造工程でタイヤのトレッド面に付着したオイル分を取り除けるうえに、乾燥した路面でのスタッドレスタイヤの特性にドライバーが慣れる効果もあるのです。
もちろん、慣らし運転をしていない新品のタイヤでも強力な効き目を発揮する“ファーストエッジ加工”が施された商品や、さらにその加工をタイヤ表面の縦・横・斜め360゜全方向に採り入れることで、あらゆる方向へすぐれたエッヂを効かせる商品などもあります。それでも、皮むきしたタイヤのほうが断然効き目はアップするんです。
効き目をさらにアップさせるテクニックは「アクセルの踏み方」にアリ!
「皮むき」したスタッドレスタイヤの性能をさらにアップさせるためには、運転のしかたも重要な要素。トーヨータイヤのテストドライバーに聞いたところ、こんなコツを伝授してくれました。
基本は「急」のつく操作を行わないこと。事故を起こさない安全走行のコツとしてよく使われる言葉ですが、スタッドレスタイヤを滑らせないことにおいても、やはり同じことが言えます。それを踏まえた上でのプラスαのコツは、「アクセルの踏み方」です。
滑りやすい路面を走るときには、ゆっくりじわっとアクセルを踏むこと。アクセルを踏みつけるのではなく、靴の中で足の指を曲げるくらいのイメージでソ~ッと踏むくらいでちょうどいいのです。
「まだ雪は降っていないから、大丈夫…」と思っている方や、これから新しいスタッドレスタイヤを購入する方は、冬の雪道走行に備えて、ぜひ雪が降る前にタイヤを装着して「皮むき」走行をしておきましょう。そして、凍った路面の運転時は「ゆっくりじわっとアクセルを踏むこと」。そのひと手間が、冬の安全運転をサポートしてくれますよ。