「ガソリンが腐った」という表現を耳にしたことはありませんか? 実際には食品のように腐敗するわけではありませんが、一般的に長期間放置されたガソリンが独特の悪臭を放ち、本来の性能を発揮できなくなる現象を指して「腐る」と表現されるようです。この悪臭や性能低下は愛車にとって大きな問題となりますので、適切な対策が必要です。
今回の記事では、ガソリンの消費期限や劣化防止法などについて解説していきます。
目次
ガソリンの消費期限「なる早」!
実はガソリンの消費期限について、明確な期限は設定されていません。石油連盟では灯油や軽油については6カ月間、A重油については3カ月間を使用推奨期間としていますが、ガソリンについては明確な推奨期間が定められていないのです。一般的には3カ月〜9カ月程度ともいわれますが、ガソリンは「生もの」であり、給油した瞬間から少しずつ劣化が始まっています。
つまり、ガソリンの消費期限は「なるべく早く」が正解です。石油販売会社も「早めの使用(入れ替え)を推奨します」と案内しているように、長期間の保管は避け、こまめに給油・使用するサイクルを維持するのが最善策です。
ガソリンが劣化する原因
ガソリンの劣化を促進する要因には、光や高温、水分などさまざまなものがありますが、主に「酸化」によって引き起こされるといわれており、特に直射日光の下で酸素と接触する環境では最も速く劣化が進行します。ガソリンは空気中の酸素と触れることで酸化が進み、有機過酸化物が生成され、さらに複雑な分解が進むことでアルデヒド、ケトン、有機酸などの物質に変化していきます。そして最終的には「ガム質」と呼ばれる粘性のある物質が生成されます。
劣化したガソリンを使う危険性
劣化したガソリンを使用し続けると、車にさまざまな悪影響を及ぼします。
車の金属部分が腐食する
ガソリンが酸化して生成される酸化劣化物は、燃料系統の金属部品を腐食させる作用があります。燃料タンク、燃料配管、インジェクターなどの部品が腐食すると、燃料漏れや部品の早期劣化につながり、修理費用がかさむ原因となります。
結果的にエンジンに負荷をかける
また、劣化したガソリンから生成されるガム質は、燃料系統に付着して目詰まりを起こします。これによりエンジンの不調や出力低下を引き起こし、最悪の場合はエンジンに深刻なダメージを与える可能性もあるのです。
ガソリンが腐るのを防ぐ方法

ガソリンの劣化を完全に止めることはできませんが、以下の方法で劣化のスピードを遅らせられます。
定期的にエンジンをかける
最も効果的な対策は、車を放置せず、定期的に使用することです。理想的には1〜2週間に一度は20〜30分程度の走行をしてエンジンを暖めることで、燃料系統の水分を飛ばす効果が期待できます。
定期的な走行は単にガソリンの劣化防止だけでなく、バッテリーの自然放電防止やエンジンオイルの循環促進など、車全体のコンディションを保つ効果があります。
ガソリンの保管状態を気にかける
また、ガソリンや車の保管環境も重要です。以下の5つの点に注意しましょう。
高温多湿を避ける
できるだけ冷暗所に車を駐車し、直射日光や高温環境を避けることで、ガソリンの劣化速度を緩やかにする効果が期待できます。
こまめに給油する
給油はこまめに行い、早めに消費するように意識しましょう。新しいガソリンを補充する回数を増やすことで、古いガソリンの割合を減らせます。
給油キャップの確認
給油キャップがきちんと閉まっているか確認しましょう。キャップが緩いとタンク内に空気が入り込み、酸化が進みやすくなります。「カチッ」と音がするまでしっかり閉めることが大切です。
エンジンオイルの定期交換
エンジンオイルには酸化防止剤などの添加物が含まれているため、定期的に交換することでエンジン内部の保護にもつながります。
劣化防止剤の使用
長期間車に乗らないことが予想できる場合は、ガソリン専用の劣化防止剤を使用するのも一つの方法です。カーショップや通販サイトなどで簡単に購入でき、製品によっては最長2年程度の品質保持効果が期待できます。購入の際は取扱説明書に従い、適切な量を使用しましょう。
ガソリンが“腐って“しまったときの対処法

すでにガソリンが劣化してしまった場合、最も確実な対処法は劣化したガソリンを抜き取り、新しいガソリンに入れ替えることです。
ただし、重要な注意点として、ガソリンは原則的に家庭ごみとして処分できません。ガソリンは消防法により「第4類危険物 引火性液体 第一石油類」に指定されており、適切な処理が必要です。カーディーラーや整備工場などの専門店に依頼するか、自分でガソリンを抜き取る場合は、ガソリンスタンドや産業廃棄物処理業者などに持ち込み、適切に処分してもらいましょう。
なお、運搬の際は消防法に適合した容器を使用する必要があります。乗用車で運ぶ場合、容器の最大容積は22リットルまでという制限もあるので、こちらも注意が必要です。決して家庭ごみとして捨てたり、下水に流したりしないでください。
まとめ
ガソリンは生ものであり、給油した瞬間から徐々に劣化していきます。明確な消費期限はありませんが、できるだけ早く使うことが望ましいでしょう。劣化を防ぐには、定期的な車の使用やこまめな給油などが有効です。すでに劣化している場合は、専門家に相談して適切に処理することをおすすめします。
日頃からガソリンの状態に気を配り、愛車を大切に扱うことで、エンジントラブルの予防と車の長寿命化につながります。安全で快適なカーライフのために、ぜひ参考にしてみてください。