クリープ現象がエコにつながるって本当?
- トリビア
- 2022.03.012023.12.15Update
発進時や駐車時などに便利な「クリープ現象」。AT(オートマ/オートマチックトランスミッション)車を運転している方なら、日ごろから何気なく活用している機能かと思います。
今回の記事では、クリープ現象の仕組みや使い方について解説します。
目次
クリープ現象とは「AT車のみに起こる“すり足”」
クリープ現象は、AT車特有の現象です。エンジンがアイドリング状態のときにサイドブレーキを解除した状態で、シフトレバーが「P(パーキング)」レンジと「N(ニュートラル)」レンジ以外に入っていると、アクセルペダルを踏まなくてもクルマが動きます。
「這う」「ゆっくり進む」「忍び寄る」といった意味の英語「creep」「creeping」がその名の由来で、日本語では「すり足現象」「這い出し現象」とも呼ばれます。
クリープ現象といえばゆっくり動くイメージを持つ方も多いかもしれません。JAFが複数のタイプのクルマ(軽自動車、コンパクトカー、セダン、ミニバン)を用意してクリープ現象時のスピードを比べるテストを行ったところ、ミニバンがもっとも速く、人間の小走り程度の速度で走行していました。
一口にクリープ現象といっても車種によってスピードは違い、意外と速く動く場合もあるので注意が必要です。
なぜクリープ現象が必要なのか
クリープ現象についてさらに厳密に説明すると、クリープ現象はエンジンとトランスミッションの間に「トルクコンバーター(トルコン)」という動力伝達装置を搭載したAT車でのみ起こります。
MT車でいうクラッチの役割を担うトルクコンバーターの中には複数のプロペラが並んでおり、内部に満たされたオイルを介して動力が伝達されます。エンジンが回っている限りエンジン側のプロペラは回転し続けるため、ブレーキペダルを離すとトランスミッション側のプロペラにも動力が伝わり、タイヤもゆるやかに動くという仕組みです。
この理由から、エンジンとトランスミッションが切り離された状態をつくる「N」レンジにシフトレバーを入れているとクリープ現象は起こりません。
クリープ現象には次の3つの必要性があります。
- AT車の仕組み上の必要性
先述のとおり、クラッチの代わりにトルクコンバーターを利用しているAT車は、エンジンが回転している間はトルコン内部のオイルを介してタイヤに動力が伝わります。トルコン搭載のクルマでは、その仕組み的に必ずクリープ現象が起こります。 - 操作面で必要性
ドライバーの視点から見ても、アクセルを踏んでいなくてもゆっくり進むので低速で運転したいときに便利です。 - あえてクリープ現象を残す必要性
クリープ現象は広く認識されていることから、あえて起こるように設計されている場合もあります。トルクコンバーターを搭載していない電気自動車やハイブリッド車、CVT車、DCT車などではクリープ現象は起きませんが、運転をサポートする機能として同じ動きを再現する、いわば“疑似クリープ現象”を発生させている車種もあります。
クリープ現象のメリット・デメリット
あらゆる点で便利なクリープ現象ですが、思わぬ交通事故の原因となる場合もあります。ここであらためてメリット・デメリットを確認しておきましょう。
クリープ現象のメリット「活用するとエコにつながる」
ハンドルとブレーキに運転操作を集中できるクリープ現象は、駐車場などでのペダルの踏み間違い事故を防げるほか、駐車時や渋滞時など低速で移動するときにも便利です。また、坂道発進(急勾配の場所は除く)で車体の後退を防げるというメリットもあります。
さらに、発進時に活用すればエコドライブ(燃費向上、CO2排出量削減)にもつながります。クルマは動き出すときに大きなエネルギーを使い、市街地で消費する燃料の約4割は発進時に使われているといわれています。アクセルを一気に踏み込んで加速せず、クリープ現象を利用して“ふんわり”と発進することで、燃費の向上が期待できます。
クリープ現象のデメリット「事故につながる可能性」
一方でデメリットとして挙げられるのが、ドライバーの意思に反して車両が動いてしまう可能性がある点です。アクセルペダルを踏まなくても前進・後退するという性質上、信号待ちや渋滞時などの停止時にうっかりブレーキペダルから足が離れ、車間距離が短いと追突事故などを引き起こす危険があります。
注意点として、エンジン始動直後やエアコン作動時などエンジンの回転数が高いときはクリープ現象の動きも速くなることを覚えておきましょう。
まとめ
正しく使えばエコで便利なクリープ現象。その仕組みや特徴をしっかり理解して、上手に使いこなしましょう!