クルマのメンテナンスの中でも、「ウインドウォッシャー液」のチェックは見過ごされがちでありながら重要な要素の1つです。
今回の記事ではウォッシャー液の概要から補充方法、凍結対策まで詳しく解説します。
ウォッシャー液とは

ウォッシャー液とは、クルマのフロントガラスやリアガラスの汚れを落とすときに使用する液体のことです。通常はワイパーのレバーを手前に引くことで噴射されます。
ワイパーを使用する際にウォッシャー液を噴射することで、汚れを浮かせて落としやすくしたり、摩擦を減らしてガラスを傷つけにくくしたりする役割があります。
ウォッシャー液のタイプ分類1:用途別タイプ
ウォッシャー液は、その用途によって「スタンダードタイプ」「機能性タイプ」「寒冷地タイプ」の主に3種類に分けられます。
スタンダードタイプは最も広く使用されているタイプで、基本的な洗浄能力とコストパフォーマンスの高さを兼ね備えています。また、機能性タイプは簡単な油膜落としや撥水などの機能がプラスされているのが特徴です。さらに寒冷地タイプは、メタノールなどの凍結防止成分が多めに配合されており、氷点下でも安心して使用できるという特徴があります。クルマの使用環境やお好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
ウォッシャー液のタイプ分類2:原液タイプと希釈タイプ
また、ウォッシャー液は「原液タイプ」と「希釈タイプ」の2種類に分けられます。そのままウォッシャータンクに入れて使用できるのが原液タイプで、水道水で薄めて使用できるのが希釈タイプです。
希釈タイプは原液タイプとくらべると経済的ですが、薄め過ぎると凍結する可能性があるため、希釈濃度は商品の規定を守りましょう。また、希釈用のものをそのまま使用するとボディの塗装面にシミを作ったり、ワイパーゴムなどのパーツを傷めたりする場合があります。
ウォッシャー液の補充方法

ウォッシャー液の補充は、手順さえ覚えてしまえば初心者でも簡単にできるメンテナンスです。ここでは基本的な流れをご紹介します。
補充前の準備
まずは運転席の足元付近にあるボンネットオープンレバーを引き、ボンネットを開いて固定します。あらかじめエンジンを停止して、エンジンの熱がある程度冷めていることも確認しておきましょう。エンジン(ハイブリッド車の場合はハイブリッドシステム)が高温の状態で作業すると、ウォッシャー液に含まれるアルコール成分が引火する危険性があります。
ウォッシャータンクを空にする
以前に入れたものと異なるタイプのウォッシャー液を使う場合は、ウォッシャータンクを空にしておきましょう。古いウォッシャー液の残量が少なければ使い切るまで噴射し続けることで空になりますが、残量が多い場合はモーターの負担を減らすために数回に分けて作業するか、新品の灯油ポンプである程度抜いてから噴射して空にしましょう。
ウォッシャータンクの洗浄
ウォッシャータンクが空になったら、コップ1杯程度の水を入れて再度噴射すると、ホースやタンク内を簡単に洗浄できます。完全に洗浄したい場合はディーラーなどに相談することをおすすめします。
ウォッシャー液を補充する
新しいウォッシャー液を注ぎ、液面が目盛りの上限まで来たら補充完了です。補充口の位置によってはウォッシャー液をこぼしやすくなるため、100円ショップなどで手に入る「じょうご」があると便利です。
ウォッシャー液を交換する際の注意点
ウォッシャー液を交換する際に注意したい点は以下の2つです。
種類が違う液を混ぜるのはNG
同じ種類や商品のウォッシャー液を使い続ける場合は継ぎ足しで問題ありませんが、異なる種類のウォッシャー液を使用する場合は混ぜてはいけません。成分によっては凝固して、パーツの故障や性能低下を引き起こす危険性があります。
特に油膜除去タイプと撥水タイプは真逆の効果をもつため、混ぜると悪影響を及ぼしやすくなるので注意が必要です。
噴射し続けるとモーターに負担がかかる
ウォッシャー液を長時間噴射し続けると、ウォッシャーポンプやモーターに大きな負担がかかり故障の原因となります。古いウォッシャー液が大量にタンクに残っている場合は上にご紹介した灯油ポンプなどを活用してください。
ウォッシャー液の代わりに水を使うべきではない理由

「汚れを落とすだけなら、水道水でも代用できるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、おすすめできません。水道水をウォッシャー液として使う方法には、以下のリスクがあります。
ウォッシャー液タンク内にカビやコケ・藻が発生する可能性
ウォッシャー液には、汚れを落とすための界面活性剤、撥水のためのシリコンやフッ素など、商品によってさまざまな成分が含まれています。
単純に水道水では汚れが十分に落ちない可能性がありますが、それ以上のデメリットとなるのが腐敗です。水道水には防腐剤が含まれていないため、タンク内に雑菌やカビが繁殖したり、コケや藻が発生してノズルやパイプが詰まったりする危険性もあります。
塗装やポンプへの影響があることも
また、せっけんや洗剤を溶かした水を使用することも避けましょう。塗装面のシミやポンプの故障につながる可能性があります。
凍結する恐れがある
ウォッシャー液に含まれているメタノールやエタノールなどのアルコール成分には、ガラス表面やウォッシャータンク内部の凍結を防止する効果があります。
寒冷地で水道水をウォッシャー液代わりに使った場合、タンク内で凍結して使用できなくなる恐れがあるほか、使用できたとしても噴射した瞬間にフロントガラスで凍り付いて視界を奪われるという危険性があります。
希釈タイプのウォッシャー液を使用している場合も、濃度が低いと凍結してしまう危険性があります。冬場のドライブや寒い地域にお出掛けする際は、濃度を高めておくと安心です。
まとめ
ウォッシャー液は、フロントガラスやリアガラスの汚れを効果的に落とすだけでなく、ガラスの傷つきを防ぎ、凍結を防止する重要な役割を果たしています。用途によって「スタンダードタイプ」「機能性タイプ」「寒冷地タイプ」の主に3種類から選べます。
補充作業自体は比較的簡単で、エンジンを停止して冷ましてからボンネットを開け、ウォッシャータンクに液を注ぐだけです。ただし、異なる種類のウォッシャー液を混ぜると凝固する可能性があるため、タイプを変える際は必ずタンクを空にして洗浄しましょう。
水の代用は緊急時でも最小限/後で必ず入替・洗浄
ウォッシャー液の水道水での代用は腐敗やカビの発生、凍結などのリスクがあるため避けるべきですが、どうしても手に入らない緊急時には一時的な使用も選択肢の1つです。ただし、短時間・短距離の応急処置として最小限にとどめ、できるだけ早くウォッシャー液を購入して入れ替えることを強くおすすめします。
水道水を使用した後は、必ずタンク内を空にして洗浄してから新しいウォッシャー液を補充しましょう。特に冬場や寒冷地へ向かう前には、凍結防止のためにも必ず適切なウォッシャー液に交換してください。



