毎年JAFから発表されているロードサービス救援データによると、高速道路でのロードサービス救援依頼で最も多いのが「タイヤのパンク、バースト、エア圧不足」。直近の5年間(2017年〜2021年)では、毎年、故障内容の35%〜40%弱を占めています。
ただのパンクであれば修理で済みますが、バーストとなると即買い替えが必要になるだけでなく、周囲を巻き込む大事故につながることも……。ドライバーとしては、できることなら経験したくないものですよね。ここでは、そんなバーストを起こさないための対処法について解説します。
目次
バーストってどんな現象?
「バースト」とは、何らかの原因で走行中に自動車のタイヤが破裂(burst)してしまうことです。特に空気圧が低くタイヤのたわみが大きい状態で高速道路を走っているときに起こりやすく、過度な発熱によってはく離(セパレーション)やコード切れを起こし重大な事故につながる現象です。
バーストとパンクの違いとは
パンクの場合はタイヤの傷や穴から空気が徐々に抜けていきますが、バーストはタイヤが破裂して一気にゴムが飛び散るため、パンクよりも事故につながる危険性があります。
バーストが発生する要因
バーストの直前に起こりやすいのが、高速走行の際にタイヤが波打ち、タイヤ内部温度が急上昇する「スタンディングウエーブ現象」です。スタンディングウエーブ現象が生じたまま走行を続けていると、やがてタイヤの形状を保つコードが破損し、バーストを起こします。
タイヤが波打つ様子は、運転席からは見えません。つまり運転しているドライバーにとっては、その最中はあまり違和感が感じられず、バーストが発生して操縦不能になって、はじめて異変に気付くというケースも少なくありません。高速走行中では、周囲のドライバーからも異変の兆候はほとんど分かりません。そのため、突然タイヤが破裂して事故を起こしてしまうのです。
空気圧の低下
バーストが発生する理由はいくつかありますが、最も気をつけたいのがタイヤの空気圧。スタンディングウエーブ現象も空気圧の不足が大きく影響します。
ほとんどの車種は、運転席のドアを開けたところもしくは給油口に指定空気圧の情報が表示されているので、それを確認したうえでお近くのガソリンスタンドなどで空気圧点検・補充を行いましょう。
さらに空気圧不足によりタイヤのたわみが大きい状態での走行が長期間続くと、法定速度内で走っていても屈曲疲労と隣接するゴムとの摩擦によりゴムやタイヤコードの強度、接着力が低下することで、セパレーションの発生や極端な場合はバーストする危険性もあります。
タイヤの劣化
タイヤは紫外線や熱によって日々劣化しています。保管場所は日陰を選んだり、カバーを掛けるなどして直射日光が当たらないようしましょう。
また、段差の乗り上げなどによってタイヤ内部のコードが切れている場合や、タイヤの摩耗によって内部のワイヤが露出している場合、さらに走行中に障害物(木材や金属など)に接触した場合などもバーストを引き起こす要因になるので注意しましょう。
過積載
乗車人数や荷物が多くなればなるほど、タイヤにかかる圧力も強くなっていきます。過剰な重さでタイヤがたわんだ状態で走行を続けると、タイヤに熱がたまりやすくなり、バーストを引き起こす原因となります。乗用車には最大積載量の概念はありませんが、「乗車定員×55kg+人数分の手荷物程度」が目安です。過剰な積載にならないよう十分にご注意ください。
バーストの前兆
運転中は気づきにくいですが、バーストの前兆には以下の2つが挙げられます。
スタンディングウエーブ現象
前述のとおり、バーストの直前にはタイヤが波状にたわむ「スタンディングウエーブ現象」が起こります。多少の振動を感じる場合もありますが、タイヤの様子は運転席からは見えず、ハンドル操作の少ない高速道路では違和感を感じにくいのが厄介なところです。運転前には空気圧を点検して、スタンディングウエーブ現象から予防しておくことが大切です。
タイヤの外傷
段差や縁石にタイヤのサイドウォール(側面)をぶつけてカーカス(タイヤの骨格にあたる部分)が破損し、いつの間にか空気が抜けていた……なんてこともめずらしくありません。日ごろから段差の運転には注意し、運転前にはタイヤに傷がないかもメンテナンスしておきましょう。
バースト時の制動性能の変化
では、実際にタイヤがバーストするとクルマにどんな変化が起こるのでしょうか?実際にタイヤがバーストすると、大きな音とともに車体が傾きます。JAFのユーザーテストによれば、時速70kmで直線コースを走行しブレーキの挙動を検証すると、バーストを起こしたクルマは通常にくらべて5mも停止距離が延びるという結果に。
また、カーブコースでバーストを起こした場合はカーブを曲がり切れず、進路がコースから大きく膨らんでしまいました。バースト時はブレーキの利きが悪くなるだけでなく、ハンドルも取られてしまうため、いつもどおりの運転が不可能になるようです。
万が一バーストしてしまったら
バーストを起こしたときは、急ブレーキ・急ハンドルなど「急」のつく操作は禁物です。落ち着いてハンドルをしっかり握り、徐々に速度を落としながら路肩などに停車しましょう。
バーストした状態で走り続けると事故を起こすリスクがあるだけでなく、ホイールの変形などによって、修理費用がさらにかさんでしまいます。
安全な場所に停車したら、自分のスペアタイヤがあればその場でタイヤ交換し、なければロードサービスなどの救援を呼んで指示を仰ぎましょう。なお、高速道路で停車するときは後続車とのトラブルを防ぐため、三角停止表示板の設置もお忘れなく。
バースト予防策は「空気圧チェック」と「傷チェック」
前述の実験よりも速い速度で走行する高速道路では、重大な事故を起こしかねないタイヤバースト。日頃の予防策としては、空気圧を適正に保つのはもちろん、タイヤに亀裂や損傷がないかこまめに点検しておくのも有効です。
洗車や給油のときには、あわせてタイヤもチェックするクセをつけておきたいところですね。バーストの兆候を事前に察知できたら、ハンドルを握ったまま少しずつ減速を。焦ってハンドルを切ったり急ブレーキを踏んだりすると大変危険です。また、前を走る車がバーストしたら、避けることはとても難しいため、普段から車間距離を十分に取るよう心がけましょう。
帰省や旅行などで高速道路の利用が増えるこれからのシーズン。お出掛けの際はぜひ今回の記事でご紹介したポイントを一度思い出してみてください。