ガソリンエンジンの代わりに電気モーターを搭載した「EV」。近ごろは街中でも見かける機会が増えましたが、導入のタイミングを迷っているドライバーさんもいるのではないでしょうか。今回の記事では、EVの基礎知識からメリット・デメリットまで詳しく解説します。
目次
EV車とは
EVとは、“Electric(=電気の)Vehicle(=乗り物・車両)”の頭文字をとった言葉で、主に電気自動車のことを指します。広義では「BEV(バッテリー式電動自動車)」・「PHEV(PHV)(プラグインハイブリッド)」・「FCV(燃料電池自動車)」の3種類を含めることもありますが、狭義ではBEVのみを指します。今回の記事では、EV=BEVとして解説します。
ガソリン車・ハイブリッド車との違い
ガソリン車やハイブリッド車(HV。一般的にはガソリンエンジン+電気モーターの2つの動力源を備えた車のこと)と比較すると、EVには主に3つの特徴があります。
まず1つは、排ガスが出ないこと。環境や人体に有害なガスを排出しないため、「ゼロエミッション車」としても普及が期待されています。
また、ガソリン車などと比べて車を構成する部品点数が大幅に少ないという特徴もあります。その結果、製造やメンテナンスが格段に容易になっています。
さらに、EV車は維持費を抑えられるという点も見逃せません。同じ走行距離でも充電代はガソリン代よりも安く済みますし、「自動車税」や「自動車重量税」などの減税措置もあります。
EV車の充電料金はどれくらい?
ガソリン車がガソリンスタンドで給油するように、EVは専用の充電スタンドで充電する必要があります。上でも触れたように、充電にかかる料金はガソリン代よりも安いと言われています。
例えばトヨタのBEV「bZ4X」なら、満充電するのにかかる電気代の目安は200Vで1回あたり約1,865円(前輪駆動・18インチタイヤ装着車の場合の走行距離は559km。契約の電力会社などにより料金は異なります)。
また、自宅以外で充電する場合は公共の充電スタンドを利用するために発行する「充電認証カード」の月会費に加えて、充電速度によって従量制の都度利用料金が発生します。
そもそも本当にEV車は環境にやさしいの?
「エコカー減税」の対象にもなっているEVですが、そもそも本当に環境にやさしいのでしょうか。ここではEVのメリット・デメリットをご紹介します。
EV車のメリット
EVのメリットは、主に以下の3つです。
環境負荷が低い
EVは、地球温暖化の原因になるとされている二酸化炭素や、人体に有害な窒素酸化物、炭化水素、ディーゼル排気微粒子など含む排ガスを一切排出しません。また、メーカーによっては自宅に太陽光発電システムを設置し、車を蓄電池にして家の中に電気を供給して使用できるものもあります。
補助金や減税で維持費が安くなる
EVを購入すると、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」として国から数十万円の補助金が受給できるほか、車にかかる税金(自動車税環境性能割・自動車重量税・自動車税)の免税または減税も受けられます。
ガソリン車に比べてメンテナンスが容易
ガソリンエンジンと比べると、電気モーターは部品数が少なくシンプルな構造なので、メンテナンスの手間を減らせるというメリットがあります。また、自宅に充電設備があれば寝ている間に充電ができ、時間もお金も節約できるのもうれしいポイントです。
EV車のデメリット
一方、以下のようなデメリットもあります。
ガソリン給油時間に比べると充電時間が長い
車種や設備によっても異なりますが、EVは家庭用充電設備で満充電するのに数時間~十数時間かかります。公共の充電スタンドで急速充電機能を使えば数十分で充電できる場合もありますが、ガソリン車が数分で給油できるのに比べると長時間に感じるでしょう。
ガソリンスタンドに比べて充電スポットが少ない
公共の充電スタンドの普及は確実に進んでいるものの、ガソリンスタンドに比べるとまだまだ少ない状況です。また、自宅で充電するには設備工事が必要になります。長時間のドライブでは不安に感じることもあるかもしれません。
車両の本体価格が高い
車載用バッテリーに使われるリチウムイオン電池は生産コストが高いため、ガソリン車に比べて本体価格が高くなるのもデメリットの1つです。CEV補助金を利用すれば最大85万円分(2022年度の場合)の購入費用をカットできますが、年度の途中でも予算が尽きれば受付終了となるほか、中古車のEVには利用できないなどの条件もあるので注意が必要です。
EV車への移行状況
2021年、菅前首相は「2035年までに新車販売で電動車(※HVやFCVも含む)100%を実現する」という方針を表明しましたが、現段階ではどの程度普及しているのでしょうか。日本と世界のEVへの移行状況を見てみましょう。
日本
日本自動車販売協会連合会の資料によれば、2022年の毎月の「燃料別販売台数(乗用車)」に占めるEVの割合は0.9%〜2.0%の間で推移しています。また、2021年の1年間では国内全体の新車販売台数は約240万台で、そのうちEVの台数が21,139台。割合にして約0.9%と、まだ多いとは言えない数字となっています。
世界
全米自動車ディーラー協会(NADA)の資料によれば、2021年のアメリカ国内全体の新車販売台数(乗用車等)に占めるEVの割合は約2.9%でした。
また、欧州自動車工業会(ACEA)によれば、2022年上半期(1~6月)のヨーロッパ市場でのEV販売台数は過去最高を突破し、EVのシェアは9.9%に到達。そしてさらに普及率が高いのはノルウェーで、2021年の新車販売台数に占めるEVの割合は64.5%とダントツ。この数字からノルウェーは「EV先進国」とも呼ばれています。
2022年現在、日本国内の普及率はいまだ低いEV。購入の際に活用したいCEV補助金は、個人だけでなく法人なども受給対象となっているほか、条件次第では自治体の制度も併用できる場合もあります。EVの購入を検討している方は、各自治体のWebページから詳しい情報をチェックしてみてくださいね。