TOYO TIRES

どんなシチュエーションでも、安心できるタイヤ作りのために~宮崎テストコースリポート02~

人の使う物に当てはめると、靴となるのがタイヤ。靴底の作りが悪い靴だとまともに歩けない、疲れるのと同様に、安全性を確保したうえでタイヤも走りやすく=ドライバーが運転しやすい製品となるように開発しなければなりません。

宮崎県児湯郡都農町にあるトーヨータイヤのタイヤテストコースでは、日々多くのタイヤの評価テストを行なっています。毎日のように大型トラックで多数の開発中のタイヤが届けられ、テストドライバーがさまざまな評価テストを繰り返して、よりよい製品となるように情報をフィードバックすると共に、走行後のタイヤ状態を確認するためにまた大型トラックが運び出していきます。

なお、タイヤが商品化されるまでには、兵庫県伊丹市にあるTOYO TIRE(株)(旧:東洋ゴム工業株式会社)のタイヤ技術センターで設計、試作品は同社仙台工場で製造、宮崎タイヤテストコースで評価テストを行ない、その結果を伊丹のタイヤ技術センターへとフィードバック。この繰り返しでタイヤのテストは進んでいくんですって。

外周路での評価テスト

広さ15万平方メートルのタイヤ専用テストコースで行なわれる評価テストを見ていきましょう。

まずコース全体の外側を走る外周路です。こちらではコースの至るところに、状態の異なる路面があります。高速道路や橋の継ぎ目の部分を再現した凸凹した路面や、ロードノイズやパターンノイズを計測するための路面、高速道路の轍を模した路面などさまざまな路面が用意されています。テストドライバーの髙岡さんいわく「さまざまな道路の路面を模したもの」とのこと。タイヤのコンセプトや目的によって走行評価する路面は基本的に決められています。そのために、多様な路面でのテストが欠かせません。

さらに、テストドライバーの奈須さんがいうには「アメリカにある、コンクリートで舗装された道路を再現している部分もあるんですよ」とのこと。前回の記事でお伝えしたコース拡張のお話も、タイヤが使用される環境に合わせてテストコースも対応させていく事が理由の1つだそうです。

世界中にユーザーがいるトーヨータイヤだからこそ、世界中の、どんな道でも性能を発揮できるように開発しなければならないということですね。

外周路では、主に乗り心地とノイズの試験をテストドライバーが感覚によるフィーリング評価テストを行ないます。

上記の写真は直線道路でのハイドロプレーニング試験の模様ですが、このテストはコースに作られた水たまりを走行して、雨の日の高速走行時や水たまりでタイヤと路面の間の水膜により、タイヤと路面が接触せずにハンドルが効かないなどのタイヤが浮いた状態を計測して評価しています。

操安直線路での評価テスト

コースの内周は操縦安定性直進路。こちらでは一般道路や高速道路をイメージして低速から高速まで、さまざまな速度域で直進安定性や車線変更などの走行を行って、ハンドルの重さや車の動き、グリップの強さや安全性を、手やお尻、背中や視覚などテストドライバーが全身を使って情報をチェックします。ヨーロッパ向けの商品では160kmや200kmといった高速度域のチェックも行ないます。

またブレーキ試験路も用意されています。高速域からの急ブレーキを行ない、ブレーキ性能を見ていくわけですね。

一部、ガラスが張られている部分がありました。ここは道路下にハイスピードカメラが据え置かれており、ガラスの上に水を張って走行。タイヤのトレッドのパターンがどれだけ排水しているかを撮影します。

そうなんです。評価テストの項目によってはテストドライバーの感覚値によるものではなく、テクノロジーの力も使っていくのです。

ハンドリング路での評価テスト

テストコースのもっとも奥に位置するのがハンドリング路です。ワインディングを模したコースで、限界までの走行評価テストを行ないます。この写真はS字部分で、ハンドルの切り返し時のレスポンスを見ていくそうです。

コースにはスプリンクラーが設置されており、ウェットの路面も再現できるようになっています。

取材時は大型ミニバンとSUVで走っていただきました。低重心のスポーツカーと違って高重心の車種ゆえに、各方向の重力のかかりかたでタイヤと車体の挙動は大きく変化します。それでも「このスピード域での急コーナーでも、路面をがっちりとつかんだまま曲がっていくんだ!」という驚きがありました。さすがトーヨータイヤのタイヤたち、ですね。

またコーナーの一部に水を敷く路面もありました。これは旋回ハイドロプレーニングの評価テストを行なう場所。徐々に進入スピードを上げてアプローチすることで、ハイドロプレーニング現象を起こします。

どの速度域だと排水が間に合わずにハイドロプレーニングが起こるのか。またタイヤの摩耗状態や空気圧によってもテストを繰り返し、開発中のタイヤの実力を見極めていきます。

また、テストドライバー全員の運転技能と感覚を合わせるために、定期的なレベリングや日常でのトレーニングを行ない、評価技術の向上と車両情報などのアップデートを行なっているそうです。この繰り返しによって、トーヨータイヤの製品は一定の基準値でもって磨かれ、安全性を十分確保したうえで完成度を高めていくのですね。

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