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クルマのエアコンは燃費・電費に影響?季節別の賢い使い方

カーエアコンは、夏場の暑さ対策や冬場の快適性と視界確保に欠かせない、ドライブには必需品です。しかし、エアコンのスイッチを入れるたびに「燃費(電費)が悪くなるのでは?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

結論からいえば、エアコンの使用は確実にガソリン車の燃費やEVの電費に影響があります。しかし、その影響の度合いは、クルマの動力の種類や季節によって大きく異なりますし、燃費・電費を気にするあまりエアコンを我慢して、熱中症になったり視界不良に陥ったりしては本末転倒です。

今回は、エアコンが燃費・電費に与える影響と仕組みを正しく理解し、安全性と快適性を損なわず影響を最小限に抑える「賢い使い方」を解説します。

なぜエアコンが燃費・電費に影響するのか

燃費や電費に影響する理由は、クルマのエンジンやバッテリーを使ってカーエアコンのコンプレッサー(圧縮機)を動かすためです。そして、クルマの動力源によってコンプレッサーの稼働方法が異なります。

クルマの種類によってコンプレッサーを動かす電源が異なる

  • ガソリン車の場合
    ガソリン車では、エアコンのスイッチを入れるとクラッチがつながり、エンジンの力でベルトを駆動させてコンプレッサーを駆動させます。車輪の駆動とは別の負荷がかかり、より多くの燃料が必要となるため燃費が悪化します。
  • EV(電気自動車)の場合
    EVはコンプレッサーもブロアファン(送風)も暖房も、すべて走行用の大容量バッテリーの電力で賄われます。エアコンで消費した電力の分だけ航続可能距離が短くなります。
  • HEV(ハイブリッド車)の場合
    HEVの場合は、エンジン動力でも電力でもコンプレッサーを稼働できるタイプと、電動のみでコンプレッサーを稼働するタイプとに分かれます。前者のタイプはガソリンを、後者のタイプはエンジンで発電した電力や回生ブレーキで回収した電力を消費するため、燃費・電費に影響を与えます。

夏と冬の燃費の影響

エアコンを稼働させる際、ガソリン車とEVとでは冷房・除湿運転時に稼働させるコンプレッサーの動力が異なりますが、実はこの仕組みの違いから冬の暖房使用時にも燃費への影響に差が生じます。冷房・除湿使用時と暖房使用時の燃費への影響を詳しく解説しましょう。

夏の冷房はガソリン車もEVも燃費・電費に影響する

夏の冷房使用時は、駆動と同じ動力をエアコンのコンプレッサーでも使用するため、ガソリン車もEVも燃費は悪化します。財団法人 省エネルギーセンターの調査によれば、ガソリン車(2500ccミニバン)を使って実験室で測定をした結果、外気温25℃の状況で、車内の温度設定を24℃にした場合、エアコンスイッチをオフにしたときと比較して12%程度燃費が悪化することが示されています。

冬の暖房はEVの電費に影響

冬の暖房時は、ガソリン車はエンジン燃焼時の廃熱を暖房に利用できるため、暖房使用時はコンプレッサーを使用せずにすみます。そのため、燃費への影響もありません。一方、EVの場合はコンプレッサーを使って熱を交換するヒートポンプ方式で暖房を行うのが一般的です。暖房時にもコンプレッサーを稼働させるため、10%〜30%程度、電費に影響するといわれています。

冷暖房効率を高めるポイント

燃費・電費を意識しつつ、安全・快適に運転するための具体的な操作方法です。

冷房は「エアコン+窓開け走行」が効率的

カーエアコンから冷気が出始めたら、冷気を逃さないように窓を閉めてしまいがちですが、実は車内の熱を放出して窓を開けて外気を取り入れるほうが、室内の気温を早く下げられます。

「ドア開閉」「冷却スプレー」「エアコン(内気循環)」「エアコン(外気導入)」「エアコン+窓開け走行」の5種類の方法で、車内温度の下がり方をJAFが調査した結果、最も早く車内温度が下がったのは「エアコン+窓開け走行」でした。

具体的には、エアコンの設定温度を「最低(Low)」にして、窓を全開にしたまま2分間走行。その後、窓を閉めてエアコン(内気循環)に切り替えて3分間走行すると、5分後には55℃から28℃まで下げることができたとのこと。短時間で室内温度を下げることで、省エネにもつながります。

内気循環と外気導入の差は小さい

同じ調査では、「エアコン(内気循環)」と「エアコン(外気導入)」での差も示されていますが、いずれも「エアコン+窓開け走行」に比べると、車内温度を下げるのには時間がかかります。車内温度55℃の状態から28℃前後にまで下がるのに10分ほどかかりました。また、10分後の室温も「エアコン(内気循環)」が27.5℃、「エアコン(外気導入)」が29.5℃で、大きな差は見られませんでした。

EVの暖房効率を高めるにはシートヒーターがオススメ

ガソリン車の場合は前述のとおり、暖房時のエアコンは燃費に影響しません。EVは暖房でエアコンを使うと、航続距離に影響しますので、なるべく消費電力が小さい方法で車内や体を温める必要があります。そこでオススメしたいのがシートヒーター。ドライバーの体を直接温めてくれるので、車内全体を温めるよりも短い時間で済みます。ひざ掛けなどを使えば、より効果的。その後、時間をかけて室内の温度をエアコンで高めるようにすれば、車内の隅々まで温める必要もなくなり、電費への影響も小さくなります。

よくある誤解とQ&A

「AUTO」は燃費が悪い?

カーエアコンの「AUTO」モードは設定温度に対し、最も効率よく温度を維持するように制御します。そのため、手動でON/OFFを切り替えるより、トータルのエネルギー消費は少なくなり、燃費も良くなる傾向があります。ドライブ中にエアコン設定に気を取られることもないため、きめ細かく室温を調整する必要がないときは、「AUTO」を選んだほうが燃費悪化を防げます。

エアコンを賢く使い、安全でエコなドライブを

カーエアコンの使用は、燃費や電費に影響を与えます。特にガソリン車はエンジンの廃熱を暖房に利用できますが、EVは冷暖房ともにバッテリーを消費するなど、車種によって影響の度合いが異なります。

高速走行時は窓を閉めてエアコン、低速時は窓開け走行など、シーンに応じて賢く併用し、安全で燃費・電費の良いドライブを心がけましょう。