スペアタイヤが減少中?パンク修理キットとどう違う?
- メンテナンス
- 2022.09.16
2017年にJAFが行ったアンケートによると、愛車に「応急修理キット」が搭載されていると回答した人は全体の35.6%。2009年ごろからスペアタイヤに代わって応急修理キットを選ぶユーザーが増えており、スペアタイヤを搭載したクルマは減少傾向にあると言われています。
今回の記事では、スペアタイヤと応急修理キット、両者の違いについて解説します。
目次
スペアタイヤとは?
スペアタイヤ(spare=予備)とは、走行中タイヤが使用できなくなったときに交換するための予備タイヤのことです。以前は車両への搭載義務がありましたが、2022年現在は車検の項目に入っていません。代わりに応急修理キットを採用する車種が増え、スペアタイヤは標準装備ではなくオプションとなっている場合がほとんどです。
その背景には、スペアタイヤは重くかさばること、ほとんどが未使用のまま廃棄されること、タイヤ性能や道路環境の向上によりパンクが減ったことなどの理由があると言われています。
なお、SUVなどの一部車種では、装飾も兼ねてリア部分にスペアタイヤを装備しているケースもあります。
スペアタイヤと通常タイヤとの違い
スペアタイヤとして主に使われるのが「テンパータイヤ(テンポラリータイヤ、Tタイプタイヤ)」で、通常のタイヤよりも外径や総幅、接地面積が小さいため高い空気圧(420kPa)で使用するという特徴があります。標準タイヤよりも軽量で省スペースな分、走行性能は劣ります。あくまで緊急用と考えておきましょう。
スペアタイヤの寿命
スペアタイヤの継続使用は想定されていないため、交換目安となる走行距離はありませんが通常タイヤと同様にスリップサインが見えたら交換が必要です。また、未使用でも通常タイヤと同様に経年劣化していくので、製造後10年を目安に交換されることをお奨めします。
スペアタイヤのメンテナンス
スペアタイヤも、時間の経過とともに空気圧が減っていきます。空気圧不足の状態での走行はタイヤの性能低下やバーストを招き、事故の原因にもなるので定期的なチェックをお忘れなく!
スペアタイヤの使用方法
普段のタイヤ交換はプロに任せているというドライバーさんも多いかもしれませんが、いざというときのためにスペアタイヤの交換手順を覚えておくと安心です。
スペアタイヤの交換に必要な道具
交換に最低限必要な道具は、車体を持ち上げるための「ジャッキ」、ナットを回すための「レンチ」、ナットの締め付け具合を測定する「トルクレンチ」の3つです。このほか、タイヤが動くのを防ぐ「車輪止め」や手の汚れやケガ防止に「作業用手袋」などもあると便利です。
スペアタイヤの交換手順
スペアタイヤを交換するときの基本的な流れは以下の通りです。
- ほかのクルマの邪魔にならない、安全な場所に停止する
タイヤを交換しやすいように、平坦で硬い場所を選びましょう。必ずエンジンを停止してパーキングブレーキをかけ、交換するタイヤの対角線上のタイヤに車輪止めをかけておきます。 - ホイールナットを緩める
ホイールキャップが付いていれば外してから、レンチを使ってすべてのホイールナットを緩めます。 - ジャッキで車体を持ち上げる
交換するタイヤ近くのジャッキアップポイントを確認し、ジャッキを当ててタイヤが地面から少し離れるまで車体を持ち上げます。 - タイヤをスペアタイヤに交換する
すべてのホイールナットを外してタイヤを外したら、スペアタイヤを取り付けます。タイヤががたつかなくなるまでホイールナットを仮締めし、ジャッキを外してから本締めします。トルクレンチを使って、取扱説明書にある規定の締め付けトルクを必ず守りましょう。
パンク修理キットとは?
一方、スペアタイヤに代わって採用する人が最近増えているのが「パンク(応急)修理キット」。軽度なパンクを応急修理して、整備工場やディーラーまでの移動を可能にするアイテムです。以下ではパンク修理キットのメリット・デメリットをご紹介します。
パンク修理キットのメリット
パンク修理キットのメリットは、何と言ってもその「手軽さ」にあります。具体的なポイントは以下の2つです。
燃費向上とスペース確保
パンク修理キットはスペアタイヤに比べてコンパクトで軽いため、車内のスペースを取りません。トランクやラゲッジスペースを有効活用できるうえに、軽量な分、クルマの燃費向上にもつながります(重量はスペアタイヤが約10kgに対し、修理キットは約1kg)。
なお、1つのパンク修理キットで修理できるタイヤは1本で使い切りです。使用期限もあるので、期限を過ぎたものは廃棄して新しいものを購入しましょう。
タイヤ交換に比べて作業が楽
パンク修理キットはスペアタイヤとは異なり、ジャッキアップやタイヤ交換をする必要がありません。基本的には「液状の補修材をタイヤ内に流し込む→付属のコンプレッサーで空気圧を調整する」という簡単な流れなので、自動車整備に不慣れな人でもストレスなく応急修理が可能です。
パンク修理キットのデメリット
一見いいことずくめにも思えるパンク修理キットですが、もちろんデメリットもあります。緊急時は以下のポイントを踏まえて、使用するかしないかを慎重に判断してください。
使えるケースが限られている
パンク修理キットを使えるのは、くぎやネジがトレッド部分に刺さるなどの軽度なパンクのみです。トレッド以外の損傷や、4mm以上の大きな損傷、複数箇所の損傷、バーストなどのトラブルには対応できません。損傷具合に関係なく使用できるという意味ではスペアタイヤに軍配が上がると言えるでしょう。
修理後は新品タイヤへの交換が必須
また、パンク修理キットは補修材をタイヤ内に流し込んでしまうため、使用後は新品のタイヤへの交換が必須になるので注意が必要です。さらに補修材がホイールに付着していれば、別途クリーニングも必要になるという問題もあります。近くにパンク修理できそうな場所があれば、キットは使用せずにプロのサービスを利用した方が安上がりなケースも少なくありません。
ちなみに、スペアタイヤやパンク修理キットを搭載せず、パンクしても一定の距離を走れる「ランフラットタイヤ」を装着するという手もありますが、高価格や乗り心地などの理由から国内ではまだまだ普及率が低いのが現状です。
運転中できれば避けたいパンクですが、どんなに気を付けていても起こるときは起こるもの。もしものときは、今回ご紹介した情報をお役立てください。