「凍った路面上では、タイヤが滑りやすい」とわかっていても、そもそもなぜ滑りやすくなってしまうのか、その仕組みまでしっかりと理解している人は少ないのではないでしょうか。仕組みがわかれば対策がわかる! 冬本番を迎えるにあたって、安全にドライブをするためにも、おさらいをしておきましょう。
目次
「凍っている」からではなく「ぬれている」から滑る!
「氷=滑る」、というイメージを抱きがちですが、実は氷自体は滑りません。
試しに、冷凍庫にある乾いた状態の氷を手に取ってみると、滑らずにつかめるはず。しかし、しばらくすると表面が体温や室温で解け出して、ツルツルと滑るようになります。つまり、表面に水膜ができたために滑るというわけです。路面でタイヤが滑るのもこれと同じ。凍った路面の上をタイヤが通ったときに、タイヤの圧力などで氷が解け、その水膜が影響するのです。
そこで活躍するのが、ご存知のとおり、“スタッドレスタイヤ”。
スタッドレスタイヤが滑りにくいのは、この水膜を取り除く機能が優れているから。雨でぬれた路面ではトレッドパターンのブロックが水を弾き飛ばして路面をグリップするのですが、凍った路面ではタイヤの圧力を受けた部分が瞬時に解けて、つるつる滑る原因であるミクロの水膜を作ります。氷の路面をしっかりグリップするにはこの水膜をタイヤに刻まれた溝(サイプ)のある部分以外からも吸水する必要があります。それを実現したのが、トーヨータイヤが開発した「NEO吸水カーボニックセル」を配合した“吸水できるゴム”。サイプが吸いきれなかったわずかな水分で生じるミクロの水膜を、吸水効果の高いゴム自体が吸い上げることで滑りを防ぐのです。
「吸水」「密着」「引っかく」の3機能が滑りを防ぐ
スタッドレスタイヤが“効き目”を発揮するのは、“吸水”機能だけではありません。ゴムは特性として低温時に硬化してしまうものですが、トーヨータイヤのスタッドレス用のゴムには「ナノゲル」を配合することで氷点下でも柔らかさを保ち、水膜を取り除いた路面にタイヤ面が“密着”するように工夫されています。ツルツルのガラスの引き戸を開けるとき、ガラス面に指先だけをあてるよりも、手のひら全体をあてて動かすと、手が滑らずに引き戸を開けられるのをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。そして、もう一つは、氷よりも硬くアスファルトよりも柔らかい鬼クルミの殻。これを配合することで凍った路面を“引っかき”、凍結路面で滑りにくくしているのです。
タイヤのテストドライバーに聞く、効き目をアップさせるテクニックは「アクセルの踏み方」にアリ!
トーヨータイヤのスタッドレスタイヤが滑りを防ぐ仕組みをおさらいしたところで、タイヤテストドライバーに「効き目をアップさせるテクニック」を聞いたところ、こんなコツを教えてくれました。
基本は「急」のつく操作を行わないこと。事故を起こさない安全走行のコツとしてよく使われる言葉ですが、スタッドレスタイヤを滑らせないことにおいても、やはり同じことが言えます。それを踏まえた上でのプラスαのコツは、「アクセルの踏み方」です。
滑りやすい路面を走るときには、ゆっくりじわっとアクセルを踏むこと。アクセルを踏みつけるのではなく、靴の中で足の指を曲げるくらいのイメージでソ~ッと踏むくらいでちょうどいいのです。クルマの安全性能は高くなっていますが、機械の制御機能に頼りすぎないのも大切です。例えば、EVやハイブリッド車に搭載されている電気モーターには、発進時の駆動トルクが太いという特性があります。そのようなクルマを運転するときには、なおさらじわっと、弱い力でアクセルを踏むように心掛けましょう。スタッドレスタイヤの性能を、さらに高められ、安全なドライブにつながります。
「テストドライバー直伝!雪道を安全にドライブするコツ」の記事では、交差点やカーブ、坂道等、スポット別の雪道ドライブのコツや、タイヤの空転回避に役立つポイントも紹介していますので、雪道での運転の前にぜひご参考に!
連載記事
- スタッドレスタイヤから夏用タイヤに交換するタイミングはいつ?
- スタッドレスタイヤの“寿命”を知っていますか?
- そろそろシーズン到来!スタッドレスタイヤを装着前にチェックしたいポイント
- いまさら聞けない、スタッドレスタイヤの基本の「き」
- この冬必見!スタッドレスタイヤの“効き目”をアップさせるテクニック
- スタッドレスタイヤの性能を発揮する「皮むき」とは?