高速道路での運転は、一般道とは異なるさまざまなリスクを伴います。特に「タイヤバースト」は高速走行中に突然発生し、重大な事故につながる可能性が高いので避けたいトラブルの一つです。
今回の記事では、高速道路でタイヤバーストが発生した際の対処法と、未然に防ぐためのメンテナンス方法について詳しく解説していきます。
目次
はじめに:増加するタイヤトラブルとバーストのリスク

高速道路では、走行距離が長くなり、加えて走行スピードも上がるため、タイヤにかかる負荷が格段に高くなります。その結果、一般道に比べてバーストのリスクが高まるのが現実です。
高速道路で最多の救援要因は「タイヤ関連」
JAFの資料(「JAFロードサービス 主な出動理由TOP10 2024年度」)によると、高速道路における救援要請の最大の要因がタイヤのパンクやバースト、空気圧低下などのタイヤ関連トラブルとなっています。これらは全体の4割以上を占めており、一般道でのタイヤ関連トラブル発生割合と比べると約2倍にもなります。
特に、普段は短距離移動に使用しているクルマは、長時間の高速走行時に潜在的なタイヤのダメージが表面化しやすくなります。連休や行楽シーズンなど、長距離ドライブが増える時期にはより一層の注意が必要です。
タイヤバーストが発生した際は、パニックに陥らず冷静な対応が求められます。もしものときの対処法をここで確認しておきましょう。
ハザードを点灯
実際にタイヤがバーストすると、まずは大きな音とともに車体が傾きます。異変を感じた時点ですぐにハザードランプ(非常点滅表示灯)を点灯させ、後続車両に異常事態を知らせましょう。できるかぎり早く危険信号を発信することが、追突事故の防止につながります。
路肩など安全な場所で停止
高速道路でトラブルに見舞われたときは、最寄りのサービスエリアやパーキングエリアまで移動するのが理想的ですが、バースト発生時はクルマのコントロールがほとんど効かなくなるため困難な場合がほとんどです。そのため、路肩や非常駐車帯などの安全な場所に車両を停車します。
橋梁部やトンネル内など路肩が狭い箇所では、可能な限り、道路幅の広い場所まで移動しましょう。自走が難しい場合は、車両をなるべく左端に寄せて停車してください。
発煙筒などで後続車に知らせる

車両を安全な場所に停止させたら、発煙筒や三角表示板(停止表示板)などで後続車に故障車両の存在を知らせます。発煙筒は通常トランクや助手席足元に収納されています。三角表示板の車載義務はありませんが、高速道路上で停止する際には表示していないと法律違反となるので、必ず準備しておきましょう。
発煙筒は車両の約50m後方に、三角表示板は車両の50m以上後方の地点に設置します。発煙筒の燃焼時間は約5分間と限られているため、迅速な設置が重要です。設置の際は周囲の交通状況を十分確認し、車両の反対側(通常は左側)から降車して作業を行ってください。同乗者がいる場合は車内に残さず、あらかじめガードレールの外側など安全な場所に避難させておきましょう。
自身の安全を確保したうえで救助依頼
停止表示器材の設置が完了したら、ドライバーも安全な場所に避難します。後続車からの追突の可能性を考慮して、車両から離れた場所で待機することが重要です。
安全を確保できたら、110番もしくは道路緊急ダイヤル(#9910)に通報します。この際、高速道路名、進行方向(上り・下り)、キロポスト番号、周辺の目印などの情報を正確に伝えることで、迅速な救援が可能になります。通報が完了したらロードサービスへの救援依頼もあわせて行いましょう。
なお、携帯電話がない場合は、高速道路上の「非常電話」での通報も可能です。本線には1kmおき、トンネル内には200mおきに設置されています。
パンク・バーストの原因

そもそもなぜタイヤはバーストしてしまうのでしょうか。原因を知っておけば、日ごろ気をつけるべきポイントが見えてきます。主な原因は以下の3つです。
異物を踏む
釘や金属片、木材、石などの鋭利な落下物を踏んだ衝撃でタイヤが損傷し、パンクやバーストすることがあります。また、縁石への強い接触や擦れも、タイヤ内部のコード層を損傷させる原因となります。
これらの外的要因によるバーストは、損傷直後に発生する場合もあれば、損傷を受けた状態で走行を続けることで徐々に状態が悪化し、後にバーストを引き起こす場合もあります。
空気圧不足
空気圧不足は、バーストの最も大きな原因の一つです。空気圧不足での走行は、タイヤの変形を大きくし、内部に熱を蓄積させます。特に高速走行時には「スタンディングウェーブ現象」と呼ばれる、タイヤが波打つような現象が発生し、これがバーストの直接的な引き金となります。また、空気圧過多の状態もタイヤに負荷がかかり、ショックバーストの原因となります。
空気圧の過不足は目視や走行では分かりにくく、前兆なくバーストが発生するケースも多いため、普段から専用器具を使って正確に空気圧を管理しておくことが重要です。
タイヤの劣化
タイヤは日常的に紫外線や熱にさらされることで徐々に劣化していきます。ゴム材の硬化やひび割れ、内部コードの疲労などが進行し、最終的にバーストに至る場合もあります。
長期間使用されたタイヤや、不適切な環境で保管していたタイヤは、一見問題がなさそうに見えても内部構造が劣化している可能性があります。また、偏摩耗により内部のワイヤが露出した状態も、バーストの危険性を大幅に高めます。
バースト防止策はタイヤの点検

タイヤバーストの多くは、適切な日常点検により未然に防ぐことが可能です。以下の項目を定期的にチェックしましょう。
残り溝の深さチェック
タイヤの溝の深さは重要な指標です。法的には残り溝1.6mm以上が使用限度とされており、タイヤにはこれを示す「スリップサイン」が設けられています。溝が浅くなると制動距離が伸び、雨天時にスリップする危険性も高まります。深さのチェックに使えるのが、5円玉です。稲を上にして、タイヤ溝へ5円玉を差し込んだときに「五」の文字がすべて見えるのであれば、残り溝が1.6mm以下になっているサイン。写真のように「五」が隠れているならOKです。
スリップサインに達している、または近づいているタイヤは即座に交換が必要です。また、溝の減り方に偏りが見られる場合は、アライメント調整やタイヤローテーションを検討しましょう。
ひび割れチェック
タイヤ表面のひび割れは劣化の明確なサインです。サイドウォール部分やトレッド部分に細かなひび割れが発生していないか、定期的に目視で確認します。ひび割れが深く進行している場合や、複数箇所に発生している場合は、バーストの危険性が高まっているため交換を検討します。
また、タイヤ表面に異常な膨らみや変形が見られる場合も、内部構造に損傷がある可能性が高く、早急な対応が必要です。
空気圧チェック
月1回以上の頻度で空気圧をチェックし、適正空気圧に調整します。お使いの車種の指定空気圧は運転席ドア開口部や給油口付近に表示されています。正確に測定するために、空気圧のチェックは必ずタイヤが冷えた状態で行い、走行直後の測定は避けてください。
空気圧の管理はバースト予防だけでなく、燃費向上やタイヤの寿命延長にも直結します。スペアタイヤを積んでいる場合はこちらも忘れずにメンテナンスしておきましょう。
目視点検で異常が見えないケースも
日常的な目視点検は重要ですが、すべてのタイヤの異常を発見できるわけではありません。事業用車両では出発前のタイヤ点検が義務付けられているにも関わらず、目視では発見できない内部の損傷によりバーストが発生する事例も報告されています。
タイヤ内部の状態を判断するには、専門的な検査が必要な場合もあります。ときどきプロによるタイヤ点検を受け、走行距離や使用年数を考慮した適切なタイヤ交換をすることが大切です。
基本的な安全運転もバースト時の対策に
もし走行中にタイヤがバーストしたときは、急ハンドルや急ブレーキなどの「急」のつく操作は避け、ハンドルをしっかり握ったまま徐々に減速して停車しましょう。
日ごろから車間距離の確保、適正な速度での走行、丁寧なハンドル操作を心がけることは、バースト発生時の対応能力にも直結します。普段の行動がバースト時の対策にもなるので、常に安全運転を心がけ、万が一の事態にも冷静に対処できるよう準備しておきましょう。
高速道路でのタイヤバーストは、誰にでも起こりうるトラブルです。しかし、適切な知識と日ごろのメンテナンスがあれば、多くの場合は防げます。月1回の空気圧チェック、タイヤの外観確認、そして異常を感じたときの冷静な対応を意識しつつ、特に長距離ドライブの前にはいつも以上に念入りなタイヤ点検を心がけてください。