クルマのタイヤに起こるトラブルといえば、真っ先に「パンク」を思い浮かべる方も多いのでは? 事故につながる重大トラブルとして、もう一つ覚えておきたいのが「バースト」です。
今回の記事では、タイヤのバーストの概要と対処法、予防法もまとめて詳しく解説します。
目次
タイヤバーストとは
タイヤの「バースト」とは、走行中何らかの原因により、タイヤの骨格にあたるカーカス部分が破裂(burst)してしまうことを指します。タイヤの空気が急激に抜けて車両のコントロールを失うため、重大な交通事故につながりやすいのが特徴です。
バーストとパンクとの違い
「バースト」と「パンク」はどちらもタイヤにまつわるトラブルですが、異なる状況を表します。それぞれの違いを見ていきましょう。
まず、「バースト」は上でも述べたとおり、走行中に突然タイヤが破裂してしまうことを指します。大きな破裂音とともにゴムが飛び散り、タイヤ内部の空気が急激に抜けてハンドルを取られるため、運転中のドライバーはその場で気がつく場合がほとんどです。この場合はタイヤが大破してしまうため、即交換となります。
一方「パンク」は、タイヤの傷や穴などから徐々に空気が抜けていく状態を指します。近年はタイヤの性能も向上し、パンクしてもすぐには空気が抜けきらないようになっているため、そのまま気づかずに帰宅して翌朝乗ろうとしたら空気が抜けていた! なんてことも少なくありません。基本的にトレッド面に発生した小さなパンクであれば修理可能なケースがほとんどですが、大きな傷や複数箇所のパンクなど、場合によっては修理不可能になるケースもあります。
なぜバーストするのか
タイヤのバーストが起こるのには、主に3つの原因があります。

バースト原因①:空気圧の低下
1つはタイヤの「空気圧の低下」。タイヤの空気圧が低いと、特に高速走行の際はタイヤが大きくたわんで、異常発熱を引き起こします。さらにそのまま走行を続けると、タイヤのゴムや内部構造が損傷し、セパレーション(タイヤのベルト部とトレッド部が剥離してしまうこと)やバーストなどのトラブルの原因となります。
バースト原因②:タイヤの損傷・劣化
2つめは、「タイヤの損傷や劣化」。摩耗によって内部のワイヤが露出していたり、段差や縁石への乗り上げなどの衝撃によって内部のコードが切れていたりといったように、タイヤに何らかの損傷があるとバーストの危険性が高まります。
また、タイヤは紫外線や熱によって日々劣化していきます。経年劣化でゴムが硬くなると亀裂などが入りやすくなり、これもまたバーストの原因となるので、タイヤの保管場所も重要です。
バースト原因③:過積載
そして3つめは「過積載」です。荷物はもちろんのこと、乗車人数も増えれば増えるほどタイヤにかかる圧力は増えていきます。重さでタイヤが変形した状態で走行すると、タイヤに熱がこもりやすくなり、バーストの危険性が高まります。ちなみに、貨物トラックなどと違って乗用車には最大積載量の概念はありませんが、目安としては「乗車定員×55kg+人数分の手荷物程度」と覚えておくと良いでしょう。
バーストが起こるときのタイヤの状態

たとえば、トレッドの一部が平らに摩耗する「フラットスポット」や、サイドウォール部分に“こぶ”のようなふくらみが現れる「ピンチカット」などはタイヤが損傷しているサインです。このような異変を見つけたらすみやかにプロに相談することをおすすめします。なお、損傷したタイヤは危険なだけでなく、車検に通らない可能性もあります。
バーストが起こる前兆とは
バーストが発生する直前には、タイヤが波状にたわんでタイヤ内部温度が急上昇する「スタンディングウェーブ現象」が起こります。特にスピードの出やすい高速道路では起こりやすく、この状態で走行を続けるとタイヤの強度が下がり、やがてタイヤの形状を保つコードが破損してバーストを起こします。
前兆に気づいて対処できるのが一番なのですが、多くのドライバーは気づかないのが実情です。その理由は、タイヤが波打つ様子は運転中のドライバーからは見えづらいから。車体に多少の振動を感じることはあっても、スタンディングウェーブ現象の時点では異常に気づかず、バーストして初めてわかるというケースがほとんどなのです。
バーストが起こったときの対処法
ここでは、実際にバーストが発生したときの対処法をご紹介します。
バースト時の対処法①:まずは冷静に対処する
タイヤがバーストしたら、まずはハンドルをしっかりと握り、冷静に対応することが大切です。急ハンドルや急ブレーキなど「急」のつく操作は危険なので絶対に避けましょう。
バースト時の対処法②:減速・停車する
ハザードランプで後続車に注意喚起をしたうえで徐々に減速し、路肩などの安全な場所に停車します。走行を続けると車両のコントロールが効かず大事故につながるだけでなく、ホイールへのダメージも大きくなる危険性があります。
高速道路で停車するときは後続車とのトラブルを防ぐため、三角停止表示板を忘れずに設置しておきましょう。
バースト時の対処法③:停車後、速やかに救援を呼ぶ
自分でタイヤ交換が可能な場合は、スペアタイヤを使用して作業します。難しい場合はロードサービスなどに連絡して、安全な場所で救援を待ちます。
バーストの予防法

バーストを事前に防ぐために最も効果的な方法は、こまめな空気圧点検と亀裂・損傷のチェックです。お近くのガソリンスタンドなどを利用するタイミングで、最低でも月に1回、必要に応じて空気圧の補充もあわせて行いましょう。
タイヤの指定空気圧(適正空気圧)は、ほとんどの車種の場合運転席のドア開口部もしくは給油口などに貼られたラベルに表示されています。わからない場合は、お使いの自動車の取扱説明書などの情報をご確認ください。
ただし、日頃どんなにタイヤのメンテナンスをしていても、履き替えたばかりの新品タイヤであっても、油断はできません。地面に落ちていた異物を踏むなどして、突然空気圧が低下しバーストを起こしてしまう場合もあるからです。万が一のときのために、今回ご紹介したポイントを頭の片隅に置いておいてくださいね。