TOYO TIRESのスタッドレスは「白クマ」「猫砂」「ゼリー」が生んだ?
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- 2013.09.17
まだ残暑の厳しいさなか、スタッドレス!?と感じた方も多いかもしれません。
しかし、降雪地域では10月頃からスタッドレスタイヤの検討が始まるのです。
皆さんのスタッドレスタイヤを選ぶときの悩みどころは、“どのタイヤが一番滑りにくいのか?”。頼りになるのは、やっぱり経験則?でも、古いタイヤから新しいタイヤに履き替えれば、当然効き目はよくなるので、タイヤ自体の性能差を実感として比較することは、なかなか難しいかもしれません。
TOYO TIRESのスタッドレスは、一味違う。
ユニークな発想が生んだユニークなスタッドレスタイヤ。その「誕生物語」を少しご紹介します。
スタッドレスタイヤのヒントは、「白くま」、「猫砂」、「ぷるぷるゼリー」!?
スタッドレスタイヤに必要とされる主な性能は以下の3点です。
- 氷結した路面をひっかくこと
- 氷結した路面とタイヤの間にできる水膜を吸水すること
- 氷結した路面に密着すること
これらを向上させたTOYO TIRESのスタッドレスタイヤ。そのヒントになったのは、「白クマ」と「猫砂」と「ゼリー」です!
何気ない日常から着想されたアイデアを本当の製品に実現した面白さが、TOYO TIRESのスタッドレスタイヤには隠れています。
「白クマ」から得た着想。「氷をひっかくゴム」
手づかみで氷を取ろうとして、そのまま手に氷がぴったりとくっついてしまった経験はありませんか? 実は、氷は溶けていなければ滑りません。逆に、氷そのものや氷の上でモノが滑るのは、氷が溶けて間に水膜ができるからです。
ただ「吸水」だけでは、限界がある。氷を制するには、「吸水」に加え、「密着」「ひっかき」がポイントだと結論づけました。
「アスファルトは削らず、氷を削るタイヤ」を作るには?
1980年代後半。新たなスタッドレスタイヤのテーマに、開発担当者たちは頭を悩ませました。そのとき生まれてきた着想は・・・北海道の「白クマ」。
「なぜ、白クマは氷の上で滑らないんですか?」担当者が動物園に行き、飼育係さんにそう尋ねました。「白クマの手の裏側には細かい毛が生えているんです」「これだ!」。
早速、研究所で水鳥の羽毛、ブタの毛など、さまざまなものを試してみると、レザーパウダーと呼ばれる牛の皮を細かくしたものに密着効果があることを発見しました。
次は、「ひっかき」です。ひっかき効果があり、ゴムに配合できるよう0.1ミリにまで粉砕できるもの。安定確保が見込めるもの。粉塵(ふんじん)公害を起こさず、環境にやさしい。そんなタイヤ製造の難関を突破できる素材・・・が必要でした。購買担当者がこの条件にもとづいて探してきた素材、それが、精密機械の研磨材として使われていた「クルミの殻」。1988年、スタッドレスタイヤとクルミが出会った瞬間でした。
水膜を取る。ヒントは「猫砂」
1990年代に入ると、今までにない冬季路面の状況が発生するようになりました。
スタッドレスタイヤの普及によって、氷結した路面自体が磨かれ、「ミラーバーン」という現象が起き始めました。それは、ツルツルのアイス路面ができてしまうという現象。クルマが信号で停止したとき、車体の熱で路上の氷が溶けて水膜となり、また凍り、スタッドレスタイヤによって鏡のように磨き込まれてしまうのです。ミラーバーンではスタッドレスが効かなくなり、事故が発生する原因にもなりました。
クルマの停止時に生まれる「水膜の吸収」、タイヤ自体が吸水できないものか?
当時の開発担当者のヒントになったのが、友人の家にあった猫用のトイレです。友人は「猫砂には、消臭効果もあるらしいんだ」と言いました。「消臭効果も」という言葉が開発担当者の直感をくすぐりました。猫用トイレの砂は臭いも水分も吸収する――「この概念を使えば、タイヤと路面の間にできる水も吸収するのではないか?」猫砂の成分をヒントに、ある天然素材をタイヤのゴムに配合したところ、期待以上の吸水効果がありました。その素材の結晶構造が吸水効果に大きな違いを生むことに着目。実験を重ね、最大の吸水効果が得られる「層状結晶」構造を発明したのです。新しいスタッドレスタイヤは、ミラーバーンをも克服する「吸水力」を手に入れたのです。
気温に左右されないぷるぷるゼリー、タイヤに生かせないか。
地球温暖化の影響も受け、冬道の路面はアイス路面、スノー路面、シャーベット路面、ドライ路面・・・と、北国であっても路面状況の変化サイクルは早くなっています。めまぐるしく多彩に変化する冬路面に対応できる新たなタイヤ材料が、求められるようになりました。
スタッドレスタイヤが開発されてから、約25年。各社の研究開発は進化し、新たな素材を見つけ出すことは、容易ではありません。
現在のこうした冬道路面の課題を少しでも解決できる新たな材料を求めて開発担当者は奔走。休日、家族と過ごしていたときにその担当者の目に入ってきたあるモノが新材料のヒントになりました。それは、子どもがおやつに食べているゼリー。
ゼリーは常温で溶けることなく、冷蔵庫で冷やしても硬く固まることもありません。寒いところでは硬くならず、暖かいところでも溶けない。
しかし、ゴムは寒くなると硬くなります。冬の路面では密着力が損われ、路面との接地面積が実際には小さくなってしまいます。接地面積が少なくなれば、それだけ滑りやすくなるということ。温度が変わっても同じ弾力を維持できるゴム材料が開発できれば、「温度差に左右されずに路面に密着することのできるスタッドレスタイヤ」となりえるのでは。
担当者がゴム材料として着目したのは、ドイツの特殊化学品メーカー、ラインケミー・ライナウ社の「ナノゲル(マイクロモルフ®)」
このゲル状粒子は、氷温下においても柔軟さ(しなやかさ)を発揮でき、温度が上がっても高い剛性(硬さ)を維持することもできました。まさにゼリー。当時、TOYO TIRESは世界で初めて「ナノゲル(マイクロモルフ®)」をタイヤ材料に採用。こうして、ひっかき・吸水に加え、「吸着効果」があるスタッドレスタイヤが開発されました。
商品開発は日進月歩。その根底にあるのは、開発者のユニークな視点。
新たにSUV/CCV専用スタッドレスタイヤ「OBSERVE GSi5」も発売。
くわしくは、こちらから。
≫http://toyotires.jp/brand/studless.html
※1 「マイクロモルフ®」はラインケミー・ライナウ社の登録商標です。